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2013年6月22日 (土)

本 「灰色の北壁」

真保裕一さんの山を題材にした山岳ミステリー集です。
この方の作品の多くは、過去に何かあり、誰にも言えない何かを胸に抱えている男というのが登場することが多いと思うのですよね。
それが、物語で描かれる事件や出来事に関わるその人物を行動へ突き動かします。
その人物が抱えている過去とは何かというところがひとつのミステリーとなっていますし、また過去のある男というところがハードボイルド的な香りをさせるというのが、真保さんの個性かなと。
本作もそれぞれにそういったミステリー的な仕掛け、そしてハードボイルド的な男の孤独のようなものを感じさせます。
小説ならではの仕掛けがあるのが最初に収録されている「黒部の羆」ですね。
これは映像ものでは再現できない。
小説ならではの叙述的な驚きがあります。
続く「灰色の北壁」も「雪の慰霊碑」も登場人物たちの抱える秘めた想いのようなものが途中で明らかになり、それによって彼らの行動の理由が理解できるようになります。
事件そのものを解決するというミステリーではないのですが、登場人物がなぜこのように行動したのかという謎が明らかになるという点ではやはりミステリーとして上手く仕上がっていると感じました。

「灰色の北壁」真保祐一著 講談社 文庫 ISBN978-4-06-275955-7

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