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2012年6月28日 (木)

「図書館戦争 革命のつばさ」 一番の敵は無関心

有川浩さん原作の「図書館戦争」シリーズの映画化作品になります。
2008年にテレビアニメ化もされていまして、本作はその続きになります。
テレビアニメでは原作の「図書館戦争」「図書館内乱」「図書館危機」をベースに描かれ、今回の映画は原作シリーズの最終巻である「図書館革命」をベースにしています。
そういう意味でアニメシリーズの集大成と言えるでしょう。
制作会社は高い品質が評価されるプロダクションI.G.で、スタッフも声優もテレビアニメと同じなので心配はありませんでした。
「図書館戦争」シリーズの設定の中で最も重要なものが「メディア良化法」という法律です。
もちろんこの法律はフィクションですが、その内容は公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を取り締まるというものです。
これは事実上の検閲に等しい内容になっており、憲法に定められている「表現の自由」に抵触すると思われる法律です。
この法律により、出版物などを検閲する組織メディア良化隊が生まれ、それが武装化したために、収蔵する図書を守るために図書館側で作られた武装組織が図書隊と言われるものです。
主人公、笠原郁は図書隊タスクフォース(特殊部隊)の初の女性隊員であり、そしてその指導教官である堂上篤との、「ベタ甘」の恋愛模様というのもこのシリーズが人気がある理由のひとつでしょう。
しかし原作の「図書館革命」もそうでしたが、本作「革命のつばさ」もベタ甘恋愛よりも、その設定の根底にある「メディア良化法」にまつわるテーマをしっかりと描いています。
上に書いたように「メディア良化法」という法律は「表現の自由」に抵触すると思われる悪法であると言っていいと思います。
けれども、なぜそのような法律が施行されてしまったのか。
だれもその内容がおかしいと言わなかったのか、という疑問が起こるのは当然だと思います。
それについて本作では、さりげなく、しかし問題意識を持って提示していると思いました。
本作は、テロ事件が起こり、その事件が小説家当麻が書いたエンターテイメント小説に似ているという指摘が起こり、良化隊により当麻が執筆権を奪われそうになるというところから始まります。
これと似たようなことは、現実の世の中でも実際にあることです。
何か重大事件が起こったとき、それはマンガだったりアニメだったりの悪影響ではないかといい、それを規制するべきだと言う人々がいます。
実際、東京都においては都条例(東京都青少年の健全な育成に関する条例)で不健全図書の積極的規制を行っています。
ここで個人的な見解を書かせてもらうと、この都条例は非常に危険性の高いものであると思います。
それは「不健全図書」というものの定義が曖昧で、その時々の施政者によりどうとでも解釈できると思うからです。
「著しく性的感情を刺激するもの」とあり、これはポルノマンガ・アニメなどをターゲットとしていると思います。
これらについては規制されても仕方がないような内容のものを見かけますが、しかしこの「著しく」といった表現が曖昧さを持っています。
例えば渡辺淳一さんの作品は、谷崎潤一郎さんの作品は、違うのかと。
こういった作品により「著しく性的感情を刺激」されたりしちゃったりする人もいるのではないかと。
そうしたらそれらも規制されるのか。
こういった主観的な感覚については、基本的に明確な線を引くことはできないわけで、それにより運用次第では、検閲に近いことにもなりかねないと思っています。
本作の設定となっている「メディア良化法」は決してフィクションの世界のものではないのですね。
ちょっと脱線しましたが、このような法律が施行されてしまった背景について話を戻します。
本作でキーマンとなる小説家の当麻のセリフでこうありました。
「検閲をうまくすり抜けて書くのがプロだろうと思ってました」
これは悪法が施行されていることを認識していながらも、それに関わりなく過ごしていれば自分には関係がないであろうというスタンスです。
「守ってもらっていることに気づいていなかった」
これも図書隊という表現の自由を守ろうとする組織によって、人々に自分の本が読んでもらえているということに無頓着であったということですね。
ここに提示された問題があります。
悪法がなぜ施行されてしまったか、それは人々の「無関心」に帰することができると思います。
自分もそうなのですが、政治や行政にはなかなか関心がいきません。
日々、いくつもの法律や条例が作られていますが、その内容に関心を持ってチェックをしている人というのは専門家以外はそう多くはいないでしょう。
けれどやはりそういうわけにはいかないのですよね。
我々が、法律などに関心が向くのは、大きな問題が起こった時です。
例えば福島原発の問題が起こったときに、注目されたのが「電源三法」と呼ばれる法律でした。
改めてこういう法律も見ると「なんじゃこりゃ」と思うような内容があったりするのですが、その法律が通ったときは誰も関心を持っていなかったわけですよね。
もしくはいいところしか見ていなかったか。
問題が起こったときに、「これは悪法だ」と言ったとしても、後の祭りなわけです。
本作で描かれる「メディア良化法」という法律が通ったときも、多くの人は無関心であったのでしょう。
もしくは、良くない内容の本などが規制されるのは良いことだというような感じであったかもしれません。
しかし結果的には、本作で描かれている世界では、検閲といった行為が行われ、それによって表現の自由が規制される社会となってしまったわけです。
紹介した都条例が決まったとき、出版社で作られる団体で抗議があったと思いますが、世間一般の人が抗議をするというようなことはなかったと記憶しています。
こういう無関心が、いつの間にやら社会を悪い方向に持っていってしまう気がしたりします。
昨今の政治、行政の不始末を見ていると、無関心になりたくなる気持ちもわかります。
個人的にも「もういいよ」と言いたくなったりしますが、けれどそれでも関心は持ち続けなくてはいけないのかなと。
無関心でいることが、将来的に自分たちの生活を脅かすことになるかもしれません。
飽きれてしまう気持ちを抑えつつ、それでも政治や行政に関心を持つということが、こういうときこそ大事なのかもしれません。

