「仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦」 ライダーと戦隊のカンケイ
東映の特撮ヒーロー映画は、春夏秋冬のイベントムービーとして定着してきた感があります。
これらの作品は確実に稼げるコンテンツとして少なからず役割を担っていますが、これは突然でき上がったものではなく、少しずつトライアルを行いながら定着させてきた東映の努力があると思います。
夏は「仮面ライダー」シリーズのテレビの終了前後に公開されるので、そのシリーズの集大成的な作品。
秋は「MOVIE大戦」として定着してきた新旧仮面ライダーの「VS」シリーズ。
冬は「スーパー戦隊」の「VS」シリーズ。
そして春はどちらかというと今までは実験的な興行(「電王」の3本連続公開とか、「オールライダー」とか)を行ってきました。
「MOVIE大戦」は本作でも中心となるライダーである「ディケイド」の劇中設定である「ライダー大戦」を拡張したもので、それに「スーパー戦隊」が長らくビデオの企画として実施してきた「VS」シリーズの要素を盛り込んだというものです。
最近はその「スーパー戦隊」の「VS」も劇場で公開後、ソフトリリースされることになってきていて、直近では「宇宙刑事ギャバン」との「VS」という意欲的な企画を行っています。
そして春については「オールライダー」という企画を何度かやりましたが、それを拡張したのが本作の「スーパーヒーロー大戦」なわけですね。
数年前は「仮面ライダー」シリーズで年間一本、おまけで「スーパー戦隊」シリーズの30分程度の劇場版というのが定番でしたが、それを大きく成長させたわけですね。
このあたりはコンテンツをいかに使い倒すかということを東映が試行錯誤しながら切り開いてきたわけで、これには努力が感じられます。
何か新しい試みを行い、それがいけるとなれば、上手にそれを次の作品に取り込んでいく。
こういう普段の努力があればこそではないでしょうか。
例えば「カードで変身」というのは「仮面ライダー龍騎」で初めて行われ(これは「ポケモン」などのカードゲームの流行をキャッチしたアイデア)、その後「ブレイド」「ディケイド」でも行われるのですが、やはり玩具も当たったわけですね。
それを受け、「スーパー戦隊」シリーズでは「天装戦隊ゴセイジャー」で「カードで変身」取り入れています。
また「仮面ライダー555」で変身アイテムとして「携帯電話」を取り入れました。
これは「W」が抜くまでは「変身ベルト」で最も売れた商品となったわけです。
その後、やはり「スーパー戦隊」でも「変身アイテムが携帯電話」というが多くみられるようになります。
どちらかというと革新的なチャレンジを「仮面ライダー」シリーズが行い、それで当たった要素を「スーパー戦隊」シリーズがキャッチアップするというパターンになっているような感じがしますね。
最近の中では最もチャレンジングな試みであったのはやはり「仮面ライダーディケイド」の他の仮面ライダーへ変身できる(多段変身)という設定でしょう。
これは以前もこちらのブログで書いたように、過去のライダーの掘り起こしなどに繋げられ「仮面ライダー」をブランド化することに繋げられた企画であったと思います。
この過去のヒーローに変身できるという設定を「スーパー戦隊」でキャッチアップしたのが、この間まで放映されていた「海賊戦隊ゴーカイジャー」であったわけです。
「ギャバンVSゴーカイジャー」のときの予告で「仮面ライダーVSスーパー戦隊」と観たときはとても驚きましたが、今までの東映の企画の考え方からすると、本作の企画は必然であったかもしれません。
さて本作はすべてのライダーに変身できる「ディケイド」と、すべてのスーパー戦隊に変身できる「ゴーカイジャー(中でもゴーカイレッド)」が中心になります。
とはいえ現在放映中の「フォーゼ」「ゴーバスターズ」も出ますし、また始祖たる「仮面ライダー1号」「秘密戦隊ゴレンジャー」も登場しますし、その他「オーズ」「電王」なども現れます。
「多段変身」「巨大メカ戦」「デンライナーでのタイムスリップ」など要素は多いですし、相当の情報量が盛り込まれている作品です。
ですので「かなりムリムリな展開であるな」というのは正直な感想ですが、逆に「よく帳尻を合わせることができたな」とも思いました。
帳尻があったのは「ディケイド」の門谷司、そして「ゴーカイレッド」のマーベラスのキャラクターの強さがあるかもしれません。
そもそも過去ヒーローがでる作品の主役ということで、それぞれアクが強いキャラクターなんですよね。
他のヒーローに負けない「俺様」な感じが、このキャラクターに共通していると思います。
そういう「俺様」キャラ同士がぶつかるわけなので、それを軸に芯が通った感じがありました。
ただ二人ともそれぞれ仮面ライダー、スーパー戦隊を倒していく役回りなので、ある種ヒールなところがあるわけです。
それを観客側に繋げるのが、「ディケイド」に登場したもう一人のライダーである「ディエンド」こと海東であり、また「ゴーカイジャー」の「ゴーカイブルー」ことジョーであったわけですね。
ジョーは一本気な性格なので、これはまさに観客側にたったキャラクターであり、彼が物語の中心にいるからこそ、ヒールな役(に見える)二人の主人公をつなぎ止められたのだと思います。
これはジョーを中心にするというのはいい判断だったなと。
海東についていえば、どちらかというと物語を動かしていくエンジンのような役割であったと思います。
なんだかいろいろ知っていて、物語を導いていくガイド役といった感じで。
