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2012年7月 7日 (土)

本 「特高警察」

特高警察、これは正式には特別高等警察で、戦前から戦後間もなくGHQの人権宣言により廃止されるまで、存続していた警察の組織です。
この組織は「悪名高き」と言われるように、(これも悪法と言われる)治安維持法を運用し、スパイ活動や検閲、拷問等により、政府に反対する活動を封じ込めを行ってきました。
そもそもこの組織は「国体護持」のため、政府に対して反対意見をもつ組織や個人を取り締まるために作られました。
作られたのは明治後半ですが、まだまだ国家として不安定さがある明治政府が国の治安を安定化させるために必要としていたのはわからなくもありません(人権を無視するような行動は別ですが)。
元々は民主化運動に対して、その後共産主義などの左系、また国家主義者などの右系、さらには外国人(中国人、朝鮮人、ロシア人等)といったところまで取り締まりの範囲を広げていきます。
その後、治安維持法等が導入され、ある種の制限がなくなったことにより人権を迫害するような取り締まりを行うようになっていったのです。
そこの方便として、国体維持という考えがあり、このためには何事も許されるといった心理が特高警察にはあったようです。
戦後、GHQにより特高警察は解散させられますが、その後、朝鮮戦争勃発など世界的に東西対決が鮮明になるなか、アメリカの意向もあり、警察組織の中に公安部門が作られます。
この組織には、戦前の特高警察の人間も多く復帰しており、実際は脈々と特高警察的な思想(人権侵害的なものはないにしても)は受けつがれていると著者は書きます。

こういう公安組織というものは、ドラマや映画などでは謎の組織、得体の知れない組織として描かれることがありますよね。
実際に今でも公安組織はスパイの運営等はしています。
これは現在公開されている映画「外事警察」(外事課は公安警察の一部門)でも描かれている通りです。
あの映画の中でも住本は「国益」のためにと何度か言いますが、これは戦前の特高警察から続く思想そのものだと思います。
またこちらも現在公開されている「図書館戦争 革命のつばさ」で登場する良化隊という組織は「検閲」に特化していますが、国の考えと反する著作物を取り締まろうとする点でおいては、物語的には「悪役」として描かれます。
国や国民の生活をひっくり返すようなテロや戦争などは未然に防がなければなりません。
そういう意味で「外事警察」で描かれるように、こういった公安組織といったものは必要であるのでしょう。
外国や、対テロ組織に対しては、いわゆる「きれいごと」だけではすまない事象というのは数多くあると思われるからです。
ただだからといってそこに無制限に法律ギリギリ、時には超法規的な活動を認めるわけにはいかないと思います。
戦前の特高警察、または「図書館戦争」の良化隊のような方向に、力と思想をもった組織は振れていく危険性を孕んでいるからです。
組織の性質上、その活動を一般国民までオープンにすることもできないでしょう。
そうなるとその組織を運用する官僚、そして政治家には、「良識」といったものが求められるわけです。
こういった組織を直接監視することはできないにしても、官僚や政治家にはしっかりと国民が目を配っていかなければいけないのかもしれません。

「特高警察」萩野富士夫著 岩波書店 新書 ISBN978-4-00-431368-7

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