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2013年3月20日 (水)

本 「ダイナー」

知らない作家さんでしたが、いろんな書店で平積みになっていたので手を伸ばしました。
大藪春彦賞と日本冒険小説協会賞の受賞作品でもあるそうです。
タイトルに「ダイナー」とありますが、本作は客が殺し屋のみの特殊なアメリカンな食堂を舞台としています。
そこにあるきっかけで投げ込まれた女、オオバカナコ。
そのダイナーでウェイトレスをするように言われますが、訪れる客は歪んだ心理の殺し屋たち。
店の中で殺戮が行われるのもしばしば。
いつ無惨な死を迎えてもおかしくないその店でカナコは生き残れるのか・・・。

最初に言っておきますが、この作品、苦手な人は全然ダメだと思います。
けっこう、イタい、グロい描写が多いので、そういうのがダメな人にはお勧めしません。
かくいう僕もそうなのですが。
なので最初読み始めたときは「読むんじゃなかった・・・」と後悔の念に駆られました。
あとは描写が独特な方かなとも感じました。
イタい、グロいところ、また食べ物のうまさの表現は様々な比喩を使ってしつこいくらいに書き込みます。
しかし状況描写などはけっこう簡略されているので、人物がどこにいるとか、誰がどのセリフを言ったとかがわかりにくく「どういう状況?」となったりすることもありました。
そういうやや苦手な部分もありながらも、最後まで、それも一気に読んでしまったのは、その圧倒的なストーリーのパワーがあったからのように気がします。
舞台となるダイナーでは、シェフがこだわりのハンバーガーを出します。
そのハンバーガーはボリュームもあり、濃厚で、ただ食べ始めると止まらないほどのおいしさがあります。
そのハンバーガーと同じような印象を本作には感じました。
体に悪いと思いつつも食べてしまう、グロいなと思いつつも読んでしまう、みたいな。
あとがきで作者の平山夢明さんは読者を「やるなら徹底的にブン回してやりたい」と書いていました。
本が売れない時代に本を買ってくれる読者に対し、「グゥの根も出ないほど徹底的に小説世界に引き摺りこみ、窒息させるほど楽しませよう」という物語を書こうとしたということ。
その平山さんの思いを具現化している作品だと思いました。
平山さんの思い通りにブン回されて、引き摺りこまれました。

「ダイナー」平山夢明著 ポプラ社 文庫 ISBN978-4-591-13117-6

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