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2013年4月20日 (土)

「ハッシュパピー バスタブ島の少女」 たくましく生きろ!

無名の監督、そして6歳の少女の主演であるにもかかわらず、アカデミー賞にノミネートとなって話題になった作品です。
主人公は邦題にもなっている幼い少女、ハッシュパピー。
彼女の世界は言うなれば、三重に破滅の危機に面しています。
まずは地球全体、南極の氷が解け、世界各地が水没の危機に面しているように思われます。
そしてハッシュパピーが暮らすバスタブ島。
沿岸部にあるこの島は、水没の危機にさらされています。
またハッシュパピーの父親は死に至る病いにかかっています。
幼い子にとって、親に守られている家こそが世界。
父親の死は、子供にとって世界の破滅にも等しいのです。
このように彼女をとりまく環境はとても厳しい。
けれど、父親はハッシュパピーに「Beast It!」と言います。
これは「むさぼれ!」という意味のようですが、「たくましく生きろ!」という彼の娘へのメッセージであると思いました。
劇中で、ハッシュパピーの先生が古代人の話をします。
古代人は野獣の恐怖に震えていたと。
しかし人間は震えていたわけではないのですよね。
その恐怖に立ち向かい、たくましく生き残ってきた。
世界が破滅に向かおうとしていても、人はたくましく生きることができる。
いや、たくましく生きなければならない。
物語に挿入される巨大なイノシシのような野獣。
これは南極の氷の中から現れたように描かれていますが、これが世界が滅びに向かっていること、その恐怖の象徴でしょう。
けれど幼い少女、ハッシュパピーは最後にその野獣に正面から立ち向かう。
滅びを前にしても、あきらめずたくましく生きようとする意志が彼女の目から伝わってきました。

野獣が巨大なイノシシのようであったこと、自分としては「Beast It!」を「たくましく生きろ!」というメッセージとして受け取ったことから、観終わったあとは「もののけ姫」のようであったなと思いました。
その後、パンフレットを観てみたら、解説では「風の谷のナウシカ」「崖の上のポニョ」との関連を指摘していました。
なるほど・・・なんとなく宮崎駿監督の影響が伺われるのかもしれません。
よく考えてみると宮崎監督の作品は世界が破滅にひんしていて、そういった状況の中でも少年少女がたくましく生きようとするというテーマが多いのですよね。
「未来少年コナン」しかり、「風の谷のナウシカ」しかり。
親を失う=子供にとっての世界の破滅という点では、「千と千尋の神隠し」も通じるところがあるように思います。
これもパンフレットによると、監督のベン・ザイトリンはアニメーション作家でもあるそう。
監督は宮崎作品の影響を受けているかなと思ったりもしました。

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コメント

まっつぁんこさん、こんばんは!

宮崎駿監督の影響、なんか感じられますよね。
僕は本作のイノシシに、「もののけ姫」のタタリ神を感じたんですよね。
共通しているのは圧倒的な不幸の運命のイメージでしょうか。
けれどそれに少女が屈せず立ち向かうところに、宮崎監督との共通性を感じました。

投稿: はらやん | 2013年4月23日 (火) 22時49分

宮崎駿監督は偉大ですね。
観た時はまったく気が付かなかった。
が、たしかにテーマに共通性ありますね。
何で気が付かなかったのか?
絵柄が全然違うから(笑)

投稿: まっつぁんこ | 2013年4月22日 (月) 23時11分

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