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2012年8月15日 (水)

「新参者」 すべてを見通す目

今年の1月に劇場で観た「麒麟の翼」に泣かされてしまい、元々のテレビドラマの方も気になってようやく観終えました。
「麒麟の翼」はミステリーものであるので、確かに誰が犯人かという謎解きの部分はもちろん重要なのですが、それよりも事件に関わった人々それぞれの心の奥底にある気持ちを解き明かしていくというところに見応えを感じました。
登場人物がそれぞれに誰かを思っていながらも、それをうまく相手に伝えられないもどかしさを持っています。
事件の謎が解き明かされていく過程で、人々の思いも解き明かされていきます。
主人公の加賀は事件だけでなく、その人々の思いを解くということが彼の信条なのですね。
テレビシリーズ「新参者」も同じように一つの事件が起こり、その謎を解き明かしていく中で、毎回登場する人々の思いが解き明かされていきます。

人は嘘をつく。
罪から逃れるため、懸命に生きるため。
嘘は真実の影。

これはドラマの冒頭で黒木メイサさんが読むナレーションです。
登場人物たちは誰かのことを思うがため、語らなかったり、嘘をついたりします。
その一つ一つを加賀は丁寧に解きほぐしていきます。
そして登場人物の伝えられない思いを明らかにし、その相手にその思いが伝わるようにします。
事件そのものは最終回の10話まで解決しないのですが、事件の謎を解き明かす過程の中で、加賀は人々の思いを解きほぐしていくのです。
オンエア時にも「泣けるミステリー」と言われていたようですが、確かに泣けます。
誰でも伝えられずに心の奥にしまっている思いがあるかと思います。
伝えられないからこそ、語らない、嘘をつく。
その思いに蓋をするために。
自分では開けられないその蓋を加賀はそっと開けてくれるのですね。
加賀を演じる阿部寛さんはまさに適役。
テレビシリーズを観てしまうと、加賀は阿部さんしかありえないと思います。
加賀は何も見逃さない。
ドラマの中でも、加賀がじっと見つめ続けるというシーンがいくつもあります。
加賀の目は、すべてを見通す目。
事件の証拠ではなく、加賀が観ているのは人々が隠したはずの思い。
その思いを加賀は見つめます。
加賀に見つめられると、おそらく人は「何もかもお見通しなのではないか」と思うのかもしれません。
その目は初めは不躾なものと感じられるかもしれません。
けれど、この人にならば秘密を明らかにしてもいいのではないかとも思えるのかもしれません。
この人の前だったらば、重い荷を下ろしてもいいのではないかと。
加賀はそういう気持ちにさせることができる不思議な男なのですよね。
魅力的なキャラクターだと思いました。
今度は「新参者」に続いて作られたスペシャルドラマの「赤い指」を観てみたいと思います。
また映画も「麒麟の翼」に続いて作ってくれないですかね。

「麒麟の翼~劇場版・新参者~」の記事はこちら→

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