「ガール」 人生の半分はブルー、もう半分は・・・
テーマから予想されたことですが、やはり観賞客の女子率高し。
金曜日の晩ということもあり、同世代のお友達で劇場を訪れた感じの方が多かったですね(金曜日の晩なのに男一人でこれを観に行くお前はなんなんだということはさておき)。
本作で中心となる登場人物は4人の女性です。
由紀子は広告代理店勤務の29歳の独身女性。
30代突入を目前としながらも、カワイイもの、キラキラしたオシャレなものが大好きな夢見がちな女性なのですが、さすがに周囲からは「イタイ」と言われてくるのを気にし始め、また仕事でも挫折をして大人になりきれぬ自分に悩み始めています。
由紀子の先輩である聖子は、大手建築会社に勤めるバリバリのキャリアウーマンで、結婚はしていますが、子供はなし。
昇格して管理職になったものの、部下に年上の男性を持ちますが、彼が男性至上主義タイプで扱いに困っています。
また旦那さんよりも給料が高いこと、子供を作ろうとしないことについて、旦那さんが不満を持っているのではないかという心配を抱えています。
容子は聖子と同世代の女性で、独身。
バリバリのキャリアというわけではありませんが、仕事はそつなくこなし、社内でも認められている様子。
でもいつもの間にやら30代に突入し、恋やら結婚ということへのエネルギーが枯れてしまっている自覚があったりもします。
そして孝子は他の3人よりもちょっと年上のシングルマザー。
一人息子を愛してますが、母であり、また父親代わりにもなろうと一生懸命。
その一生懸命さが、周囲の人からすればがんばりすぎに見えることも。
4人それぞれが、それぞれらしい違う生き方をしていますが、またそれぞれに悩みを抱えています。
女、男に限らず、人生というものは一度っきり。
別の人の生き方を見て、こういう生き方もあったかもしれない。
自分の生きてきた道というのは、間違っていたのではないかと思ったりするのは誰しもあるんではないでしょうか。
でも、もう一度、人生をやり直すわけにはいけません。
後悔やら、諦めといったものを感じることもありますよね。
「みんな人生の半分はブルーだよ」というセリフがありました。
確かにそうかもしれません。
自分の人生がベストであるなんて思える人なんてそうそういないのではないでしょうか。
「人生の選択肢が増えて、不自由になった」というセリフもありました。
何十年も前は女性の生き方にそれほど選択肢はありませんでした。
結婚して、子供を産んで育てる、それがどの女性も歩む道のような感じで。
けれどその後、フェミニズムやらウーマンリブやらの考えが広がり、女性の社会進出も増えました。
僕が社会人になったころは、男女雇用機会均等法が施行された頃で、女性一般職が増えた時代でした。
女性管理職も増えた時期ですが、その頃の女性は、男性に負けないようにというような気負いのようなものがあったような気がします。
けれど法律とは別に、やはり会社では本作での聖子のようにがんばってもなかなか女性が働きにくいのも確かでした。
その後、結婚もせず会社でバリバリ働く女性というのが、いつからか「負け組」と言われるようになり、いい旦那を見つけて結婚をして子を産み家庭を築く人が「勝ち組」と言われるようになりました。
正直、女性にとって何が勝ちなのか、負けなのか、わからないのですが、女性たち自身でも自分たちの価値観が激しく変わっているのが現代なのだと思います。
ですので先ほどとりあげた「人生の選択肢が増えて、不自由になった」というセリフは、かなり的を射てる言葉だなと感じました。
価値観が多様化して、どういう生き方が幸せなのかというもののスタンダードがなくなったというのは、女性も男性も変わらないかと思います。
なので、男も女も、半分ブルーな気持ちを持っているのでしょうね。
でも女性のほうがより切迫感があるというのも、本作を観てわかりました。
またセリフの引用なのですが、「男は足し算、女は引き算」というのがありました。
これも人々(男性も女性も)の価値観としてかなり本質をついているように思います。
男は年をとると年輪を刻むじゃないですが、経験を積むことにより人として世間の評価が上がるということはあります。
そして女性の場合は、世間一般としての評価として「若さ」「美しさ」というのが重要なファクターであり、それは年をとることに減っていくということがあります。
これは男性が女性を評価するという面だけでなく、女性が女性を評価するという点でもこのファクターが効いているのです。
だからこそ「勝ち組」「負け組」のような言葉も生まれるわけですね。
じゃ、女性というものはどんどん価値がさがっていくものか、男に比べて女の人生なんて・・・ということになるのかというとそうではないのではということをこの作品は言っているのですよね。
