「アイアン・スカイ」 B級テイストの裏に、現代世界への皮肉あり
ナチが月から攻めてくる!
って内容を聞いただけで、B級の香り、トンデモ系のにおいがプンプン。
でも嫌いじゃないです、そういう香り(笑)。
B級であろうということで気軽に肩の力を抜いて観に行きましたが、意外や意外、気合い入った映像作りになっていましたね。
作品自体は狙ってB級にしている内容ではありましたが、映像はスチームパンク的な感じでけっこう凝っていましたね。
地球に攻めていくときに使用した宇宙船は、ヒンデンブルグ号のような飛行船型。
これは葉巻型にも見えなくもないわけで、地球上で目撃されたUFOはナチの宇宙船だったのか!的なトンデモ要素もあり。
そういえばナチの小型の宇宙船はアダムスキー型だったね。
あとB級SFと言ったら、金髪美女が定番ですが(言い切る)、本作もそれはしっかりと踏襲。
主人公とも言えるナチの美女レナーテ・リヒターを演じるのはユリア・ディーツェという女優さんですが、これがかなりきれいな方。
ナチの制服に金髪美女、萌える方も多いのではないでしょうか(ちょっと萌えた)。
眼福ですね。
ストーリーとは関係なく制服が脱げたり、胸の開いたコスプレチックな制服着たりと、サービスショット満載。
このあたりもB級ノリですね。
じゃ、ただのB級SF映画かというと、これまた意外に風刺的であったり、現代を皮肉っているようなところもあるインディペンデントな香りもある作品でもありました。
レテーナは生まれたときからの生粋のナチですが、彼女は素直な心の持ち主でそのプロパガンダを文字通り信じています。
どんな悪い政府でもプロパガンダで言っていることというのは、けっこう理想的なことを言っていたりするわけですね(この十数年の日本政府が言っていることを額面通り受け取ればかなり素晴らしい状態になっているわけで)。
なかなかな皮肉が効いているなと思ったのは、レテーナが心から信じてナチのプロパガンダを読み上げるのですが、その言葉をそのままアメリカの大統領が選挙戦で口にするわけです。
それなのにアメリカ国民はその言葉に感動し、大統領支持をするという。
ナチは全体主義国家で帝国主義でしたが、今のアメリカもそうではないかという痛烈な皮肉ですよね。
本作のアメリカ大統領はあからさまにサラ・ペイリンをモデルにしてますよね。
サラ・ペイリンと言ったら2008年大統領選の共和党の副大統領候補で、保守派で超タカ派と言われた人物。
今度の選挙で共和党が勝てばかなり保守的な感じになると思われ、本作で描かれているような「アメリカ is No1」的な政権になる可能性もあるわけです。
自分たちの国、第一で、他の国の人々はおかまいなしな態度は、ナチにも通じるところもあるわけで、ナチをダシにアメリカを皮肉っているわけですね。
この映画の制作国は、フィンランド、ドイツ、オーストラリアなので、アメリカへの皮肉は容赦なしです。
しかしドイツという国はナチをネタにこういう映画を作っちゃうところは凄いですね。
日本じゃ考えられないでしょう。
どうもこういう過去の話に誰も触れようとしないところが日本の良くないところかもしれない。
また世界の危機に主要国が集まって会議をするわけですが、それぞれが表面的には約束をしているけれど、裏では破っているようなところがあり、現在の国際政治を皮肉っていますよね。
北の某国も笑い者になっていましたし(ヨーロッパの人からは遠い国の話なのによく観察してますね)。
本作、表面的なB級テイストを味わうのもよし、その裏にある現代の世界への痛烈な皮肉にニヤリと笑うもよしの作品になっています。
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