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2012年11月11日 (日)

「シルク・ドゥ・ソレイユ3D 彼方からの物語」 肉体の軌跡の美しさと3D

シルク・ドゥ・ソレイユはご存知の方も多いでしょう。
「サルティンバンコ」とか「アレグレア」とか一時、かなり広告も入っていましたから。
シルク・ドゥ・ソレイユはカナダを本拠地とするエンターテイメント集団で、彼らのパフォーマンスは「ヌーヴォー・シルク(新サーカス)」と呼ばれるということです。
シルクってサーカスという意味なんですね。
シルク・ドゥ・ソレイユは「太陽のサーカス」ということでしょうか。
元々彼らのパフォーマンスの原点は大道芸やサーカスであったわけですが、特徴的なビジュアルと、大掛かりな舞台装置を使った演出、音楽との融合なども相まって芸術性の高いエンターテイメントとして名を馳せました。
僕自身は本物のシルク・ドゥ・ソレイユの公演は見たことがありません(テレビでちょろっと見たくらい)。
しかし、印象的なビジュアルなどのイメージはあったので、一度は観てみたいなと思っていたのです。
本作を観て、パフォーマーのアクロバティックな演技、煌びやかな衣装、大きく空間を使った演出などはやはり目をみはるものがありました。
なかでも、人の肉体というものはかくも美しいものなのかと感じました。
本作を観て思ったのは、人の肉体の美しさというのはその造形のみではないということです。
人の肉体自体は、古くはギリシャの彫刻などからも美しさを感じられるように、造形そのものが持つ美しさはもちろんあります。
しかし、シルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマーの演技を観て思ったのは、造形美のみならず、その動きの美しさというのも確かにあるのではないかと思ったのです。
よくよく考えれば、古今東西のダンスや踊りといったものはその動き、所作の美しさを観るものであるのですね。
シルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマーが着る衣装は色はかなり鮮やかですが、意外とそのラインはシンプルです。
これは肉体の造形美を見せるということに加え、その動きの美しさを見えやすくするものであるのかなと思いました。
シルク・ドゥ・ソレイユはリアルな公演を通してその演技を披露しているわけですが、今回映画というメディアを選んだのはどういう意味があるのでしょうか。
映画という媒体により、多くの人に観てもらいたいというのはあるでしょう。
しかし僕は肉体の動きの美しさを見せるには映画が優れているという判断はあったかなと思いました。
公演においてパフォーマーには動きの美しさを見せるという意図はあると思うのですよね。
演技を滑らかに、そしてゆっくりと行うのはその肉体の軌跡をよく見せようという狙いだと思います。
この映画ではかなり多くの場面でスローモーションが使われていました。
なかなかリアルの公演では、動きが速くて、そして観客から舞台の距離が遠くて、肉体の軌跡が生む美しさを見せられないという点を映画は解決してくれます。
目の前で演技を観れるように、いろんな角度から演技を観れるように、という点が映画の利点でしょう。
しかし映画の弱点はそれらがどうしても二次元という平面に固定されてしまうということなのですね。
シルク・ドゥ・ソレイユの公演の醍醐味の一つは、空間を大きく使った舞台装置と演出にあると思います。
この空間感というのが二次元では失われてしまう。
また先ほど取り上げた肉体が描く軌跡も平面的な動きではなく立体的なものであるわけです。
これも二次元では失われてしまいます。
シルク・ドゥ・ソレイユの魅力を伝えるため、映画が持つ弱点を克服する解決策が3Dであったのでしょう。
次第にそそり立っていく壁でのパフォーマンスがありましたが、あれなどは普通の2Dではそのスゴさは伝わりにくかったでしょう。

<ちょっと脱線>
あのパフォーマンスはかなり印象に残りました。
ああいう立体的な機動ができるのであれば、映画に活かせると面白いなと。
例えば今度映画化される漫画「進撃の巨人」ではロープを使った「立体機動」というのがありますが、これをあんな感じでやれるとスゴいのじゃないかな。
それだったら3Dでやっても面白いかもしれない。

閑話休題。
本作は3Dであることにより、空間の持つ存在感、肉体の軌跡の美しさというものを伝えようとしていたのだと思います。
この映画がジェームズ・キャメロンの肝いりですが、3Dの浸透を図る側としての狙いもこの点になると思うのですよね。
3D映画は昨今たくさん作られていますが、まさに玉石混合と言った状態です。
悪貨は良貨を駆逐するではないですが、あまり良くない作品が増えてくるのは、キャメロンとしても頭が痛いところであると思います。
その点において、キャメロンとしては3D映画を作る場合のポイントを指し示しているように思いました。
3D映画が優れている点は、その空間性の表現力であるのだと考えます。
大きな舞台装置での立体的なパフォーマンス、そして肉体の軌跡の美しさ、それは3D映画の得意とする空間性を見せるのには最適の素材であったように感じます。

しかし、それでも映画が越えられない限界というのも確かにあるわけです。
それは舞台との共時性です。
目の前で行われているということが持つ圧倒的な力については映画は太刀打ちができません。
やはり一度はシルク・ドゥ・ソレイユの公演を観てみたいなと思った次第です。

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