「遺体 明日への十日間」 まだ2年、もう2年
観ている間、劇場で鼻をすする音が至る所でしていましたが、花粉症のシーズンになったからというわけではないのでしょう。
かくいう自分も鼻をすすっていたひとりでした。
もう少しで東日本大震災から2年。
2年が経ち、やはりこういう映画を観ると当時のことを生々しく思い出したりもするわけです。
脚本や演技や、作品の出来がどうこうということではなく、演技であり劇化された映画であるとはいえ、やはりあの震災に見舞われた方々の姿を観ると、心は動揺し、こみ上げてくるものがあるわけです。
まだ2年なのですね。
でも、東京で暮らしていると普段の生活は以前のように戻り、なんとなく日常が過ぎているようにも感じます。
もう2年も経ってしまっていて、次第に震災のことが風化し始めているようにも感じます。
そういった時期にこのような作品を作ることは意味があるように思います。
さきほど書いたように作品の出来がどうこうという評価は個人的にはなかなかしづらいなと思っています。
ですので、今回は作品を観て感じたことを、散文的に書いていこうと思います。
本作で描かれるのは、震災直後から急遽遺体安置所となった学校で働く人々です。
医者やボランティア、市の職員、葬儀社の社員、彼らも被災地で暮らしていた人々であり、災害から生命が助かった方たちです。
職務として遺体を取り扱う彼らは、未曾有の災害を前に声もでません。
なかでも若い市職員及川、そして優子は大きく動揺します。
及川は友人の行方が不明になり、まさに茫然自失の体となり仕事にも手がつかなくなります。
優子は遺体や遺族の方の姿を見て、「自分なんかが生きていいの?」と泣き崩れます。
彼らの姿にはリアリティを感じました。
若いがゆえに人生の経験が少なく、大きな出来事を受け止めきれない、そんな感じが伝わってきました。
もし自分がその場にいたら同じように何もできない状態になってしまったのではないかと思います。
医師の下泉、歯科医師の正木は、遺体の確認の作業を休むことなく続けます。
彼らがみる遺体の中には彼らの知り合いの姿もあり、彼らも動揺はしますが、亡くなった方のため、遺族のためにプロの責任感を持ってその仕事を淡々と続けるのです。
彼らの姿には大人を感じました。
そしてボランティアで遺体安置所を管理した相葉からは、起きてしまったこと自体にくよくよするのではなく、いかに前に進むのかという人としての大きさを感じました。
彼は「やるべし、やるべし」と口にしますが、大きな出来事に呆然とするより、床をきれいにすること、遺体を大切に扱うこと、そういった目の前にある些細だけど自分ができることを少しずつやっていくことで前に進むことができるということを知っているのですね。
そういった大人の姿を見て、誰かに言われるでもなく、自然に動き始める及川や優子の姿にじんときてしまいました。
相葉が「ここにあるのは死体じゃないですよ、ご遺体ですよ」と言う場面があります。
この言葉を聞いて、何か日本人の死生観のようなものを感じました。
死体という言葉にはとても「物体」という感じがするのですね。
でも「ご遺体」という言葉には人としての尊厳が感じられます。
遺された体、ということですよね。
映画「おくりびと」や、先日読んだ「エンジェルフライト」は、遺体を取り扱うお話でした。
日本人というものは遺体をとても丁寧に扱おうという民族なのだなと思います。
生きていた人へ敬意をはらい、その方の魂が肉体を離れても、遺された体を大切に扱うという気持ちがあるのかもしれません。
乱暴に扱うというのはそれをもう物体としてしか見ていないということ。
そこに人の尊厳を見るのであれば、おのずと丁寧に扱うわけですね。
遺体にお化粧をしたり、話しかけたりすることによって、生きているかのように扱う。
そういったことはその人が時間の中であるときだけ存在しただけというのではなく、その人の生が、生きている人の中で続いていくといったことに繋がるのかなと思ったりもしました。
そして生きている人の中でも故人が生きていると感じることにより、生きている人もよりよく前向きに生きていけるのではないかと思ったのですね。
そういった日本人の精神というのは、やはりとても良いものだと感じました。
ひどくとりとめのない話になりました、今回は。
監督と脚本と務めたのは君島良一さん。
君島さんというと「踊る大捜査線」のイメージが強いですが、監督される作品は意外と社会派なものが多いんですよね。
「容疑者 室井慎次」も「踊る」シリーズの中では社会派的な感じですし、「誰も守ってくれない」はまさに社会派という感じです。
本作は映画的にテクニカルにするのではなく、オーソドックスに淡々と撮っていた感じがします。
そういった姿勢に、大震災を映画化することに対する誠実さを感じました。