原作小説「図書館革命」の記事はこちら→
テレビアニメ「図書館戦争」の記事はこちら→

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コメント

sakuraiさん、こんばんは!

僕は有川浩さんの作品はかなり好きで、こちらのブログでも何冊もレビューしてますが、「図書館戦争」は一番最初に読んだ作品なので思い入れがあります。
「図書館戦争」を始め有川さんの作品はベタ甘な恋愛をベースにしていながらも、テーマ性などが入っているスタイルですね。
一番最初にテーマがどーんという感じではないです。
恋愛ものとして楽しみつつ、いつの間にかテーマについても考えるようになるという感じですかねー。

投稿: はらやん | 2012年9月 7日 (金) 23時02分

原作もアニメもなーーんにも知らずに、無謀にも挑戦しました。
題名に惹かれたかな。
現実にあったら単純に怖いなあ~というような軽い仕上がりになってしまったのが、残念な気がしました。
どういう年代の人が見るのか、わかりにくいのですが、ものすごい大事なことが、遠回しすぎて、あるいは恋もの狩りのテーマに隠されて、二の次になってる感じがしました。
見るほうのスタンスでしょうが、ちょっと勿体ないような。
アニメとかをずっと見てると、また違った感慨なんでしょうかね。

投稿: sakurai | 2012年9月 6日 (木) 12時28分

たいむさん、こんにちは!

うん、自分に直接関係ないと思ってしまうんですよね。
でも実際は関係あったりするのに。
報道で伝えられているのも、一つの側面の見方だったりするから、それだけで判断するのも心もとない。
考えるクセのようなものを一般市民も持たなければいけないですよね。

投稿: はらやん | 2012年7月 7日 (土) 06時59分

何と言いましょうか、無関心以前に無知なんですよね、きっと。
興味あることしか興味がない世の中で、まずいことに困らないから、関心を持つ以前になんのことだかわからない。

個々がいろんなことに気付かなくちゃならないのだけど、確信的なミスリードだったり、嘘も誠も直ぐに伝播してしまう世の中なので、なにが正しいのかすらわからない。

困ったものです。

投稿: たいむ | 2012年7月 3日 (火) 18時00分

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