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2012年4月27日 (金)

本 「ペリー」

幕末期を舞台にした小説はそれこそいくつもありますが、外国人の目線から描いた作品というのはあまり見かけません。
佐藤賢一さんの本作「ペリー」はそのタイトルの通り、黒船を率いて日本に開国を迫ったペリー提督から見た日本というものを描いています。
ペリーという人物については必ず歴史の教科書にはその名が出ているので、知らない人はいないはず。
しかしその人の背景について知っている人はあまりいないのではないでしょうか。
かくいう僕もその一人です。
幕末期の物語は好きで、映像作品や小説もいくつも観たり読んだりしましたが、そういえばあまりペリーのことは知らないなぁと。
本作を読むとペリーという人物の背景、またアメリカが日本に開国を迫った理由などもわかります。
佐藤賢一さんは実際の歴史を題材に作品を書く方ですので、このあたりの料理の仕方は手慣れたものです。
ただ作品としては少々物語についてもの足りないところもありました。
ドラマチックさというか、意外性はあまりありません。
このあたりは実際の歴史をベースにしているということの不自由さはあったのかもしれません。
作品の中でペリーが日本と開国について交渉する場面があります(日米和親条約を結ぼうとしているところですね)。
そのときのペリーが日本人に対してこのように思ったというのがこのように書かれています。
「なにもジャパンは敵意を剥き出しにしているわけではない。慇懃無礼な態度でよそよそしいわけでもないく、むしろアメリカに対しては、こうして心慰められるくらい誠実な友情を惜しみなく示すのだ。
ただ容れるところは容れ、断るところは断る。そうした当たり前の態度を堅持しているだけだ。」
無論、小説ですので実際のペリーがこのように思ったかどうかはわかりません。
しかし当時の日本がこのように外国と交渉をしていたのだとしたら、昨今の外交下手は退化と言えるでしょうね。
アメリカを始め、周囲の諸国が日本に対してイライラとしているのは、のらりくらりとしていて交渉がなかなか先に進まないことでしょう。
今こそ「容れるところは容れ、断るところは断る。そうした当たり前の態度を堅持」することが大事なのではないかと思いました。

「ペリー」佐藤賢一著 角川書店 ハードカバー ISBN978-4-04-874222-1

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