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2013年3月17日 (日)

本 「巡査の休日」

佐々木譲さんの「北海道警察」シリーズの第4作になります。
第1作の「笑う警官」は映画にもなったのでご存知の方も多いのではないでしょうか。
このシリーズはいわゆる「警察小説」に分類されるものだといえます。
日本では「探偵」のような役回りはこの現代社会においてリアリティがないためか、最近は警察官を主人公にしたミステリーのジャンルが確立してきています。
これを「警察小説」という事があります。
多くの警察小説では、その警察官の個性が際立ち、ヒーロー・ヒロイン然とすることが多いですが(例えば誉田哲也さんの姫川玲子シリーズとか)、「北海道警察」シリーズについてはそのような感じはありません。
1作目から警察内部の陰の部分を暴いていくという筋になっていますが、それに挑むのは佐伯や津久井、小島などの一介の巡査たちなのですね。
彼らは我々に近い感覚の正義に、警察官という職務に忠実にあろうと、行動をします。
ただ警察組織の一員として、同じ警察官の身を守ること、組織を守るこということへのジレンマも感じます。
このあたりは普通のサラリーマンの感覚にも通じるところではないでしょうか。
彼らは決してヒーローやヒロインではなく、職務に忠実に行動し、悩む我々の感覚に近い人々なのです。
そのあたりが共感性があるのでしょうね。
4作目の本作では佐伯、津久井、小島は別々の事件を追っています。
過去の事件とのしがらみ、新たに発生する事件、それらは別々に進行しているように見えながら最後には収斂されていきます。
いくつかミスリードを誘うようなところもあり、読み応えもあるかと思います。
タイトルに「巡査」とあるのは、やはり主人公たちが一介の現場の刑事であるということを表しているのでしょう、ヒーローやヒロインではなく。
そして事件が解決し、彼らが休日に一杯やる、ということ、これはやはり我々普通に仕事をする者が仕事のけりがついたときにやる一杯と同じで、彼らに共感性を持つことになるのですね。
このあたりはうまいなと思いました。

「巡査の休日」佐々木譲著 角川春樹事務所 文庫 ISBN978-4-7584-3554-3

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