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2012年3月22日 (木)

「ストロベリーナイト(テレビシリーズ)」 意外なキャスティングだったがピタリとはまった

一昨年、誉田哲也さん原作を竹内結子さん主演でスペシャルドラマとして放映された「ストロベリーナイト」を連続ドラマ化した作品です。
久しぶりにテレビドラマをリアルタイムで観たいと思った作品でしたね。
原作シリーズについてはこちらのブログでレビューを何度かしているのでご存知の方もいるかと思いますがファンでして、そのファン目線からしてもこのドラマの出来は良かったと思いました。
キャストはスペシャルドラマといっしょで、主人公姫川の新たな部下として葉山の小出恵介さん、湯田の丸山修平さんが加わっています。
今回のテレビドラマは誉田哲也さんの小説「ストロベリーナイト」に続くシリーズ「ソウルケイジ」「シンメトリー」をベースに構成されています。
テレビドラマは、記憶している限り基本的に原作に忠実に作られていたと思います。
話の順番としては、原作の順と前後しているところはありますが元々独立した事件を扱っているため、違和感はありませんでした。
原作とちょっと違うというところでいうと、ささいなところですが姫川の性格が少し違うような気がしました。
原作は姫川一人称で語られるところも多いので、彼女の内面の声などがあるので、彼女のすこしあっけらかんとした明るいところもでたりしています。
当然高校生の時の事件をひきずっているのは原作もドラマもいっしょなのですが、原作のほうが普段はふっきっている感じを受けますね。
ドラマの姫川はその事件をひきずり、基本的にはクールというか肩肘はっているようなところがより出ていますね。
男ばかりの捜査一課で日下、ガンテツといったクセのある男たちと張り合うわけですからそういうところはより出てくるのだと思います。
姫川というキャラクターはそのように男と張り合ってズケズケとものをいう女猛者といったところもある反面、その内側は過去の事件をひきずった弱さ脆さをもっているという両面性が特徴でしょう。
姫川はその脆さを自分でもわかっていて無理をしている感じというのが絶妙でなんとかしてあげたいと思わせるようなところはありますよね(菊田もそういうところで惹かれているのでしょう)。
はじめ竹内結子さんというキャスティングは姫川的にはちょっとやわらかいかなと思っていましたが、竹内さんだからこそ、男まさりのすき間に脆さみたいなものを窺わせるようなところが出せたのかなと思いました。
あと原作と違うのは、「親子」というところにスポットをあてていたところですね。
「ソウルケイジ」を最終話に持ってきたというところからの逆算かもしれないですが、姫川とその両親との心のすれ違いを初回から描きつつ、「ソウルケイジ」の事件でポイントとなる親と子の愛情というところに、姫川親子の感情をリンクさせていました。
原作ではあまり姫川の家庭については触れられていませんでしたが、ドラマはそこに着目し彼女の性格をより掘り下げたかと思いました。
母親や父親が、事件の被害を受けた娘を受け止めようとした想いを描いていて、いい最終回であったと思います。
姫川のライバルの日下を演じていたエンケン(遠藤賢一さん)がまた、いい演技をしていました。
日下が関係者を聴取しているときに、自分の息子との関係を思いながら関係者に話をするっていうシーンがあったのですが、日下演じるエンケンさんが泣く手前の目を赤くするという絶妙の演技だったんですよね。日下は人前でそれも姫川の前で泣くなどということは絶対しないキャラクターなのですが、それがこの演技だけですごくよくわかるという。
さすがだなと思いました。
その他のキャラクターのキャスティングも良かったかなと思いました。
菊田はスペシャルドラマのレビューでも書きましたが、西島秀俊さんは原作とイメージが全然違うのですが、西島さんならではの菊田を作っていっていてピタリとはまっていったと思います。
後輩にスキンシップでグーでけっこう強くパンチをするなんてのは、体育会系な菊田らしい仕草だったなと思います。
ガンテツを武田鉄矢さんというのもけっこう以外なキャスティングだったのですが、説教するようにネチネチ言うところなどは、観ていてぴったりだと。
このシリーズは竹内さんの姫川を始め、サブについても意外なキャスティングに見えて、けっこう原作のキャラクターをいい具合に膨らませているなと思いました。

観終わったところで、「特報」で「ストロベリーナイト」の映画化のお知らせがありました。
もう少しこのメンツの物語を観たいなと思ったところだったので、これは歓迎ですね。
原作になるのは、手を付けられていない「インビジブルレイン」になるのでしょうか。
この作品は姫川の脆さがでる作品なのですよね。
ドラマで窺われる姫川の脆さは、その伏線なのかな。
「インビジブルレイン」の映画化はそれで期待なのですけれど、そうすると菊田が猛烈に可哀想なことになるのだよな・・・。

スペシャルドラマ「ストロベリーナイト」の記事はこちら→
原作小説「ソウルケイジ」のレビューはこちら→
原作小説「シンメトリー」の記事はこちら→
ついでに「インビジブルレイン」の記事はこちら→

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