「ジョーズ」 スピルバーグはやはりスゴい
新年早々、告白しよう。
映画ファンと言いながら、今の今までスピルバーグ御大の出世作「ジョーズ」をまともに観たことがなかったと。
いやテレビなどで放映されたときチラ見はしてたんですけれどね、どうも観る気がしなくって。
子供の頃、父親が初めて映画に連れてってくれたときに観た映画が「ジョーズ」のバッタもん映画の「タイガーシャーク」という映画で、子供心になんてつまんない映画だと思ったんですよ(なのでこんなマイナーな映画のタイトルを覚えている)。
そのためか、こういうアニマルパニック系の映画に拒否反応をもったからかもしれないです(しかし小学生の子供を連れて行く映画じゃないだろう・・・)。
で、ほぼ初めてということで通しで最後まで「ジョーズ」を観たわけですが。
面白いじゃん!(何をいまさら)
さすがスピルバーグがブレイクした作品なわけです。
この作品、全体は大きくわけて2つになると思います。
前半は姿見えぬ怪物に街が襲われるというアニマルパニック。
後半はブロディ、クイント、フーパーの3人の男が、巨大ホオジロザメに立ち向かうアクションサスペンスというところでしょうか。
前半、後半ともにそれぞれ巧みに作られていることがわかります。
前半は自分たちが何に襲われているかわからないということによる恐怖、パニックを描いています。
おそらくは予算、技術的な関係上、ホオジロザメは前半はほとんどその姿を見せません。
けれども見えないからこそ、そのおそろしさが伝わってくるんですよね。
このあたりは同じく予算がなかった「エイリアン」にも通じるところです。
超有名なジョン・ウィリアムズの「ジョーズのテーマ」、そしてここがスピルバーグの素晴らしいアイデアであるサメの「主観視点」。
冒頭からこの2つがミックスしておそろしさを盛り上げるわけです。
2人ほど襲われるのを見せられると、観客は次にこのテーマと主観視点が出てくると反射的に、「襲われる!」と思い込まされるんですね。
しかし、そのときは襲われないと。
「な〜んだ」と思っていると、次はガブリとやられて、観ている側は「えっ!」となるわけです。
その次は観ていると「でるか、でないか」疑心暗鬼になるという・・・。
このあたり、観客をコントロールしてしまうところはさすがスピルバーグです。
若いときからこれができるのだからすごいわけですね。
後半は、3人がサメと丁々発止のせめぎ合いをするというところが盛り上がります。
基本的に人間が戦う場所は海で、いわば「敵地」なわけですね。
それでもって人間が動ける場所は船の上だけ、そして使えるものは船に積んでいるものだけ。
というところでいうと、言わば「限定空間」の中で正体がわからない敵と戦うという、「ダイ・ハード」的な状況なわけです。
こちらが繰り出した手を相手のサメは全部返していって、人間側はより追い込まれていく・・・。
そこで限られた手の中で乾坤一擲の手を打つわけですが、そこまでが盛り上がる、盛り上がる。
どんどん追い込まれていく中での最後の手での逆転ですから盛り上がらないわけにはいかない。
また3人のキャラクターがそれぞれ個性が立っていて、このあたりの絡みもなかなか良いです。
登場人物が少ないのでより3人に焦点があたります。
昔の映画なので、現代の映画と違って長いプロローグやエンディングみたいなのがないので、このあたりもかえってシャープに感じます。
ホオジロザメのロボットが作り物っぽいのも時代を感じて味わい深いものがありました。
いまだったらCGですよね。
それだとああいう手触り感は感じないかも。
ライティングとか、カットの撮り方とかスピルバーグっぽい感じはこのときからすでに出ていますね。
才能が早熟な人なのですよね、スピルバーグ。
それを何十年も続けているというのが、やはりスゴい。
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