主人公二人が「悪の側かも?」という謎の部分があるわけで彼らに頼って物語を進めるわけにはいかず、別に物語を進めるキャラクターは必要だったわけですね。
最後は海東があんなことしちゃうというのは驚きましたが。
それはそれでひねたキャラクターの代表株である海東らしかったかと思いました。
「ディケイド」のメインライターである米村正二さんが脚本を書いているので、海東の活かし方というのは十分に考えられたものであったと思います。
劇中で「仮面ライダーがいなくならなければスーパー戦隊が生まれない」とか「枠の問題」というセリフのありました(デンライナーでタイムスリップするあたり)。
これは全く当時の状況を知らない人にはわけがわからないところだと思いますので、補足をしたいと思います。
もともと仮面ライダーシリーズ(昭和ライダー)は毎日放送制作で、関東ではNET(現在のテレビ朝日)で放映されていました。
しかし仮面ライダーが「アマゾン」から「ストロンガー」になるときにネットチェンジ(いわゆる腸捻転の解消)が行われます。
現在TBS(東京)と毎日放送(大坂)は同じ系列局(ネット)で、テレビ朝日(東京)と朝日放送(大坂)が同じ系列局です。
しかし「アマゾン」のときまでは、毎日放送のコンテンツをNET(現在のテレビ朝日)で流していたわけなのですね(これがいわゆる腸捻転)。
これを解消し現在のような系列局としたわけですが、問題が発生します。
「仮面ライダー」シリーズはNETからTBSに放映枠が移ってしまうということになったわけです。
そうすると人気の特撮番組を失ったNETとしては厳しいわけです。
そこで新しい特撮番組をということで東映がNETのために製作したのが「秘密戦隊ゴレンジャー」であったのです。
つまりは「仮面ライダー」がいなくなったからこそ「スーパー戦隊」が生まれたということなのですね。
「枠の問題」というのもこの一連のことをさしていると思います。
「ゴレンジャー」が5人のチームというのは、実は「仮面ライダー」にアイデアのヒントがあったのです。
「仮面ライダー」シリーズでは過去のライダーが登場するというイベントの回が何回かありました。
いわゆる「5人ライダー」とか「7人ライダー」とかいわれるものですね。
そのときはものすごく視聴率がよかったということで、「5人のヒーローがチームで戦う」というアイデアが出たそうです。
上段で書いたように、「仮面ライダー」でトライアルし、それを「スーパー戦隊」がキャッチアップするという流れはそもそも最初の頃からあったわけなのですね。
ちょっとしたトリビアでした。
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コメント
メビウスさん、こんばんは!
似たような要素があるライダーと戦隊を組み合わせて見せるっていうのは、東映サイドがわかってやっていることですよね。
そのあたりに気づいてね、っていうマニア向けな(笑)。
鳴滝さん、何ものなのでしょうね〜。
何度倒されても出てくるし。
ライダー20年目にも出てきそうな気がします。
ひさしぶりに「おのれ、ディケイド!」を聞けたのは良かったなぁ。
投稿: はらやん | 2012年5月 6日 (日) 22時10分
はらやんさんこんばんわ♪遅れ馳せながら自分も鑑賞しましたー♪
近年のライダーと戦隊の劇場版は年に1~2本ではなく、ホント春夏秋冬の時期に度々公開されるようになってきたので観る側としては出費面も考えてしまうとこですけども、これだけ派手で面白ければ損した気分にはなりませんね。
そいえば自分って仮面ライダー中心なせいか、今回の劇場版でディケイドとゴーカイレッドがそれぞれ似通ったライダーと戦隊で戦ってるシーンを観て『随分被ってるんだなー』とか思っちゃいましたけど、はらやんさんの言うキャッチアップの背景を考えればなるほどとも思いました。それを踏まえれば、仮面ライダーが毎年挑戦意欲全開な要素を色々取り入れているのにもなんか納得してしまいますねぇ。
登場するヒーロー達や怪人たちも過去最高(?)なだけにギュウギュウな内容も覚悟してましたけど、予想に反して自分は観易かった印象でした。
・・しかし鳴滝さんって本当に何者なんでしょうね~?
投稿: メビウス | 2012年5月 6日 (日) 19時09分
CP10さん、こんばんは!
スーパー戦隊の場合は、敵役にしても俳優さんの個性がよく出ていますから、昔の作品だと素面で出てくるのは難しいかもしれないですねー。
でもドクトルGは出てましたね。
投稿: はらやん | 2012年4月25日 (水) 20時03分
仮面ライダー側の登場キャラやほかはあまり文句はないですけど、スーパー戦隊側の敵に対してはたくさんあります。
まず、雑誌の記事やCMを見ていたら21世紀戦隊の敵ばかりで面白くないです。これから私的にメインで出てほしかった敵を発表します。
ギンガマンのゼイハブ。これはここ最近になって大御所声優がたくさんお亡くなりになられているから柴田さんに大きな花をもたせてあげたいのと、ゴーカイジャーとの勝負ややり取りを見て見たいからです。
ゴーゴーファイブのジルフィーザ&サラマンデス。東北地震のこともありますけど、私的にはこの2人は20世紀戦隊の敵でもトップクラスの実力があると思いますし、サラマンデス役の緑川さんはとても人気があるから客寄せには最適です。
他にもいろいろな20世紀戦隊の敵がメインで出演してほしかったですけど、お亡くなりになられた声優や役者の都合などで出演は難しいですけど、次回作は20世紀戦隊の敵をメインにした作品を作ってほしいです。
投稿: CP10 | 2012年4月22日 (日) 21時29分