本 「悪夢の身代金」
木下半太さんの「悪夢」シリーズの最新作です。
最近、書くペースが早いような・・・。
前作の「悪夢のクローゼット」の記事の時、初期の作品の「悪夢のエレベーター」のような感じと書きました。
これは基本的にワンシチュエーションで繰り広げられるということと、一人称の語りが章ごとに登場人物が変わっていくことにより謎が次第に明らかになっていくという構造からでした。
そういう意味で言うと今回の「悪夢の身代金」は「悪夢の観覧車」に近い感じがしますね。
本作は一人称の語りが章ごとに変わっていき謎が明らかになっていくというところは同じですが、ワンシチュエーションではありません。
そういうところが「悪夢の観覧車」に近い感じがします。
最初はなんだかわけのわからない事件に巻き込まれた人物がいて、そのわけのわからない事件の本質が章ごとに変わる登場人物の一人称語りによって謎が明らかになっていいく。
本作でいうとクリスマスの日に大阪の梅田をミニスカサンタの格好をした女子高生が、身代金が詰まった白い大袋を担いで走るというシチュエーションが、わけのわからない事件。
身代金を運ばされている女子高生もなにがなんだかわからない。
なぜに、どうして?
こういう語り口は木下さんはうまいですね。
相変わらず最終章までかなり引き込んで読ませてくれます。
ただ最終章でいろいろ明らかになるのですが、ここら辺がやや強引なきらいも。
一気に伏線を片付けてはいるのですが、ちょっとね・・・。
とはいえ、エンターテインメント小説としては十分合格のラインを越えていると思います。
「悪夢の身代金」木下半太著 幻冬舎 文庫 ISBN978-4-344-41924-7
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