「機動戦士ガンダムAGE」 世間的には評判はよろしくないが・・・
4クール(1年)にも及ぶ「機動戦士ガンダム」の新作シリーズです。
企画協力にはゲームメーカーであるレベルファイブ(「イナズマイレブン」「ダンボール戦記」等)が加わり、ゲームやコミックなどとのコラボレーションが図られました。
「機動戦士ガンダム」シリーズは熱烈なファンがいる一方、ニューエントリーが取りきれていないという悩みがあったようで、そのあたりの層でヒット作を出しているレベルファイブと取り組むこととしたのでしょう。
そのためか本作のキャラクター設定(絵柄)は、レベルファイブの他の作品と同様のテイストで、初見の時はあまりに「ガンダム」の雰囲気に合わないのではないかと危惧をしました。
子供っぽいわけですね。
初期はかなり「ガンダム」ファンからの批判はあったようです。
本作が意欲的に取り込んだ新しい設定は、1年にも及ぶシリーズであるということで、主人公が3代に渡って変わっていくということです。
フリット・アスノに始まり、その子アセム・アスノ、そしてまたその子キオ・アスノと3代に渡る物語が描かれます(フリット編、アセム編、キオ編がそれぞれ1クール、そして3世代が同時に描かれる3世代編が1クール)。
またタイトルにあるAGEの名をとったAGEシステムなるものがあり、これはガンダムの戦闘データを元にさらに強くなる武器やウェア(ガンダムのパーツ)を作り、ガンダム自体を進化させます。
これは最近の「仮面ライダー」にみられる「フォームチェンジ」のような感じで、バンダイ側の色気が感じられますね。
このように意欲的に新しい試みはいくつも盛り込まれていきましたが、最初の1クールめ「フリット編」と観たときはいかがなものかというのがありました。
新しい試みはしているものの、その基本線はファースト・ガンダムの焼き直しのような感じを受けました。
ファースト・ガンダムのニュータイプとほぼ同様の力として描かれるのが、本作ではXラウンダーというもの。
フリットはこの力を持ち、最初からガンダムを使いこなすことができます。
そしてまたフリットが惹かれる少女フリンもそのXラウンダーなのですが、その能力ゆえ、フリットの敵であるヴェイガン(このときはまだ正体不明)に利用され、命を散らします。
このあたりはアムロとララァを想起させるエピソードであります。
このフリット編は全体的にストーリー展開が早く、ややもすると御都合主義感がかなりあって、観ていても何か子供向けであるという感じがしました。
この作品がファースト・ガンダムを意識しているというのは他のいくつかのところからもうかがわれます。
2クールめの「アセム編」で登場する主人公のライバルとなるゼハートは、やはりシャアばりの仮面を身につけ戦闘をしますし。
そもそもガンダムのフォルムについては、「フリット編」のAGE-1は非常にシンプルでファースト・ガンダムを意識、「アセム編」のAGE-2はストライダー形態への変形などからZガンダムを感じさせます。
「キオ編」のAGE-3の全体的なごついフォルムはZZガンダムを髣髴とさせますし、最後のAGE-FXがファンネルの使いこなす様はνガンダムを思い浮かべさせますね。
このようにファースト・ガンダムにはじまる「宇宙世紀」シリーズを翻案しているようなところもあり、当初は少々オリジナル感を感じないというのが、本作でした。
ただ2クール目の「アセム編」から少々方向性が変化していきます。
アセムは、Xラウンダーであるフリットの子でありながら、その能力を持ち合わせていません。
偉大なパイロットである父親、そしてまた友人でもあるゼハートに対し、嫉妬・コンプレックスを持つアセムの姿はいままでとは違う新しさを感じました。
そして彼は生まれ持った能力ではなく、自分の努力によりそのスキルを増し、Xラウンダーとも戦える「スーパーパイロット」となるのです。
この立ち位置はその後の4クール目の「3世代編」にも生きてきます。
3クール目は「キオ編」でアセムの息子であるキオが主人公となります。
彼は祖父と同じくXラウンダーであり、中でもその力が強い少年です。
そして誰よりも心が優しい少年です。
彼は戦いの中、人が次々に倒れていく様を見、苦しみます。
「3世代編」ではフリット、アセム、キオの3人の考え方の違いが出て、話にドライブがかかります。
この「3世代編」はかなりおもしろかった。
大切な人(母やフリン)を失った悲しみを背景に、ヴェイガンへの復讐、その殲滅にとらわれたフリット、Xラウンダーではないということからか状況を俯瞰してみることができ地球とヴェイガンの戦力の均衡による平和を目指すアセム、敵であるヴェイガンへ人間としての共感を感じ戦わないようにするために戦うキオ。
それぞれの意志が物語の中で交錯します。
この「3世代編」の展開は当初より想定されたものかどうかはわかりませんが、結果的には「機動戦士ガンダムAGE」は3世代にも渡る戦いを大きな物語のうねりを持って描いたと思います。
当初の沈滞した感じから、うまく復活できたのではないでしょうか。
世間的に評判が芳しくないのはやはり1クール目の「フリット編」でかなりの脱落者が出たからだと思います。
ここでファンを引きつけられなかったのはやはりよろしくなかった。
しかしその後はうまく軌道修正をしてきたのではないかと個人的には思います。
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コメント
メビウスさん、こんばんは!
世代で受け継いでいくという設定は興味深かったですね。
本作1年という長丁場だったので、最初の頃にユニークさが出し切れなかったのが、厳しいところでしたかね。
僕は3クールめに入ってようやく、意外と面白いかもと思うようになりましたから・・・。
「フリット編」はファーストガンダムのエピソードを組み替えて焼き直している感じがしてしまったのが良くなかったかなと。
もう少し最初からオリジナルっぽさが出たほうが良かったかなと思いました。
投稿: はらやん | 2012年11月 3日 (土) 00時14分
更にこちらにもお邪魔します・・^^;
AGEが放映されていたと同時期に、別な方面ではガンダムUCも賑わいを見せていたので、これが比較にもなって『AGEは子供向け』なんていう認識をされていたのかもしれませんね?
・・でも自分もAGEはそれほどマイナスなイメージは持ってなくて結構興味深く見てましたし、世代を超えて何かを受け継いでいくという展開も個人的に凄く好きなんですよねぇ(ここら辺は漫画のジョジョが影響)。
そういった1年を通して3世代を描く事や子供に親しみやすいようなガンダムにした試みは、近年の仮面ライダーに見られる挑戦意欲も滲み出てるようでもあったので自分は好印象。それにGガンダムやターンエーガンダムに比べたらAGEはむしろマシな方だったのでは?とも思っちゃうこの頃です^^;
投稿: メビウス | 2012年11月 1日 (木) 22時24分