本 「ラブコメ今昔」
有川浩さんのファンを自称していながら、しばらく前に出版されていたこちらの作品は読んでいませんでした。
「クジラの彼」と同じ系統の、自衛隊を舞台にしたラブコメの短編集になります。
その中からいくつかピックアップして、ご紹介を。
「軍事とオタクと彼」
光隆のキャラクターにほくそ笑むました。
つーか、わかりすぎるよ、彼の行動。
光隆ほどにしてもその手は好きなので、長期海外出張とかなったら、日アサの番組の予約をどうしよう?とは思うだろうなぁ。
「広報官、走る!」
「空飛ぶ広報室」を読んだとき、「有川浩作品の集大成」と書きましたが、こちらの短編は「空飛ぶ広報室」の原点ですね。
こちらは空自ではなく、海自ですけれども。
自衛隊で広報官を取り上げるっていうのは珍しい視点だなと「空飛ぶ広報室」を読んで思ったのですが、よくよく考えたら、有川さんが取材で自衛隊を訪れたときに接する人というのは広報官の方ですものね。
そういう意味で、有川さんが見聞きしたことというのが、これらの作品に表れているのかなと思いました。
海自の広報官政屋、テレビ局のAD汐里は「空飛ぶ広報室」の空井、稲葉の原点なのでしょうね(性格はまったく違いますが)。
「青い衝撃」
英語にすればブルー・インパルス。
有川さんはこういう感じも書けるんだと新たな発見があった作品です。
心理スリラー的なところもあり、そっちのほうにいくかと思いきや、最後はやはり有川さんらしい感じにはなりましたけれどね。
作中で重要なキーになるブルー・インパルスの技の「バーティカル・キューピット」(空にハートを2機で描き、その真ん中を一直線にもう1機が貫く技)になっていますが、こちらが昨日放映の「空飛ぶ広報室」のドラマでしっかりと映し出されていて、「おー、これか!」と。
確かにこれでハートの矢がずれた位置にいったら笑いがでるでしょうね。
有川浩さんの自衛隊作品というのには、共通点があります。
自衛隊というのは、その特殊性から組織そのものについて語られることが多いです。
しかしそこで働いている人は、一人の人間であって、笑いもすれば泣きもする、もちろん恋愛だってする普通の人間なわけです。
それを自衛官という人間性がないひとつの職種ということだけで見ないというところが有川さんのポリシーなのでしょうね。
自衛官はその組織自体についていろいろ言う人が多い中で、その職についているわけで、普通の会社員よりもなんぼもその仕事に対する意識が高いのでしょう。
だって職業を言ったら引かれるわけですから。
そういう自分の仕事に対して誇りを持っている人々を描くというのが、有川作品に共通した大テーマではないかとやはり思うのです。
「ラブコメ今昔」有川浩著 角川書店 文庫 ISBN978-4-04-100330-5
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