「女の人生の半分はブルー」というセリフを引用しましたが、これは「もう半分はピンク」という言葉に繋がります。
ピンクという色は、キラキラして前向きなイメージがあり、そして女性らしさをもっている色です。
このセリフが言っているのは、現代の社会で女性が生きることはブルーな気持ちになるようなことはたくさんあると言っているわけですが、もう一面では女性であることを前向きに捉えている言葉でもあります。
女性であるからこそ、楽しめること、経験できることがある。
女性であることを前向きにとらえることができれば、人生を謳歌することができると言っているように感じました。
では男性の人生の半分はブルー、もう半分は?と自分に問うてみたところ、まったく色が浮かびませんでした。
それはそれでよろしくないかも・・・。
男性ももっと前向きに人生を捉えられるようにならないといけないですね。
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□作品オフィシャルサイト 「ガール」 □監督 深川栄洋 □脚本 篠崎絵里子□原作 奥田英朗 □キャスト 香里奈、麻生久美子、吉瀬美智子、板谷由夏、上地雄輔、要 潤、林 遣都、 波瑠、加藤ローサ、向井 理、檀 れい■鑑賞日 5月26日(土)■劇場 TOH...... [続きを読む]
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» ガール [ダイターンクラッシュ!!]
2012年6月20日(水) 19:30~ TOHOシネマズ有楽座 料金:1300円(大黒屋で前売りを購入) 『ガール』公式サイト 大コケしたものだと思って、水曜日とは言えガラガラだろうと、高をくくっていたら、女性の複数組みで超満員。 単独の男は、5名に満たないので、結構なプレッシャーの中鑑賞。上映終了後の劇場脱出が一番苦痛だったのだが。 林君が吉瀬さんに惚れられるイケメン若者役だとか、要潤演じる麻生さんの年上の部下が、客の信用も無くすだろうなオペレーションしているとか、想像を絶するほど説得力の... [続きを読む]
受信: 2012年6月26日 (火) 21時40分
» ◇『GIRL ガール』◇ ※ネタバレ有 [〜青いそよ風が吹く街角〜]
2012年:日本映画、深川栄洋監督、篠崎絵里子脚本、奥田英朗原作、香里奈、麻生久美子、 吉瀬美智子、板谷由夏、上地雄輔、要潤、林遣都、波瑠、加藤ローサ、向井理、檀れい出演。 [続きを読む]
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» ガール [C’est joli〜ここちいい毎日を♪〜]
ガール
11:日本
◆監督:深川栄洋「神様のカルテ」「白夜行」
◆出演:香里奈、麻生久美子、吉瀬美智子、板谷由夏、上地雄輔、要潤、林遣都、波瑠、加藤ローサ、向井理、檀れい
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受信: 2012年9月 9日 (日) 22時18分
» 映画『ガール』★ ガールをとっくに過ぎて女地獄に落ちた私も“ガール”と…^^;〜雑感です。 [**☆(yutake☆イヴのモノローグ)☆**]
作品 について http://cinema.pia.co.jp/title/157060/
↑ あらすじ・クレジット はこちらを参照ください。
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大学の先輩・後輩で、30歳前後の4人をメインに
色々な状況の女性たちが、各種、出てくるので..... [続きを読む]
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会社も仕事内容もバラバラな4人は、なぜか気の合う親友同士。
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一方ほかの3人も、...... [続きを読む]
受信: 2013年2月17日 (日) 14時14分
» ガール [のほほん便り]
奥田英朗の同名小説を映画化したラブ・コメディ。
軽いノリで見られたのがヨカッタかな?
香里奈、麻生久美子、吉瀬美智子、板谷由夏… と、今が旬の女優さん達が、それぞれの境遇な女性像を溌溂と演じてるのが目の保養。見ていて楽しかったです。
ハッピー・エンドな余韻の良さもマル
「ロンバケ」の「靴がぶかぶかだよぉ」に通じる要素を感じました。
女性なら、誰の心にもガールがいる… 共感です。
(ストーリー)
由紀子(香里奈)・聖子(麻生久美子)・容子(吉瀬美智子)・孝子(... [続きを読む]
受信: 2013年5月 3日 (金) 14時19分
» ガール [♪HAVE A NICE DAY♪]
ん〜〜これは!
