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2013年6月23日 (日)

「空飛ぶ広報室(ドラマ)」 ハイ、ドーン!

2013年度上期は有川浩さんの作品が立て続けに映像化されました。
映画として「図書館戦争」「県庁おもてなし課」、そしてテレビドラマとしてこちらの「空飛ぶ広報室」です。
原作の「空飛ぶ広報室」についてはこちらのブログでも以前レビューをしていますが、そのときに「有川浩さんの作品としてひとつの集大成と言っていいかもしれない」と書いていました。
その感想は今でもその通りだと思っています。
小説の「空飛ぶ広報室」には有川さんの今までの作品の魅力が集約されているのですね。
本作は航空自衛隊の空幕広報室を舞台にしていますが、有川さんはデビュー作「塩の街」からの自衛隊三部作、また「クジラの彼」等のラブコメでも自衛隊を扱い、そして「図書館戦争」などもその要素を感じますよね。
また広報というものについては「ラブコメ今昔」の中の短編「広報官、走る」、「県庁おもてなし課」などで扱っています。
また広報室のメンバーなどがいわゆる「キャラ立ち」していて、主人公キャラだけでなく脇キャラについてもそれぞれのキャラクターごとのエピソードも手厚くしているという点については、やはり「図書館戦争」シリーズや「シアター」シリーズにも通じています。
ベタ甘なのは言うまでもありません。
ということで原作の「空飛ぶ広報室」は有川作品の魅力がギュギュッと詰まっているんですよね。
だからこそ映像化が難しいと思いました。
映像化するためにはやはり削らなくてはいけないところが出てきます。
しかしそのサイドストーリーなども有川作品の魅力だったりするので、削られてしまうと良さが半減してしまうのではないかと。
あと題材的に空自を扱っているということで、映像になるという点で非常にハードルが高い(空自の協力がどれだけ得られるか等)とも思いました。
で、蓋を開けてみると・・・。
ハイ、ドーン!100点つけてもいいくらいのドラマになっていたと思います。
原作の良さ、エピソードをほとんど削ることなく、原作に対し貪欲に真摯にドラマにしたと思います。
ドラマは主軸に空井、稲葉のラブエピソードと仕事の話を軸にしながら、原作にもあったサブのストーリーも見事に織り込んでいました。
柚木・槙のエピソードも、片山・比嘉の話も好きだったので取り上げてくれていたのは嬉しかったです。
ドラマならではのキャラクターを立たせて方というのも見事で、鷺坂室長は当初ややくどいかと思いましたが、結局彼がドラマ的にはすべてをわかっている人なので、話を動かすキャラとしてうまく使えていたと思います。
あとはやはり航空自衛隊の協力がすごかった。
毎回、普段ではなかなか見れないすごいものを見せてくれる。
これは小説では味わえないもので、やはり映像のものすごさを感じさせてくれました。
ここまで空自が協力するの!とびっくりもしましたが、まさに広報室としては広報効果は莫大なものとなるでしょう。
鷺坂室長であれば、電卓叩いて何億円!と言っているかもしれません。

ドラマを毎回楽しみに観ていたのは、原作の再現性の点だけではありません。
本作は「仕事」に対してどのように取り組むかという姿勢をまっすぐに描いています。
空井にしても、稲葉にしても、それぞれ一度挫折をし、自分が思い描いた仕事ではないけれど、今の仕事に対してやる意義を見いだし、それに真摯に取り組んでいる。
その真摯さに毎回打たれたんですよね。
仕事をしていれば失敗もするし、凹むこともある。
それでも自分がやることに意味がある、意味を見いだす、そうしていけば仕事に向き合う姿勢が変わる。
有川さんの作品は自分の仕事に対しての誇りというか意義みたいなものを描くことが多いですが、それをまっすぐにドラマでは描いていたのが良かったです。
仕事に対してのまっすぐさというのは、主役の二人の姿だけでなくて鷺坂の阪神淡路大震災のときのエピソードであったり、稲葉の同僚のアナウンサーの藤枝のエピソードなどにも表現されていて、ドラマとしてのひとつのテーマになっていたと思います。
あと自分の仕事に関してで言うと、広報・広告的なことをやっているので、ドラマで描かれていた広報・広告活動やマスコミとの対応、お客様への対応などについては「そうなんだよね・・・」とか「あるある〜」といった共感性のあるところが各所にあってツボでありました。
自分が日々業務で悩んでいるようなことなどが空井の悩みともオーバーラップしたんですよね。
このあたりも見ていて感情移入をしてしまった点です。
しかし、ほんといいエピソードが多かったです。
浜松の基地でフライパスするエピソードも好きですし、広報ビデオで女性整備士を取材するエピソードも良かった。
これらは小説とそのまんまなのですけれど、画になるとやはり違った感じに見えます。
女性整備士が父親である自衛官の墓に花を手向ける際に、奇跡的にC-1輸送機が上空を飛ぶというエピでしたが、これが映像で見るとまたじーんときてしまって。
これに安室奈美恵さんのテーマがかぶるから涙腺決壊。
ドラマ後半はテーマ曲が流れると涙腺決壊というパブロフの犬状態になっていました。

最終話は原作でも追加のエピソードであった松島基地の話でした。
こちらについては今だからできる、今しかできない、奇跡的なエピソードとなっていたと思います。
ブルーインパルスは宮城の松島基地を本拠としています。
ドラマで触れられていたように松島は震災で津波の被害を受けました。
そのときはたまたまブルーのTー1は九州に行っていて被害を受けませんでしたが、基地及びその他の飛行機は津波にやられました。
今年の3月にブルーインパルスは松島に戻ってきています。
だからこそ、今だからこそできる、今しかできないエピソードであったと言えます。
また震災から3年経ち、次第にその記憶も薄れていく中で、このようなドラマを通じてその記憶を忘れないようにすることにもなります。
そういう意味で今この作品をドラマとして放送するという意義もあったと思いました。

