本 「トッカン -特別国税徴収官-」
現在、日本テレビ系列でドラマ化されているようですが、例によって未見だったりします。
井上真央さんが主演ということですが、原作を読んでみると、けっこうキャスティング的には合っているのではないかなと思います。
タイトルにある「トッカン」とは特別国税徴収官を略した呼び方だそうです。
徴収官とは、税務署に所属し、税金を収めていない個人や事業者を周り、税金を支払うよう指導したり、差し押さえをしたりするという仕事だそうです。
映画「マルサの女」で有名になったマルサは(東京)国税局の査察部のことでより大規模な案件を扱いますが、各エリアの税務署はその地域の個人・事業者が対象。
「踊る大捜査線」での「本店(警視庁)」と「支店(所轄)」の関係に近いのかな。
本作は入局して間もない新米徴収官ぐー子(言いこめられるとぐっと言葉がつまることからきたあだ名)こと鈴宮深樹が、徴収官の仕事を通じて成長していくという、いわゆる「お仕事系」小説ですね。
このところずっと続く就職難で、今の若い人はどちらかというと大企業とか公務員とか安定的な仕事を希望する方が多いとのこと。
これはわかるんですよね。
せっかく苦労して就職しても、そこがつぶれたりしたら、また辛い就職活動をやり直し。
それは避けたいという気持ちはわかります。
そういう視点でみると公務員というのは、とても魅力的なわけですよね。
なにせつぶれない。
とりあえず就職できれば、その後は安泰というわけです。
けれども、昨今、公務員に対しての視線が冷たいというのも事実。
なんどとなく聞いてきた公務員の不祥事・・・、冷たくなるのも必然です。
かくいう僕は民間に勤めていますが、それこそ民間は売上を上げ、利益をあげるため、必死です。
コストダウンやらなにやら、絞ったぞうきんをさらに絞るということもするわけです。
そういう民間からみると、公務員のやり方はやはりヌルい。
また民間はお金をお支払いいただくお客様がいて、その存在が大きいわけですが、公務員はサービスを提供する相手より上の立場にいると思っている方が多いようにもみえるわけです。
そういうことから、公務員への視線はとても厳しい。
それでも多くの公務員の方は真面目に職務を行っていただいていると思いますが、視線が厳しいのは事実です。
ですので安定ということだけで公務員という職を選ぶと、その後に世間の風当たりの強さに悩んじゃったりする人も多いのではないでしょうか。
風当たりの強い公務員の中でも特に忌み嫌われるのは、税務署の、それも徴収官という仕事。
まさにお金をとっていく人たちなので、罵詈雑言を浴びせられるのも当たり前なわけです。
徴収官に税金を取られる人たちは脱税をしているわけなので、とられて当たり前なわけですが、それでもやはりとっていく人というのはイメージが悪くはなりますよね。
そういう嫌われる職業を選んでしまったぐー子が、その仕事の意義を感じ、やりがいを得ていく様子を描くのが本作です。
仕事というのは、安定とか高給とかいうことももちろん大事ですが、続けていくためにはその仕事にやりがいを自分が感じられるかどうかだと思います。
たいてい学生の頃は実際の業務などというものは想像以上のものではないわけで、職についてから実際の仕事を詳しく知るわけです。
「えー、想像していたのと全然違うー」という人は多いとは思いますが、違って当たり前。
僕なんかも今やっている仕事の内容は、就職したときは想像もつかなかったわけです。
けれどそういう実務を行っていく中で、自分なりにやりがいを見いだして、もっとこうしたほうがいいのではないかという自分の道みたいなものを見つけていくところに仕事の醍醐味があるわけです。
お給料がいい、安定しているっていうだけでは感じられない醍醐味ですね。
本著はお仕事エンタメ小説ですが、ぐー子が日々悩みよろめきながらも進んでいく様は、他の職に就いた若い人も通るであろう道と同じです。
よろめき進む中でぐー子がつかんでいったものというのは若い人は共感できるのではないでしょうか。
ドラマもDVDがでたら観てみようかな。
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