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2013年6月16日 (日)

本 「おどろきの中国」

タイトルだけ見ると「そこが変だよ日本人」じゃないですが、中国人の理解できない振る舞いなどをあげつらうような本に感じますが、さにあらず。
著者は新書としてはヒットをした「ふしぎなキリスト教」の大澤真幸さんと宮台真司さん、そして中国に詳しい橋爪大三郎さんですので、かなり中国という国と、中国人というものを深掘りした本となっています。
確かに日本人から見て中国人の行動というのは理解しがたいところがあります。
ただそれは中国人が変なのではなく、日本人と思考や行動のベースとなる文化や歴史が異なるためであるということと考えた方がいい。
「ふしぎなキリスト教」では日本人が理解しにくいキリスト教文化について書かれていましたが、この本と合わせて読むと日本人のほうが世界的には珍しいタイプの民族なのではないかと思ったりもします。
重要なのは「異なる」ということを前提に相手の価値観、考え方というものをなるべく理解しようとし、様々な交渉をするということなのでしょう。
この本はけっこう専門的なことが書かれているのでなかなか読むのもたいへんですし、自分でも理解し切っているわけではないのですが、なるほどと思ったことがあったので、ちょっとそのあたりに触れてみます。
中国というのは世界的にも早く統一国家(秦)が作られ、(ここが珍しいのですが)王朝が変わっても、中国という国の形(天に統治することを許可された皇帝)はほぼそのまま継承されてきました。
秦の前というのは春秋・戦国時代(孔子のいた時代)で、国が千々に乱れていました。
それは中原という平で行き来がしやすく、すなわち戦争もしやすいという地政学的な条件もあったかと思います。
何度も異民族に攻め込まれていますし。
ですので、中国という国はいつでも「戦時」であるという感覚がベースになっている。
対して日本は「平時」の期間が長く、ときおり「戦時」にはなりますが、「平時」がベース。
ですので中国はトップが強烈なリーダーシップがあり、実質的に物事を決める文化ですが、これは「戦時」の状況下にあるということだからでしょう。
日本は「平時」であるため、合議制というか誰の責任かわからない決め方になるというわけです。
その他にもこの本では中国と日本の文化や歴史に基づく考え方の違いについて様々な点で議論されています。
その違い、どちらが正しいというのではなく、それぞれにそういった背景を理解し合うということが大切なのでしょう。
日本人も中国人もそのあたりはまだまだできていない。
読んでいてなるほどと思うことが多くある本でありました。

「おどろきの中国」橋爪大三郎×大澤真幸×宮台真司著 講談社 新書 ISBN978-4-06-288182-1

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