最後にちとマニアックな話を。
広報官の一人、片山を演じていたのは要潤さん。
稲葉の同僚藤枝は桐山蓮さん。
要さんは「仮面ライダーアギト」でG3の氷川誠を、桐山さんは「仮面ライダーW」でWの左翔太郎を演じていたライダー出身者。
最終回でライダー出身者が二人がメアドを交換というのはちょっとほくそ笑みました。
ちなみに主人公空井を演じていた綾野剛さんのデビュー作は「仮面ライダー555」の重要な登場人物澤田という役でした。
ここもライダー繋がり。
あと最終回に松島基地の女性隊員役で、高山侑子さんが1シーンだけ出ていました。
彼女は航空救難隊(「空飛ぶ広報室」でも取り上げられていましたね)を扱った映画「空へ -救いの翼-」で主人公の女性ヘリパイロットでデビューしています。
その縁ですかね?

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コメント

Ninjaさん、こんばんは!

このドラマでは南明菜さんがやっていた女性整備士の回にC−1は登場しましたよね。
あの役を高山さんが演じていたらあまりにあざとかったかもですね。
それでもあの回でC-1が頭上をフライパスするところは涙腺決壊でしたが・・・。

投稿: はらやん | 2013年7月 5日 (金) 20時48分

ハマりました~
ドラマを2,3回観たところで原作を読んだのですが、よくできたドラマでした。
毎日曜日の9時が楽しみでした。(うちのテレビはHDD内臓ではないもので、リアルタイムでしか観られないのです。)
まずは脚本の良さ。有川さんの作品(この作品以外も)をよく読みこんで理解している人が書いたということがよくわかる。
役者の良さ。実は「八重の桜」で綾野剛という人を初めて観て「この人は誰っ?!」。そして空井役の彼を観て・・・全然表情が違う。唸りました。柴田恭平をはじめとする脇役陣もすごかったし。
そしてなんと言っても空自。ディテールに嘘が無い。

まさかブルーレイ買わないよね>自分
と思いつつ、でももしかしたらトチ狂って買うかもしれない(自爆)


投稿: foggykaoru | 2013年7月 1日 (月) 21時52分

res有難うございます。
たしか「空へ」の撮影時に、リアル自衛官の皆さんに「君が赤ちゃんだったころ抱っこしたことがあるんだよ」など色々声をかけられ、とても大事に扱っていただいたと言っていたと記憶しています。
リアル自衛官の皆さんのアイドルであり、娘でもある彼女が出ない訳は無いと思っていました。

欲を言えばお父さんのC-1で出演してほしかったのですが、それをやると左巻きから「あざとい」と言われるのを嫌ったのか・・・リアル自衛官の皆さんを爆泣きさせるのを避けたのか・・・まぁでも最終回に間に合って良かったです(^o^)

投稿: Ninja | 2013年6月30日 (日) 23時25分

Ninjaさん、こんばんは!

高山さんのお父さんが自衛官で殉職したという話は聞いたことがありましたが、メディックだったんですね。
メディックは本作でも紹介されていましたが、空自の中でも精鋭中の精鋭なんですよね。
高山さんも本作では震災に襲われた松島基地の隊員役でしたから、まさに運命の巡り合わせですよね。

投稿: はらやん | 2013年6月30日 (日) 19時45分

高山侑子さんに気が付いてくれる人いてウレシス
仮面ライダーウィザードにレギュラー出演中の彼女、wikiから転載

>父親は、航空自衛隊新潟救難隊の救難員(メディック)だったが、
>2005年4月、訓練中の墜落事故で殉職している。同年秋に防衛庁(当時)で実施
>された自衛隊殉職隊員追悼式に出席するため家族で上京した際、原宿でスカウト
>された。
>2008年、映画『空へ-救いの翼 RESCUE WINGS-』で映画初出演・初主演を果たした。
>父親の追悼式でスカウトされたことや初主演映画が航空自衛隊を扱った作品である
>ことに運命的なものを感じるそうで、「父に導かれたような気がする」と語っている。

リアル官品娘の彼女がこの番組に出演したのも父上の御差配ですね。
粋なキャスティングしてくれる。

投稿: Ninja | 2013年6月30日 (日) 18時51分

みゆみゆさん、こんにちは!

本作は一番映像化が難しい作品なように思いました。
しかし、空自が本気のバックアップで、素晴らしかったです。
確かに空自にとっては大きな広報の成果になったと思います。
エピソードもよかったですよね。
毎回うるっときてました。

投稿: はらやん | 2013年6月29日 (土) 05時57分

原作の実写化がここ最近多い有川作品ですが、まさか自衛隊モノがゴールデン枠で連続ドラマとして放送されるなんて思いもしませんでした。

原作にあるエピソードも、原作にはないエピソードもよかったですね。

特に最終回は、感動的でした。

原作同様に自衛隊の「広報」なドラマにもなっていたと思います。

投稿: みゆみゆ | 2013年6月25日 (火) 20時28分

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 有川浩の小説は自衛隊モノでもそれ以外のジャンルも好きです。航空自衛隊の広報室が舞台の小説『空飛ぶ広報室』(リンク先は当ブログ感想記事)はハードカバーにつられて表紙買いしてしまいました。本を買ったのは昨年夏ですが、読んだのはドラマ化が決定してから。まさ...... [続きを読む]

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