全ての女性が
4人の仕事に恋に子育てに
色々頑張ってる女性に共感できるのでは〜?
面白かった〜
きっと、みんな、みんな、同じような事を
日々思っている事があうと思う
そうそう、そうそう!と
なので、これを観終わった後は、元気になっている!作...... [続きを読む]
受信: 2013年5月26日 (日) 20時26分
» ガール(2011) 124分 [極私的映画論+α]
タイトルがいただけません(笑) [続きを読む]
受信: 2013年6月 4日 (火) 23時00分
» ガール [pure's movie reviewⅣ]
2011年 日本作品 124分 東宝配給
STAFF
監督:深川栄洋
脚本:篠崎絵里子
原作:奥田英朗『ガール』(講談社刊)
CAST
香里奈 麻生久美子 吉瀬美智子 板谷由夏 上地雄輔 要潤 向井理 檀れい 加藤ローサ 段田安則
きっと、あなたがここにいる。
■Story
広告代理店勤務の29歳独身の由紀子、不動産会社勤務の34歳既婚の聖子、老舗文具メーカ...... [続きを読む]
受信: 2014年1月 9日 (木) 20時50分
» 映画 GIRL [こみち]
JUGEMテーマ:邦画
nbsp;
折角、おしゃれしてきたのに食事は
nbsp;
素敵なレストランからは、程遠い食堂。
nbsp;
こんなのがいつもだと、愛想が付きますね。
nbsp;
nbsp;
nbsp;
武田聖子役の麻生久美子が、ちょっと怖かったですね。
nbsp;
ここまで鬼気迫る演技は、天晴れですが
nbsp;
現実では遠慮し... [続きを読む]
受信: 2016年1月 3日 (日) 17時56分
コメント
pureさん、こんにちは!
新しいブログの方、拝見させていただきました。
そちらにTBさせていただきます。
はい、男性ですが「選択肢が増えて不自由になった」というのは男性でも同じなんですよね。
久しぶりに会った人からは、よく結婚しないの?とか言われますし。
仕事が忙しくていつの間にか、っていうのは男性もあるんですよね。
投稿: はらやん | 2014年1月12日 (日) 11時12分
はらやんさん、こんばんは!
たくさんの記事にTBをいただき、ありがとうございました!
実は昨年、ブログを引っ越しまして、新しいブログにこの「ガール」の記事も引越し完了しましたので、新しい方をTBさせていただきました。
「人生の選択肢が増えて、不自由になった」
このセリフは私も一番心に残ったセリフです。
選択肢が多くなったからこその女性の葛藤を的確に描かれた作品だと思います。
はらやんさんは男性ですよね?
男性がこの作品を観て、「現代の女性」について考えていただけるのは、何だか嬉しいなぁと思いました。(*^-^)
投稿: pure | 2014年1月 9日 (木) 21時05分
sakuraiさん、こんにちは!
うん、こちらの作品を観て、女性ならではのけっこうしんどいところが少しわかった気がします。
男性はほっといても年齢を重ねて、評価があがっていく(それに胡座をかいているとんでもない人も多いんで困ったものですが)。
それに対して、女性はやっぱりいろいろ無理をしなくてはいけないのですよね。
でも女性が、女性であることを楽しんでくれるならばいいなと思います。
聖子の旦那さんも言ってましたが、女性の笑顔はやはり何にも変えられない価値があると思うのですよね。
深川監督は、若いのにそつがないという感じがしますね。
テーマを理解し、うまくまとめる力があるという感じでしょうか。
ちょっともの足りない部分もなくはないですけれどね。
投稿: はらやん | 2012年6月24日 (日) 06時49分
何をやっても女性と言うは叩かれるもんで。。。
成功しても、失敗しても物語になる。それは強みでしょうか。
わたしも50になって、いろいろと省みる今日この頃ですが、女性で良かったなあと思います。
痛さも、辛さも、喜びも、悲しみの女性ならでは。
この監督さんの描き方は、そつなく、老練で、手慣れてますね。もっと冒険も欲しいなあと感じるところでした。
投稿: sakurai | 2012年6月23日 (土) 17時37分