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2013年1月13日 (日)

「映画 妖怪人間ベム」 そうか、イエスか

まったく観に行くつもりはなかったのですが、なんとはなしに。
テレビドラマも観ていませんでしたし、オリジナルのアニメも内容はほとんど知らなかったもので。
知っていたのは「早く人間になりた〜い」ってセリフだけ。
そういうことで全く期待値もなかったからか、観終わって持った印象はけっこう良くできているな、でした。

ベム、ベラ、ベロ(この名前も知ってた)の3人の妖怪人間は、ある博士の研究から生み出されました。
しかしその博士が急逝し、放置されたその研究途中の物質から3人は誕生したのです。
この3人は人間の善良な部分だけを持つ生命体であったわけです。
実はそのとき同じ物質から、別の生命体「名前の無い男」が生まれていました。
「名前の無い男」は言わば悪の塊であり、彼が(ベロの言う)「緑ドロドロ」を人間たちに注入すると、その人間は自身の悪の心を暴走させてしまいます。
テレビシリーズはそういった悪の心を暴走させた人間と、そしてその元となった「名前の無い男」との戦いが描かれていたようですね。
人間というものは、その中に善良な部分と悪の部分を両方合わせ持っているもの。
同じ人物が時にはとても親切であり、また別の時にはとても意地悪であるというのもよくあることです。
日々、内面で善の心と悪の心が葛藤しているのが、人間と言ってもいいかもしれません。
ですので、ベム、ベラ、ベロが「人間になる」ためには、人間が持っている悪の側面も持たなければいけないというわけですね。
「名前の無い男」が自身を取り込めと、ベムに言うのはそういう意味でしょう。
3人の妖怪人間は感情が高ぶると醜い姿に変貌します。
そのため映画の冒頭に描かれているように、人助けをしたとしても、その容貌のために助けた人間に迫害され、追われてしまうのです。
それでもベム、ベラ、ベロは人を助ける。
人の中にはそういった醜い心だけではなく、善良な心もあるということを知っているから。
終盤の場面で、人を救おうとするためにベムが「俺達が犠牲になる」という言葉を残し、醜い姿になって警官隊の前にいく場面がありました。
ああ、なるほど、この3人はイエス・キリスト的な存在なのかもしれないと思ったわけです。
彼らは醜い心を持った医薬メーカー社長を含め、彼ら自身が犠牲になることにより人を救いました。
これは人の原罪を背負うために自ら磔となったイエスを髣髴とさせます。
彼らがその醜い姿のために迫害されることも、イエスのイメージに繋がります。
そういえば彼らが「人間になる」ことができるための草が生えていた廃墟の鉄骨は十字架のような形をしていました。
これは制作者側にもそういったイメージがあったということでしょうね。

ベム、ベラ、ベロを生み出した博士は人工的に人間を作ろうとしました。
それは完全なる人間を作ろうとしたらかもしれません。
人間というのは、そもそもが善と悪とがごちゃまぜな不完全な存在なわけですね。
ベム、ベラ、ベロは善の心を持ち、永遠に生きられる、そういう意味で人間よりも完全な人間であるかもしれません。
しかし彼らは「早く人間になりたい」と言います。
なぜ完全な彼らが不完全な人間になりたいと思うのでしょうか。
それは「孤独」なのかなと思いました。
彼らと同類であるのはあの3人だけ、それは永遠に増えもしない。
人というのは他人との関わりの中で生きていくもの。
彼らにはそれだけがありません。
3人が憧れるのはそういった人との関わりなのでしょう(本作でのベロとみちるのエピソードで象徴されるように)。
しかし多くの人間は彼らを迫害し、関わりを持つことができません。
彼らがそういったことに落胆しながらも絶望はしていません。
そして自分たちが関われなくても、自身を犠牲にして人々のそういった関わりを守ろうとするわけですね。
やはりこういったところにもイエスのイメージを感じてしまうのです。

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