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» 遺体 明日への十日間/西田敏行 [カノンな日々]
東日本大震災で被災した岩手県釜石市の遺体安置所を題材とした石井光太さんによるルポルタージュ「遺体 -震災、津波の果てに-」を基に『誰も守ってくれない』の君塚良一監督が映画 ... [続きを読む]
受信: 2013年3月 9日 (土) 09時52分
» 遺体 明日への十日間 [to Heart]
2011年3月11日
あの未曾有の災害に直面し
困難な状況と向き合った人々がいた
彼らには、
悲しむ時間さえ無かった
上映時間 105分
原作 石井光太
脚本:監督 君塚良一
音楽 村松崇継
出演 西田敏行/緒形直人/勝地涼/國村隼/酒井若菜/佐藤浩市/志田未来/筒井道隆/沢村一...... [続きを読む]
受信: 2013年3月 9日 (土) 11時43分
» 映画『遺体 〜明日への十日間〜』★いまだ身元不明の方々のことを心に留めて…… [**☆(yutake☆イヴのモノローグ)☆**]
作品について http://cinema.pia.co.jp/title/160486/
↑ あらすじ・クレジットはこちらを参照ください。
釜石市で、津波被害に遭った方の遺体安置所で、ボランティアをされた男性を
西田敏行さんが、演じました。
2011年3月11日 ( 金 )
普段と変わりない..... [続きを読む]
受信: 2013年3月 9日 (土) 12時40分
» 『遺体 〜明日への十日間〜』 (2012) / 日本 [Nice One!! @goo]
監督: 君塚良一
出演: 西田敏行 、緒形直人 、勝地涼 、國村隼 、酒井若菜 、佐藤浩市 、佐野史郎 、沢村一樹 、志田未来 、筒井道隆 、柳葉敏郎
公式サイトはこちら。
間もなく東日本大震災から2年が経つ今、本作を公開したことはタイミングとして良か...... [続きを読む]
受信: 2013年3月 9日 (土) 16時33分
» 「遺体~明日への十日間」真摯な気持ちで向き合う [ノルウェー暮らし・イン・原宿]
同じ日に別の試写会も当たっていた私。
でも、私はこの映画を観なくては。
正直、まだ時期尚早なのでは?という思いが鑑賞後も強く残ったのは事実。
しかし震災時多くの方の尽力があってこそ、亡くなった方々とそのご遺族の魂が共に旅立ち見送る事ができたと、あえて伝える事も大切なのだと思わずにはいられない。... [続きを読む]
受信: 2013年3月10日 (日) 00時20分
» 遺体 〜明日への十日間〜 [いい加減社長の映画日記]
これは、観ておいた方がいいかと思って・・・
「オフィシャルサイト」
【ストーリー】
東日本大震災発生後、混乱状況の中、数多くの遺体が発見され、遺体安置所に運び込まれることになった。
次々と運び込まれてくる多くの遺体に戸惑う警察関係者や市職員たち。
そして...... [続きを読む]
受信: 2013年3月10日 (日) 01時18分
» 遺体 〜明日への十日間〜 [象のロケット]
2011年3月11日14時46分。 マグニチュード9.0、最大震度7という国内観測史上最大規模の東日本大震災が発生し、最大40メートルの津波が東北地方と関東地方の太平洋沿岸部に壊滅的な被害をもたらした。 岩手県釜石市では廃校の中学校体育館が遺体安置所として使われることになったが、その数の多さに関係者は驚くばかり。 民生委員の相葉は、安置所でボランティアとして働くことになったのだが…。 実話から生まれた震災ヒューマンドラマ。... [続きを読む]
受信: 2013年3月11日 (月) 15時16分
» 遺体 〜明日への十日間〜 [迷宮映画館]
あの日と、その後のことをしっかりと覚えていた自分にも驚いた。 [続きを読む]
受信: 2013年3月14日 (木) 08時01分
» 映画「遺体 明日への十日間」感想 [タナウツネット雑記ブログ]
映画「遺体 明日への十日間」観に行ってきました。2011年3月11日の東日本大震災発生直後に臨時に設置された岩手県釜石市の遺体安置所を舞台に、遺体を管理する人達と遺族の... [続きを読む]
受信: 2013年3月17日 (日) 09時39分
» 遺体 明日への十日間 [とりあえず、コメントです]
石井光太著のルポタージュ『遺体 震災と津波の果てに』を原作に震災当日からの日々を描いた作品です。 釜石市の遺体安置所を舞台にしているので辛そうだなと観るのをためらっていましたけど、 やっぱりこれは観てみようとチャレンジしてみました。 これがあの震災の現実だったのだなと改めて想いを巡らせるような作品でした。 ... [続きを読む]
受信: 2013年3月17日 (日) 21時45分
» 「遺体 ~明日への十日間~」 [大吉!]
