「外事警察 その男に騙されるな」 公安の魔物
NHKのドラマ「外事警察」の劇場版です。
例によってドラマは未見、原作小説も未読です。
原作は未読ですが、麻生幾さんの小説は今までも何冊(「宣戦布告」「ZERO」「ケース・オフィサー」「瀕死のライオン」等)か読んでいます。
麻生さんは本名などが公表されていないいわゆる覆面作家なのですが、今まで発表してきた作品は諜報活動、いわゆるスパイ活動などを扱ったものが多いですよね。
彼の作品の中で描かれるスパイ活動は、いわゆるハリウッド映画のような派手なスパイ合戦のようなものではなく、本作のように協力者の獲得、育成、運営といったような活動が描かれることが多いですね。
そこにはハリウッド映画のような爽快さといったものはあまりなく、どちらかといえば陰々としていたり、不条理な世界が描かれています。
麻生さんの小説としてのデビュー作である「宣戦布告」は、北朝鮮が北陸の原子力施設を襲撃するという事件を扱っています(今考えるとあながち荒唐無稽ではなかったりします)が、そこで描かれるのはけっこう救いのない出来事だったりするのですね。
ハリウッド映画だったら絶対死なないような人が、不条理にも殺されたりしてしまう。
その不条理さみたいなものが、かえって現実感を与え、そして国と国との間で繰り広げられる攻防といったものがいかに熾烈を極めるものであるかというのが伝わってきます。
本作の主人公である住本は「公安の魔物」と呼ばれる男です。
国益のためであるならば、人の感情や生命をも犠牲にすることを厭わない男。
彼の部下であり、何度も対立することになる松沢は、どちらかと言えば観客の目線にたったキャラクターであるかと思います。
彼女が住本に食って掛かる場面というのは、おそらく同じように観客が「そこまでするのか、しなくてはいけないのか」と思うシーンでしょう。
しかしおそらくそのような問いに住本は「何をきれいごとを言っているんだ」という顔をするだけではないでしょうか。
個人的な感情といったようなものを表していたのでは扱え切れないほど、そしてきれいごとだけでは住まされないほどに国家間の暗闘というものはシビアであり熾烈なものであるのでしょう。
「公安の魔物」と言われる住本というキャラクターはそういった熾烈さを象徴しているキャラクターなのですよね。
ドラマを観ていないので何ともいえないのですが、本作においては、住本という人物の描写には彼の感情やその背景といったものはほとんどなされていません。
国家間の影の戦いには個人の感情が入り込むすき間というものはないのかもしれません。
「国益とは何なのか?」と住本が問われる場面がありますが、彼はそれに明確に答えていません。
彼は守るべきものをどのように思っているのか、知ってみたい気がします。
しかし、どうも思っていないかもしれません。
<最後にちょいネタバレ>
拉致された香織の娘が、日本で発見されたシーンがありました。
なんで日本で、それも拉致した側が周りに誰もいないのは何故?と思ったのですが、それは最後に明かされました。
人の感情(特に怒り)を操ることにより、人を思う通りに動かす、これこそが「公安の魔物」と言われる所以かもしれません。
彼が個人的な感情を一切出さずに任務に向かうというのは、かえって良いのかもしれません。
彼が自分のために、その力を使ったら、とてもおそろしいことになるかもしれないとも思うのです。
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最近はNHKもドラマで人気が
出ると、映画化するパターンに
なったんですね〜。
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ドラマは結構面白かったので
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途中、ちょっと中だるみを感じましたが
なかなか骨太な作品に仕上がっていました。
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受信: 2012年7月 8日 (日) 00時23分
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受信: 2012年7月 8日 (日) 09時29分
» 外事警察 その男に騙されるな [象のロケット]
