本 「UFOはもう来ない」
と学会会長でもあり、数々の小説もある山本弘さんの作品。
と学会とはいわゆる「トンデモ本」を品評する私的な団体です。
「トンデモ本」のネタの中でもUFOというのは大きなネタのひとつです。
そのUFOを真っ正面から題材に山本さんが挑んだのがこの作品です。
山本さんの作品はUFOとか怪獣とかいった「トンデモ」ネタを扱うことが多いですが、それに対してはかなり科学的な設定を作りリアリティをもった作品にしていますよね。
この作品もその姿勢は表れていて、本格的な異星人コンタクトものとなっています。
地球人がUFOやらエイリアンについて、様々な小説や映画などの作品、体験したというようなトンデモ話、またカルト系の教義などがありますが、それはやはり地球という文化で生まれ育った文化の延長線上の想像でしかないのですよね。
もし異星人がいたとして、彼らはまったく違った環境で育ったわけで、地球人が想像もできないような文化になっているはず。
その大きな文化の壁を越えられるのか、越えられないのかというのが本作の大きなテーマとなり、実は意外と大きな話であったりします。
この作品の中ではたびたびアーサー・C・クラークの「幼年期の終わり」という作品があげられます。
個人的にはこの作品はクラークの中でも最高傑作だと思っているのですが、この作品は地球人が進化し、地球という惑星の枠組みを越え、新たなステージへ登っていくことが描かれます(ですので、「幼年期の終わり」というタイトルがつけられているのです)。
本作も山本弘さんとしての地球人の「幼年期の終わり」の前章を描いているような気がします。
クラークの「幼年期の終わり」は異星人の導きがありつつ、地球人が新しいステージに登っていく様子が描かれています。
しかし山本さんとしては、地球人が幼年期を終わらせるためには、何か特別な外からの力によるものではなく、やはり地球人が自らの問題を自身の手で解決し、その上で新たな高みへ登っていかなければならないといったことを言いたいように感じました。
それを地球人ができるかできないか。
できたとき、地球人の幼年期が終わるのでしょう。
「UFOはもう来ない」山本弘著 PHP研究所 ハードカバー ISBN978-4-569-80914-4
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