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2012年4月23日 (月)

本 「スティーブ・ジョブズ」

僕は「尊敬する人」は誰かと聞かれた時、挙げられる人があまりいないのですが、そういう自分でもスティーブ・ジョブズは「尊敬する人」になるような気がします。
「尊敬する人」というより「憧れの人」なのかもしれません(あとはスピルバーグか)。
ジョブズの存在を知ったのは大学生の頃でしょうか。
その頃、先生の手伝いをして、しこしことPC(NECの98だったと思う)に数値を入力していたのです。
これが一日ずっと数字とにらめっこ。
どこかで入力ミスをしたら台無しという、なんだか機械に使われているような気分になったものでした。
そんなとき隣の研究室では不思議なコンピューターを使っていました。
表のような画面に数値を入れて、マウスというツールでそれらを選んで、なにかしらの操作をすると、あら不思議グラフができあがちゃうわけです。
機械に人が使われるのではなく、人が機械を使って何かをしようとしているという感じがしました。
そのコンピューターがMacintoshと知り、それを作った会社がAppleという会社であると知りました。
そしてその会社を作ったのがスティーブ・ジョブズであるということも。
ちなみに最初に見た表計算のソフトはExcelでした。Excelは最初はMacintosh用にリリースされたのです。
その後、メーカーでデザイン部門に勤めることとなり、その時はちょうどその業界にもコンピューターが導入される時期であったので、工学系出身ということもあってMacintoshをどうやって活かして使うかということを考えることになりました。
その頃のMacintoshは軽自動車くらいの金額はする代物で、自分で手に届くようなものではありませんでした(しかし、3年後にはボーナスを全額突っ込んで結局自腹で7500を買ったのでした)。
Macintoshはジョブズが言っているようにクリエイティブなものを生み出す人のためのツールとして最適でした。
学生の頃に感じた機械に使われている感じというのはあまり感じず、その頃のMacintoshは機嫌が悪いと全く仕事をしてくれないという人間らしさ(?)もあり、なにか相棒のような愛着を感じさせるものでした。
結局7500から始まり、家のデスクトップのMacintoshはすでに4代目となっています(他にもノートはいくつか所有しましたが)。
ジョブズが「憧れの人」というのは彼が作ったプロダクトによるだけではありません。
彼のものの考え方に対し、僕は非常に共感があり、ひとつの指針になっているとも言えます。
彼の考えで一つ大きいのは「シンプルさ」です。
彼の作ったプロダクトであるMacintoshでもiPhoneでもわかるとは思いますが、余計なものは一切つけない。
極限までシンプルにするというこだわりです。
僕もデザインに関わっている者として、いつも考えるのがシンプルさなのです。
なるべく余計なものは入れたくない(とはいえジョブズほど神経も太くもないし、力もないのですべてがそうなっているわけではないですが)。
いろいろな要素を入れこんでいくというのは、作り手の大きな要求であるとは思います。
しかし消費者はそれをすべて使いこなしているわけではありません。
家にある機械の能力をすべて理解している人なんているのでしょうか。
消費者が使いやすくする、また理解しやすくするには、極限までシンプルにする必要があるのです。
そのほうがコミュニケーションが早いのです。
僕はデザインをしたり、コミュニケーションのことを考えるときはいつも「シンプルに、シンプルに」と言いきかせています。
あとジョブズの考えで「緊密なコラボーレーション」「同時並行のエンジニアリング」というのがあります。
彼が作ったのはMacintoshというハードのコンピューターだけでありません。
その中で走るOS「MacOS」であり、iTunesのようなサービスであったりするわけです。
ハード、ソフト、サービス、三位一体と言われますが、それぞれで試みた良かった点を、他にもそのエッセンスを展開していくのがジョブズは天才的にセンスがよかったのです。
初代iMacのトランスルーセントの素材感は、その後のMacOSのアクアというグラフィカルなインターフェイスに活きています。
また最近ではiOSのルック&フィールが、ハード的にもソフト的にもMacOSの方に影響を与えています。
とうぜんハード、ソフト、サービスという次元の違うことですが、そのまんま移植できるわけではありません。
そのエッセンス、そのフィールを移植していくことがジョブズはできていたのです。
僕の今の仕事は、パッケージのデザイン、広告コミュニケーション、Web施策、販促施策など消費者へのありとあらゆるコミュニケーションを一括して取り扱うというものです。
これまたそれぞれは次元が違うものなのですが、いつも心がけているのはジョブズが実践していた「緊密なコラボーレーション」であり「同時並行」なのですね。
パッケージデザインで訴求してよかった点を広告にも展開する。
ホームページと広告を連携させて同時並行で進める、などなど。
そこには一貫したフィールというものがあるようにしたいと思っています。
ジョブズには到底及ぶわけもないのですが、そのようにありたいとは考えるのですね。
彼が亡くなったのを知ったのは出張中のときの新幹線の中でした。
かなり驚いたのを覚えています。
たいへん残念なのですが、Appleという会社、そこが生み出すプロダクトやサービスにはまだジョブズらしさが脈々とあるのは嬉しいところです。

ジョブズは「憧れの人」なのですが、「憧れの上司」かと言われるとまったくそんなことはないですね(笑)。
本著を読む限り彼のような人の下にいたらとたんに具合が悪くなるような気がします。
遠くで憧れているのがいいという感じがしますね。

「スティーブ・ジョブズⅠ」ウォルター・アイザックソン著 講談社 ハードカバー ISBN978-4-06-217126-7
「スティーブ・ジョブズⅡ」ウォルター・アイザックソン著 講談社 ハードカバー ISBN978-4-06-217127-4

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