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2013年6月15日 (土)

本 「世界でいちばん長い写真」

誉田哲也さんの小説には、いくつかの系統があるように思います。
一つは姫宮玲子シリーズや「ジウ」などの警察小説系、そして「武士道」シリーズなどの青春小説系です。
前者については扱う事件は陰惨なものも多く、そして登場人物が、例えば姫宮にしても自身の中に大きな闇を抱えています。
その闇というのは、その登場人物(犯人なども)の過去の辛い体験に寄ることが多いのですね。
登場人物は過去の呪縛に囚われ、闇に包まれている。
かたや青春小説系はというと、どちらかというと未来であり、光=希望といったものを描くことが多い。
青春小説という題材からすれば当たり前と言えば当たり前なのですが、ひとりの小説家の中で、片や闇を、片や光をというように二つの系統が描かれるのは面白いことだと思います。
また誉田哲也さんの小説では、ひとつのスタイルがあります。
これは今までも触れてきたことですが「ジウ」や「武士道」シリーズ、「疾風ガール」シリーズでは、主人公級の登場人物が対照的な二人であることがあります。
この二人は性格も何も違うのですけれど、それが対照的に描かれることにより、闇と光といったものがひとつの作品の中で描かれています。
誉田哲也さんにおいてはこの対称性、もしくは二面性というものがひとつのテーマになっているのかもしれません。
そう考えると、この「世界でいちばん長い写真」というのは特異な作品であります。
まさに誉田哲也作品の中ではいちばんに前向きであり、光=未来である作品となっていると思います。
なんとなく過ごしていた日々の中で自分が熱中できるものを見つけていく、そしてそれが人に喜んでもらえることとなっていく、そういう少年を描いています。
誉田さんの作品は闇どっぷりのものもありますが、それと全く逆の傾向にある作品となっています。
読後感はさわやかですし、最後のほうはじんとするような爽やかな感動も味わえます。
これも誉田哲也なのだと、感じられる作品になっているかと思います。

「世界でいちばん長い写真」誉田哲也著 光文社 文庫 ISBN978-4-334-76485-2

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