本 「トッカン vs 勤労商工会」
高殿円さんの「トッカン -特別国税徴収官-」の続編です。
京橋中央税務署の徴収官、主人公鈴宮深樹(上司につけられたあだ名はぐー子)の悪戦苦闘と成長の日々を描くお仕事系小説。
よく会話の中で「お役所的対応」と言われることがありますが、これはマニュアル的で杓子定規な対応のことを指しますよね。
お役所が発する「決まりですから」「法律ですから」という言葉は、相手の状況を斟酌しない感じがあります。
これは別段、役所に限ったことではなく、民間でもそういうような対応をする会社(または部署、または人)っていうのはいるものです。
個人的にはこの「お役所的対応」をする人とかはけっこう嫌いなのですが、ただそうしてしまうという理由もわからなくはありません。
個々の事情を斟酌していたら、かえってサービスの濃度が変わってしまい、不公平になるとか。
それぞれの細かい状況に関わっていたら、仕事が滞るとか。
これはすごくわかるんです。
でも、それが習い性のようになり、何を言われてもマニュアル的に対応してしまうというのはやはり問題だなとは思うのですよね。
問題な点というのは、サービスされる側にとってもそうなのですが、そのサービスをする側にとってもです。
いわゆる「お役所的」対応というのは、ただ単にマニュアルに従って対処しているだけなわけで、そこには仕事の達成感というのはあまりないのではないのかなと。
仕事はお給料をもらうためだけの労働だと割り切ってしまえばなんでもないのかもしれないですが、それではあまりにつまらないと思うのですよね(たくさんの時間をかけているわけですし)。
仕事には達成感のようなものはやはり必要だと思います。
「お役所的な」な対応は、サービスを提供をする側にとっても、その仕事を無味乾燥なものにしているような気がします。
主人公ぐー子も本作ではそのような悩みにぶつかります。
仕事をまかされているけれど、次々にいろんなことが起こる。
税金を滞納する人の事情はいろいろ。
その事情を斟酌すると、仕事がまわらない。
それをいつかしら「法律ですから」という一言で片付けてしまう。
けれどそれでいいのか、とぐー子は悩むわけですね。
その一言で片付けてしまった中に、ほんとに手助けできる人はいないのかとか。
このシリーズの主人公ぐー子(言いこめられて「ぐ・・・」と何も言えなくなることからつけられたあだ名)はけっこう悩み、足掻くんですよね。
決して他のお仕事系の小説より、それはスマートではない。
だけれどそのスマートじゃないところが、みんなが実際に仕事をしている中で日々悩むことに近いのではないかなと思ったりします。
悩んで、やって、失敗して、悩んで、やって、失敗して。
その繰り返しの中で少しずつ成長していく。
悩みもせず、やりもせず、だから失敗もしないのでは、そこには成長はないのですよね。
そう思うから、ぐー子にはシンパシーを感じるんです。
「トッカン vs 勤労商工会」高殿円著 早川書房 文庫 ISBN978-4-15-031097-4
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コメント
フーセンさん、こんにちは!
このシリーズおもしろいですね!
グー子のがんばっている姿がいいです。
『上流階級 富久丸百貨店外商部』は先日買ったので、年末年始に読もうかと思っています。
投稿: はらやん | 2013年12月25日 (水) 07時38分
成長物語で、楽しい~
高殿円さんの新作『上流階級 富久丸百貨店外商部』を読みました。
面白かった〜こんな世界もあるのね。
birthday-energy.co.jp/ってサイトは高殿円さんの本質にまで踏み込んでましたよ。宿命を読み取ると、庶民的おばちゃんモード、なんだそうな。コラムをぜひ読んでね♪
「ハレる運命2014」も配信中!!
投稿: フーセン | 2013年12月25日 (水) 00時57分