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2012年6月17日 (日)

本 「浪費するアメリカ人 -なぜ要らないものまで欲しがるのか-」

2000年に日本で出版された本で、書かれている内容のベースとなるのは90年代の調査だったりするので、そのまんま現代に当てはめられないような気がしますが、けっこう今でもあまり人の消費行動はその頃と変わらなかったりするのだなと再確認しました。
こちらの内容はアメリカ人が自分の収入以上のものを欲しがることにより、自己破産などに陥ることについて、どうしてそうなるのかということについて書いています。
その要因としてあげられているのは、一つはカードです。
ご存知の通り、手持ちの資産以上のものも、カード決済では購入することができてしまいます。
それは結果的には将来への借金になるのですが、とりあえず収入が安定であれば問題ないわけですね。
けれども90年代のアメリカの不景気により、雇用や収入が安定であるとは限らなくなり、自己破産が増えたわけです。
またサブタイトルにもあるように、「要らないものまで欲しがる」という心理の理由を、アメリカ人の中流階層が自分よりもちょっと上の所得層のライフスタイルを、自分のあるべき生活と感じ、自己資金よりも大きな支出をしてしまうということをあげています。
著者によれば、もともとアメリカ人は社会的な各層でそれぞれのライフスタイルがあり、同じ層であれば横並びになりたいという心理があるようです。
隣の家と同じ程度の車、芝生のある家など。
思いのほかアメリカというのは所得による階級があります。
その生活スタイルが収入に見合うものであれば、横並びでも問題ありません。
しかしテレビや映画で描かれる生活というのは中流よりもちょい上、斜め上の生活を描いており、見ている側からするとそれがスタンダードのように思えてしまうようになったと著者は言います。
斜め上の生活を実際やろうとすれば、収入が足りるわけがありません。
それでもカードなどがあれば購入することはできます。
それにより自己破産のリスクが増したり、また支払いのための労働時間の延長などの問題に繋がっていったわけです。
本著ではそういったリスクに対して、「足りる」生活を行おうとするダウンシフターと言われる人々を紹介しています。
斜め上の生活を目指すのではなく、自分にとって必要なものだけを欲する生活スタイルですね。
著者はこういった生活者が増えていくとよいと書いています。
しかし、現実的にはアメリカはそうはなりませんでした。
結果的にはより斜め上の生活を目指すという傾向は強まったわけです。
それがよく現れているのがサブプライムローン問題ですね。
あれはそもそも家を購入するほどの収入がない人のためのローンでした。
社会全体が登り調子(実際はアメリカは実質経済は伸び悩みつつも金融の伸びでカバーしていた)の時は問題ありません。
しかし金融破綻が起こったことで、サブプライムローンも一気に破綻したわけです。
「浪費するアメリカ人」はそこで大きな教訓を得た、というわけではありません。
世界経済が危ういバランスの中にいる現在においても、世界の景気を左右するのはアメリカの個人消費だったりします。
アメリカの個人消費の指数が下がるとみるみるうちに輸出をしている国の為替は下がり、企業の株も下がります。
現在も世界経済は「浪費するアメリカ人」によって支えられているわけなのですよね。
10年以上も前の本で、その後世界経済はいろいろなダメージを受けましたが、その割にあまり変わっていないものだなと思いました。

「浪費するアメリカ人 -なぜ要らないものまで欲しがるのか-」ジュリエット・B.ショア著 岩波書店 ハードカバー ISBN4-00-002584-8

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