« 「映画『紙兎ロぺ』 つか、夏休みラスイチってマジっすか!?」 劇場版、マジっすか!? | トップページ | 「ファミリー・ツリー」 雨降って地固まる »

2012年5月15日 (火)

本 「『上から目線』の時代」

久しぶりに本を読んで「目からウロコが落ちた」という気分になりました。
「上から目線」という言葉は最近よく聞きます。
自分自身も「上から目線」でものを言われて、カチンときたという経験はあります。
たぶん逆も知らず知らずのうちにやっているでしょう。
この本を読むまでは「上から目線」でものを言われるということによって起こる言われる側の不快感というものの原因は「言う側」に問題があると思っていました。
相手のことを尊重しない物言い、自分の力を笠に着た発言などと言ったことによるものだと。
しかし、著者は「上から目線」というものについて別の分析をしています。
著者が指摘するのは価値観・世界観の多様化による主義の対立としています。
例としてあげられているのが、野良猫の問題。
ある地域で野良猫が捨てられているとします。
ある住民Aはその野良猫を可哀想と思い、餌付けをしました。
しかしその餌付けを続けたため、野良猫が繁殖し、鳴き声による騒音問題、糞などの問題などが発生したりします。
そういった問題にさらされた別の住民Bは野良猫を殺処分するよう言ったとします。
その住民たちの会話を想定してみましょう。
A「動物愛護という観点から、殺処分するなんてことは許せない。あなたは人としてどうなのだ」
B「自分の庭に糞などをされて臭いに困っているし、衛生面でも問題だ。あなたは自分の家じゃないからそんなことを言っているのだろう」
ここでどちらの考えが正しいかということが問題ではありません。
Bさんからしてみたら、Aさんの言い方にはまさに「上から目線」を感じると思います。
そして逆にAさんもBさんの言い方に「上から目線」を感じることになるのです。
「上から目線」というものは相容れない主張を持つ相手に自分の考えを飲ませようという意志が強く出た時に発生するものなのです。
「目からウロコ」であったのは、この「上から目線」というものを双方が感じるというところでした。
一方向ではないということなのですね。
上司から部下へ、年配者から若者へといった方向だけではなく、逆でも「上から目線」は生じるのです。
例えば若い部下が、パソコンが苦手な上司に対して「今の時代、パソコン使えないと厳しいですよね」と言ったとしたら、IT弱者である上司からしたらやっぱり「上から目線」でものを言われたと感じることもあるのです。
「上から目線」の時代というのは、価値観・世界観の多様化がすることにより、それらがコンフリクトすることとなっている時代ということなのです。
以前の日本であればある程度社会の中である一定の共通認識、空気のようなものがありました。
しかしその共通認識は急速に崩れています。
以前は日本人の会話の中では定型フォーマットのようなものがありました。
初対面時の挨拶など、いわば「こう言っておけば間違いない」といったものですね。
そしてそれは共通認識があったからこそ成立していたものでもあったのです。
しかし現在においては相手がどんな価値観を持っているかわからないため、何気ない一言が相手の価値観に触れ、「キレられる」、「地雷」を踏んでしまう恐れをみなが持っているのではないのでしょうか。
そして人は他の人との会話が気詰まりになってしまう。
またその価値観がぶつかりあった時に人は互いに相手に「上から目線」を感じてしまうのです。

この本を読んで思い出したのがロマン・ポランスキーの映画「おとなのけんか」。
まさにあれは「上から目線」の応酬でした。
「上から目線」自体は著者によれば日本に限ったことではないとのこと。
そもそものこの考えの発想はアメリカ(著者はアメリカに住んでいます)のティーパーティ運動などは、高学歴高収入の人々の傲岸さへの右派(低学歴貧困層)の反発であったとみています。
右派はまさに「上から目線」を感じていたのだと。

この本は上記以外にも現代の日本人の状況が的確に分析されており、とても示唆を受けました。
パワハラの問題、モンスター○○の問題、そしてそもそも日本語というものが持っている構造上の特徴など。
こちらは是非一読をお勧めしたい本です。
著者の冷泉彰彦さんは「『関係の空気』『場の空気』」という著作のある方です。
こちらも話題になったので知っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

冷泉彰彦著「『関係の空気』『場の空気』」の記事はこちら→
ロマン・ポランスキー監督作品「おとなのけんか」の記事はこちら→

「『上から目線』の時代」冷泉彰彦著 講談社 新書 ISBN978-4-06-288141-8

|

« 「映画『紙兎ロぺ』 つか、夏休みラスイチってマジっすか!?」 劇場版、マジっすか!? | トップページ | 「ファミリー・ツリー」 雨降って地固まる »

コメント

こにさん、こんばんは!

著者はアメリカに在住ということなので、今の日本を客観的に観れるのかもしれないですね。
「上から目線」というものがなになのか、すっと腑に落ちた感じがしました。

投稿: はらやん | 2012年5月16日 (水) 22時08分

本当に!
目からウロコでしたね。
皆さんにお薦めしたい一冊です。

投稿: こに | 2012年5月16日 (水) 09時17分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/186553/54720582

この記事へのトラックバック一覧です: 本 「『上から目線』の時代」:

» 冷泉彰彦「「上から目線」の時代 なぜ目線にイラッとするのか?」 [読書と映画とガーデニング]
講談社現代新書2012年1月 第1刷発行253頁 ・お互いに自分は被害者だと思う理由・モンスターはなぜ生まれるのか・パワハラ、モラハラの原因・「下から目線」の居心地の悪さ 「各世代」「各職業」「各立場」を結ぶ『テンプレート』の消滅による会話不成立そこに強引...... [続きを読む]

受信: 2012年5月16日 (水) 09時18分

« 「映画『紙兎ロぺ』 つか、夏休みラスイチってマジっすか!?」 劇場版、マジっすか!? | トップページ | 「ファミリー・ツリー」 雨降って地固まる »