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2013年6月 1日 (土)

「中学生円山」 妄想とは

クドカンこと宮藤官九郎さんの監督作品、3作目になります(もちろん脚本も担当)。
前作の「少年メリケンサック」のときも思ったのですが、宮藤さんは監督としてはどうなんでしょう・・・?
本作も全体的に独特なグダグダ感がある感じがするのですよね。

お話としては宮藤さんらしいものになっていました。
彼の作品には、「大人になりきれない男」というのがよく出てきます。
これは「おまえ、いい加減大人になれよ」って周囲に言われちゃうようなタイプの男ですね。
バカみたいに好きなものに入れ込み、それほど社会性もなく、そんな自分をどうかと思ったりもしますが、結局ずっとそのまんまみたいな感じ。
今回の作品は「大人になりきれない男」ではなく、「大人になれるかどうかわからない中学生」、円山が主役になっています。
宮藤さんは本作でも草なぎ剛さんが扮する下井に「考えない大人になる位なら、死ぬまで中学生でいろ」と言わせています。
このセリフは宮藤さんが今までの作品でも言ってきた考えが最もストレートに表れているものに感じられました。
本作に登場する円山という中学生は妄想癖のある少年。
中学生の頃のエッチな妄想というのは、男子たるもの、誰しも経験があるものだと思うので、このあたりは男性はほとんどの人は共感というか、こそばゆい想いで観ることとなるかと思います。
そして中学生から、年をとり社会に出ることになると、社会のルールとか常識みたいなものが身に付いて、まあそういう枠組みの中で物事を考え、行動するようになるわけですね。
社会性を身につけるということは大事なことだと思いますし、また枠にとらわれすぎるのもよくないと思いますし、このあたりはいいバランスを探すということではないかと、個人的には思っています。
では、なぜ「中学生」という年頃は、妄想しがちな年頃なんでしょう?
小学生までの子供というのは生活圏というものが非常に狭い。
これも本作の中でちらっと触れられていますが、家族や学校、せいぜい家の周囲(本作でいえば団地)までが子供の生活圏。
そしてそれが子供にとっては世界そのものであると言えるのです。
遠く離れたアメリカやヨーロッパで何が起ころうと関係ないし、知らない人々が何かしても自分には影響しないと思う。
というよりそういうものは存在しないも同じなんですね。
子供にとって、手に触れられ目に見える生活圏がすなわち世界そのもの。
しかし、中学生になると手に触れられ目に見える生活圏の外に広く世界が広がり、多くの人がいるということがよりリアリティを持って感じられます。
しかし、大人ほどにその世界や社会、人々に対する認識があるわけではなく、自分の周囲に対する認識と、その外にある世界の知識の間に大きなギャップが存在しているのだと思います。
そのギャップを埋めるのがすなわち「妄想」なのではないかと。
まだ子供な少年である自分があって、けれど何年かさきには大人になるということは実感的になってくる(小学生にとって大人は遙か先の未来の感覚ですよね)。
その大人になるというイメージの中で最大かつ関心大なことが性的なことなわけです。
ただそこの部分は中学生レベルではまだまだ手に入れられる情報は少ない。
大人という存在に対して、自分がわかる情報のギャップを埋めるもの、それが妄想なのではないかと思ったりします。
これはエッチなことに関することではなくて。
社会に対してとか、世界に関しても、中学生の頃はそこに関心を持ち始めるころですが、しかしやはり情報としてはまだまだ理解し切れていないわけですね。
だからそこを埋めるために妄想的なことを考える。
それは短絡的であったり、ある種ステレオタイプてきなものであったりもします。
それは入ってくる情報がそのような具体性のかけるものであることが多いからだろうと思います。
そこにも実際の世界と中学生が実感できるものの間にはギャップがあって、それを想像力たくましく妄想で補完するのではないかと思います。
大人になり、世界自体がより現実味を持ちはじめ、それが自分の世界認識とほぼ等倍になったとき、ギャップはあまりなくなり妄想自体をしなくなるのでしょう。
それはややもすると世界自体の認識を矮小化し、自分のわかる世界と等倍にしてしまうということなのかもしれません。
それが宮藤さんの言う「考えない大人」なのかもしれないのですけれどね。
自分の世界認識よりもさらに大きな妄想を描くということは、実際の世界をさらに大きくする、未来を開いていくということなのかもしれません。

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