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2013年4月28日 (日)

本 「原発報道とメディア」

うむ、読み応えのある一冊でした。
タイトルを読んだときのイメージは原発報道そのものへの批判なのかなと思っていたのですが、そうではなく、この時代におけるジャーナリズム論というところまでも包含した内容となっていました。
原発の可否云々の個人的見解についてはこの記事では触れません。
ただ東日本大震災以降の原発に関する報道、そして人々の反応にはすこし違和感を感じていたのですが、本著はその違和感を明らかにしてくれたような気がします。
原発に関して言うと、絶対反対派(原発ゼロを言う人々)と原発容認派(原発がなければ日本は立ち行かないと言う人々、さすがに今は絶対安心だという人はいませんが)に大きく二分されているように見えますし、報道も助長している傾向があります。
また原発の危険性のみ多く語られていますが(特に実際の福島以外のところで)、避難することによる別のリスクもあるわけですね。
例えば、住み慣れた土地を離れ医療行為を十分に受けられないとか。
そういうことはあまり報道をされず、また一般の人々にも知られていません。
つまりは原発ゼロか、原発維持かという二者択一という問題では本来はない。
その間でリスクやメリットを議論し、それを修正しながら、最適解を見つけていくという作業が本来は必要なのです。
今は二者択一論が蔓延し、報道もそのような姿勢にたっています。
しかし、本来のジャーナリズムはそういうところ以外のところにも知ってもらわなければいけないこと(先の避難先での医療を不十分にしか受けられないことなど)をしっかりと伝えなければいけない。
ジャーナリズムは速報性という側面と、その事実の検証という行為の側面があります。
大きな事故のときは速報性が重視されますが、その事実の検証という行為がこの原発報道ではあまりされていない感じがあります。
危険性ばかりを強調し、その中には意外といい加減なデータに基づくものがあったり、偏った見方があったりしたりもします。
著者は可謬性(誤ったところを直していけること)という言葉を使い、その検証の重要性を説くのと同時に、そういうことを一般にも共有するべきと言います。
そしてまたマスコミュニケーションの課題に付いてもしてきます。
報道がセンセーショナルになりがちなのは(特にテレビ)は、マスメディアそのものが持つ、人々の興味関心が高い情報を発信するというそもそもの性質によるためです。
ですので、反応がよい(つまりは視聴率がとれる、部数がでる)という情報に収斂されていくわけです。
ではその対極にあるように思われるネットメディアはどうでしょう。
震災の時にTwitterが活躍したのはみなさんも知っていることだと思います。
現場からならではの速報性が今回の地震では機能しました。
しかし、これもみなさん知っているようにデマなども多くみられ、マスメディアでは一般的に行われている情報の確からしさ(あくまで確からしさなのですが)の検証は行われていません。
その点がひとつの課題です。
またGoogleなどの検索エンジンは、いわゆるマスメディアにあると言われる情報の偏向性(当局やスポンサーに都合の悪い情報は流さない)ということに対して、そうではないと言われています。
しかし著者はそれについては、マスメディアとそんなに変わらないと言っています。
Googleはその表示順は彼らのアルゴリズムのページラングという考え方で決まっています。
より人々に観られ、よりリンクされているページが上にくるという考えです。
これは人々が興味関心があるものを観やすくするという点においては、視聴率が高いもの、部数が売れるものを報道するという従来メディアを変わらないということです。
それを機械的にやっているか、人の手(編集者)がやっているかという違いなわけですね。
著者はジャーナリストはそういったメディアの特徴を理解した上でそれらを駆使していく必要があると言います。
そしてまたその視点の座は、冒頭に書いた二者択一という視点ではなく、可謬性を持ちつつ最適解をみつけていくまさに振り子のような作業をしていくべきだと。
これはなるほどと思いました。
重大な事故なので、一般の人もメディアも過剰に振り子が振れるということ自体はわかります。
けれどその中で、冷静な目を持ち、将来に向けて最適解を見つけていく作業というのが大事であると改めて思いました。

「原発報道とメディア」武田徹著 講談社 新書 ISBN978-4-06-288110-4

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