北朝鮮で濃縮ウランが、日本では核研究の機密ファイルが盗まれ、日本での核テロが予想された。 外事第四課に復帰した住本は、在日二世の原子力科学者・徐昌義を韓国ソウルで保護し日本へ連れ帰る。 徐は26年前に日本から北朝鮮へ渡ったものの、最近行方不明となっていたのだ。 一方、再び住本の部下となった松沢は、東京の貿易会社社長・金正秀の日本人妻・果織を捜査協力者にしようと接触するが…。 人気TVドラマ劇場版。... [続きを読む]
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» 映画『外事警察 その男に騙されるな』★ “食えない男=住本”を印象付けたラストシーン [**☆(yutake☆イヴのモノローグ)☆**]
作品について http://cinema.pia.co.jp/title/158381/
↑ あらすじ・クレジットはこちらを参照ください。
警視庁公安部外事課は、国際テロに立ち向かうための組織 なの だそう です 。
特徴と言うか、見どころだと思うのは
彼らは、プロに潜入させないで、標的に近..... [続きを読む]
受信: 2012年12月12日 (水) 22時40分
» 12-393「外事警察 その男に騙されるな」(日本) [CINECHANが観た映画について]
分かり合えると信じる、それが俺たちだ
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一方、朝鮮半島からは濃縮ウランが流出したとの情報がもたらされ、核テロの脅威が現実味を帯びる。
住本健司たち外事四課では、5年前に韓国から来日し、日本人女性と結婚して日本国籍を取得した奥田交易社長・奥田正秀に疑いの目を向ける。
そこで住本は奥田の妻・果織に近づき、協力者(=スパイ)として取り込むべく、彼女の弱みを徹底的に洗い出し、彼女が落ちるまで容赦なく追い...... [続きを読む]
受信: 2013年3月 9日 (土) 14時04分
» 「外事警察 その男に騙されるな」(2012・日) [ほぼ映画感想、ときどき舞台レビュー]
渡部篤郎主演映画「外事警察 その男に騙されるな」を観てきました。
元はNHKの土曜ドラマでやっていたらしいのですが
そちらは未見。
公開直前まで全く興味も持たず過ごしてきたのですが、
脚本が古沢良太と聞いて観る気になりました。
「相棒」「リーガル・ハイ」「探偵はBARにいる」など
書いてる人ですしね。
ストーリーはドラマを観てなくても
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邦画にありがちな浪花節とかお涙頂戴とか
甘ったるさがない渋い映画ですが、
私はこういう路線のが好き。
ちなみにギャグは一... [続きを読む]
受信: 2013年4月28日 (日) 09時03分
» 外事警察 [おべんとログ]
NHKドラマで好評であった、外事警察が映画化! http://gaiji-movie.jp/ スパイものが大好きな私としては、当然このドラマのトリコに なっていたわけですが、映画化すると何かが違ったりして、 ガッカリするのが怖いなぁ...と思っていたのですが、 やっぱり観ちゃいま…... [続きを読む]
受信: 2013年5月26日 (日) 23時12分
コメント
sakuraiさん、こんばんは!
再放送やっていたんですかー、観ればよかった・・・。
渡部さん、ずっと眉間にしわ寄っていましたよね。
住本自身の心の中が見えないところっていうのが、それが国家間の諜報活動の闇そのものみたいな感じがありますね。
それはずっと正体不明のものなのかもしれません。
「宣戦布告」が書かれた頃は、北朝鮮の核開発問題もおおっぴらではなかったですし、原発の問題も顕在化してませんでしたし、まだフィクションというところがあったのかもしれないですね。
しかし現実のほうがフィクションを越えてきてたりしていて、ちょっとうそ寒い感じもします。
投稿: はらやん | 2012年6月24日 (日) 08時51分
今週、ドラマの再放送、見終わりました。
ドラマでも、なんで住本がそうなったのか・・というのはなかったです。
生活を共にしている家族にも自分の本当の姿は言えない苦悩・・みたいなもんはありましたが、何かのためには、なでも切り捨てる、利用する、突き進む・・・という姿が表されてましたが、無感情でやっているのではない。
重いものを背負う覚悟でやってる!というのが渡部さんの眉間のしわから、感じとれたような気がしました。
「宣戦布告」!あれですね。
もろに何処の国かはわかるけど、あえて「あの国」と表現してたあれですね。それは今回も同じみたいですね。
別に言ってもいいような気がしますが、ヤバいのかなあ。
投稿: sakurai | 2012年6月23日 (土) 17時48分