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2012年10月23日 (火)

本 「空飛ぶ広報室」

こちらの作品、この時点において有川浩さんのひとつの集大成と言ってもいいかもしれません。
有川浩さんのデビュー作「塩の街」、そして「空の中」「海の底」と続く一連の作品群は「自衛隊三部作」とも呼ばれます。
これらの作品に共通しているのは、自衛隊を通り一遍の正義の味方、もしくは無個性の組織として描くのではないといことです。
自衛隊という組織も人で構成されており、それらの人々はそれぞれの人生があるひとりの人であるということ。
恋愛もするし、凹んだりもする。
そして任務に対しての強い責任感も持っている。
普通に仕事をして生きている僕たちと同じ、という描き方をしているのですね。
しばらく有川さんは自衛隊にまつわる物語を書いてませんでしたが、本作では久しぶりに取り上げ、そのスタンスは昔のままでした。
また今回タイトルにある「広報室」については「県庁おもてなし課」でとりあげた広報というものを再度題材にしています。
これは有川さんとしては気になるテーマのようですね。
また他の作品でもこちらのテーマについては取り上げられそうな気がします。
このテーマについては後ほど、もう少し書きます。
そして有川さんの作品と言ったら「ベタ甘」な恋愛ですよね。
こちらも本作ではあいかわらず健在です。
主人公の空井、相手役のリカの関係は、今までの有川さんの作品に登場する主人公たちを髣髴させます。
「頭なでなで」などは有川節の真骨頂で、相変わらずの「ベタ甘」なのですが、これはこれで「甘いっ!!」ていいながらもパクついて食べちゃうケーキみたいな感じです(なんだこの例え)。
有川さんの作品で描かれる恋愛は、「甘え」が描かれるんですよね。
男も女もとても無防備になってしまうとき、「甘えられる」誰かが居てくれる、何を言うわけでもなく、側に寄り添ってくれる人がいるという心地よさみたいなものが有川さんの作品の恋愛には共通しています。
本作は主人公二人だけでなく、空幕広報室の他のメンバーのサイドストーリーなどもいくつか描かれていますが、このあたりは「図書館戦争」シリーズを思い浮かべてしまいますね。
サブのキャラクターも魅力的なところも有川さんらしい。
というようなことで、本作は今までの有川浩作品のいいところをギュッとまとめたような感じがしました。
そういう意味で、現時点での有川浩作品の集大成と思えました。

あと本作で取り上げられている「広報」という仕事についてちょっと書きます。
自分は入社以来ずっと「広告」という仕事をしてきましたが、最近すこしづつ「広報」にも関わるようになりました。
「広報」と「広告」って普通の人には区別がつきにくいですが、ちょっと違う(小さな会社だとこの機能を兼務していたりしますが)。
本作でなるほどと思ったのは、新米広報官の空井が、テレビ局の新人ディレクターであるリカ(彼女は自衛隊に対していいイメージを持っていなかった)に自衛隊のことを好きになってもらうようになってほしいと仕事をするということです。
「広告」は直接的に消費者、つまりはお客さんにアプローチするコミュニケーションする方法ですが、「広報」はメディアを通して間接的にアプローチします。
ここが決定的に違う。
つまり「広報」はお客さんに好きになってもらうことを考えるだけでなく、伝えてくれるメディアにも好きになってもらわなくてはいけないということなのです。
ここは組織と組織というのももちろんですが、お互いに人として信頼し合えるような関係を築けるかというのがポイントとなります。
このあたりの「広報」の基本と言ったようなことが、本作の物語の中には込められているのです。
ですので、本作は仕事で「広報」をやるようになった方にはぜひ読んでほしい。
広報マンとしての基本が書いてあるように思いました。

「空飛ぶ広報室」有川浩著 幻冬舎 ハードカバー ISBN978-4-344-02217-1

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受信: 2012年10月29日 (月) 21時51分

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