本 「さよならドビュッシー」
先日読んだ中山七里さんの「連続殺人鬼カエル男」があまりにおもしろかったので、同じ作者の「さよならドビュッシー」を読んでみました。
「さよならドビュッシー」と「連続殺人鬼カエル男(応募時は別のタイトル)」は同じ時期に「このミス」大賞に応募して、最終選考までこの2作品が残っていたということなのですね。
同じ賞で、同一作者の作品が2つ選考まで残るのは極めて珍しいとのことです。
一読した感じではこの2作品の作風はけっこう違います。
両作品ともにミステリーですが、本作は青春ものの要素を持っていて、「カエル男」の方はどちらかと言えばもっとダークで陰惨な要素を持っています。
一般的にどなたでも読みやすいのは本作のほうかもしれないですね。
一読しただけではけっこう違う作品ではありますが、同一作者ならではの共通点もあります。
まずはわかりやすいところで言えば、ラストのどんでん返しがものすごいこと。
それもどんでん返しが1回だけでなくて、2回と続く。
このどんでん返しの具合がキレ味が素晴らしい。
まるで柔道で一本が入ったかのようなキレ味です。
このあたりのどんでん返しのキレ味鋭さが共通しているところだと思います。
本作は1回目の「○○○○○(ある作品の名前、これを言ったらネタバレになるので伏せ字)」みたいだなーと思いましたが、さらにどんでん返しが続くので、驚くばかりでした。
あと共通している点をもう一つ。
それは世間についての考え方ですね。
本作では主人公は重度のやけどを負ってしまった女子高校生です。
彼女は全身を包帯でグルグル巻きにされ、世間一般的に見れば障碍者です。
彼女は、世間というのは自分と違うもの、理解できないものに対して、無視するか、攻撃するかという反応をとるということを知ります。
この世間の異質な者への攻撃性といったものは「連続殺人鬼カエル男」でも端々に見えることでした。
「さよならドビュッシー」と「連続殺人鬼カエル男」は作風は違いますが、そういった作者の共通性が感じられました。
処女作というのものには作者のその後のスタイルの基盤となるものがあるとよく言われます。
今後も中山七里さんの作品を読んで、そういったスタイルがあるのか見ていきたいと思います。
「さよならドビュッシー」中山七里著 宝島社 文庫 ISBN978-4-7966-7992-3
| 固定リンク
コメント
樹衣子さん、こんばんは!
ご丁寧にありがとうございます。
本作は音楽好きでミステリー好きな方は堪能できるかと思います。
中山さんは同じときに「このミス」に別の作品でも応募していて、本作といっちょに2作とも最終予選まで残ったという実力の持ち主です。
もう一作の「殺人鬼カエル男」も読み応えありますよ。
投稿: はらやん | 2012年8月16日 (木) 22時10分
音楽好きの私としては、「さよならドヴュッシー」というタイトルはとても気になるところです。
次々と多くの作家が登場する時代で、最近は作家の名前を覚えられない状態ですが、
「このミステリー大賞」を受賞されているとは。
かなり期待できそうな1冊のようですね。
ところで、昨日、弊ブログにコメントをいただきありがとうございました。
返信をしようとしたところ、何故か(泣き)表示ができません・・・とメッセージがでて見ることができません!!
編集には入れるのですが、原因が不明のため、こちらにコメントの返信を残しました。
嗚呼、確かに観たい映画(&本)がたくさんありすぎますね。。。
投稿: 樹衣子 | 2012年8月15日 (水) 21時54分