<水曜日>
(3月15日・ユナイテッドシネマ・会員サービスデー・10時~)
東日本大震災発生後、混乱状況の中、数多くの遺体が発見され、遺体安置所に運び込まれることになった。次々と運び込まれて...... [続きを読む]
受信: 2013年3月20日 (水) 16時43分
» 遺体〜明日への十日間〜★★★★ [パピとママ映画のblog]
報道されなかった被災地の記録として、大反響を呼んだ石井光太のノンフィクションを基にした人間ドラマ。
東日本大震災直後、元葬祭関連の仕事をしていた相葉は、遺体安置所でのボランティアを市長に直訴。故人の尊厳を守りながら日夜奔走することに。
この映画は、2年...... [続きを読む]
受信: 2013年4月12日 (金) 13時16分
» 遺体 明日への十日間 [マープルのつぶやき]
JUGEMテーマ:邦画「遺体 明日への十日間」監督:君塚良一原作:石井光太「遺体ー震災 津波の果てにー」2012年 日本映画 105分キャスト:西田敏行 緒方直人 勝地 涼 國村 隼 佐藤浩一 柳葉敏郎 佐野史朗東日本大震災直後の釜石市。続々と運び込まれる犠牲者の姿を見て、民生委員の相葉はボランティアで働くことを決意する。彼はかつて葬儀社に勤務しており、その経験から遺体に対し、優しく接するのだった。<お勧め星>☆☆☆☆ 全編涙なくしては見られませんで... [続きを読む]
受信: 2015年1月30日 (金) 08時56分
コメント
ミス・マープルさん、こんにちは!
僕もこの映画を観たときは涙が止まりませんでした。
どうしても年月が経つと風化してしまう記憶ですが、そうさせないためにもこういう作品は存在価値がありますよね。
投稿: はらやん | 2015年1月31日 (土) 12時26分
TBありがとうございます。
この映画は涙が止まりませんでした。
西田敏行が遺体に接するときの優しさが忘れられません。
忘れてはいけない、風化させてはいけない災害ですね。
投稿: ミス・マープル | 2015年1月30日 (金) 08時55分
sakuraiさん、こんにちは!
この時期にしっかりと誠実に作ったのはすばらしいと思いました。
西田さんは故郷も東北ですから思い入れもあったのかもしれませんね。
僕も予告でぐっときて、この映画を観ようと思いました。
投稿: はらやん | 2013年3月14日 (木) 09時50分
今このときに、難しい題材にまっすぐに臨んだ姿勢がお見事でしたね。
西田さんじゃなかったら、ここまで迫るものにならなかったかも・・と思わせるくらいの渾身の姿でした。
ひとつ難点は、予告で見せすぎた。
予告で既に号泣してしまってました。。。。
投稿: sakurai | 2013年3月14日 (木) 08時01分
kiraさん、こんばんは!
作り手の誠実さは僕も感じました。
未曾有の災害をただ悲劇として描くのではなくて、そこにいる人々に寄り添うようなスタンスでしたよね。
僕もこの映画は観るのに勇気がいるというか、重くなったりしたらどうしようかと思っていたのですが、観てよかったです。
おっしゃるようにたくさんの人に観てもらいたいですね。
投稿: はらやん | 2013年3月 9日 (土) 21時46分
震災自体が、うそのような・・あの日目に飛び込んできたのがあまりに凄惨な映像だった為、
なんとなく、重く悲しいという予感で、避けられるとしたら、・・・これはあまりにも勿体無い。
津波の映像はないし、本当に制作陣の誠実な取り組みが感じられる作品だから。。
「震災」「復興」という文字がTVに躍っているから、風化はありえないとかっていうんじゃないですよね。
あの時の、
大切なものを総て奪われた方が、残された方が、どんな日々を送ったのか、、、
こころを添わせてみることのできる作品でした。
是非、色んなところで上映を続けて、沢山の方に観ていただきたいです。
投稿: kira | 2013年3月 9日 (土) 11時58分