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2012年2月25日 (土)

「英雄の証明」 思いのほかシェイクスピア

「ハリー・ポッター」シリーズの"ヴォルデモート卿"で知られるレイフ・ファインズが主演のシェイクスピア劇です。
レイフ・ファインズは本作で監督も務めていて、デビュー作ということ。
本作はシェイクスピアの「コリオレイナス」を原作(原題はそのまま「CORIOLANUS」)にしています。
「コリオレイナス」の舞台は古代ローマなのですが、本作はそれを大胆に現代(原題といっても架空の都市ローマですが)に置き換えています。
本作はまったくノーマークで、今回は知り合いの方からご招待をいただいたので、初日に観賞してきました。
シェイクスピアはまともに読んだこともないので、「コリオレイナス」という劇の存在は全く知らず。
劇場でも予告編も観たことがなく、ほぼ無垢の状態で観賞しました(ご招待いただいてからネットで予告編は観ましたけれど)。
予告編ではレイフ・ファインズとジェラルド・バトラーがダブル主演で敵味方のライバルの戦争アクション映画という趣でしたが、けっこう本編は印象が違いました。
基本的にレイフ・ファインズが主演で、ジェラルド・バトラーは助演ですね。
あと戦争アクション映画というよりは、思いのほかしっかりとシェイクスピア劇であったと思いました。
登場人物のセリフ回しは、映画というよりはどちらかと言えば演劇風味でした。
現代の戦争を舞台にした大仰なセリフ回しに、戦争アクションとして観始めたため最初は戸惑いましたけど、途中からそうではなくシェイクスピア劇として観るのがよいなと思って、スタンスを切り替えたらすんなりと観れるようになりました。
予告編がちょっとミスリードっぽいので、戸惑う方は多いかもしれません。
とはいえ、現代を舞台にしたシェイクスピア劇(それもマイナーな「コリオレイナス」)と言ってもなかなかお客さんは反応しなさそうなので、宣伝的には難しいところです。
観終わった後に、「コリオレイナス」の原作のあらすじを調べてみましたが、ほぼほぼ本作と同じでしたね。
そういう意味では舞台設定以外はかなり忠実にシェイクスピアの原作を映画化したのだと思います。
観ている時に感じた舞台的で大仰な感じという印象は、そんなに間違っていなかったなと。
では本作はなぜ原作通りに古代ローマではなく、現代を舞台にしたのでしょうか。
ぶっちゃけ、古代ローマを再現するには予算的な厳しさはあったかと思います。
また古代ローマと言ってもなかなか客を呼びにくいというのもあったかもしれません。
ただもう一つは、シェイクスピアが描いた物語の骨子は現代でも通じるものであったというのがあったかと思います。
本作の骨子は政治劇となります。
主人公のコリオレイナスはローマを救った英雄として讃えられ、政治でもトップに祭り上げられますが、その妥協をせず厳しい性格から、政治的なライバルや民衆から攻撃され侮辱され、その地位を追われます。
これは現代、それも日本でもよくある構図ですよね。
政治の世界でも改革をかかげた政治家が最初はヒーロー扱いでマスコミや国民から注目されて、政治の中枢に立っても、そうするとなんやかんやと非難囂々となって攻撃される。
これは自民党政権のときも、民主党政権になってからも変わりません。
ここには衆愚政治的なところもあるかと思いますが、これは民主的であったと言われる古代ローマにも通じるのかもしれません。
これは日本に限ったことではなく、最近のギリシャなどはまさに同じようなところがありますね。
また本作ではコリオレイナスとかつての好敵手であったオーフィディアスが連合し、ローマを攻撃します。
そしてコリオレイナスが力を持っていくと、オーフィディアスはそれを煙たく思い、彼を消そうとします。
これはやはり、日本で頻繁に繰り返される、政党の集合離散や政治家の合従連衡をみているような気がします。
このあたりの政治的な駆け引き、政局というものが、実際の政治をなおざりにしてしまうということは、日本以外の国でもありそうです。
シェイクスピアの原作のテーマといったものは現代に通じるものであると考えたのではないかと思いました。

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コメント

sakuraiさん、こんばんは!

>最近の人間離れした様相
はは(笑)!、確かに鼻がなかったりしましたからねぇ。
セリフまわしはまさにシェイクスピア劇そのものという感じでしたよね。
イタリアの戦場でセリフ回しがシェイクスピアという・・・、不思議なものを観た感じがします。

投稿: はらやん | 2012年6月26日 (火) 22時04分

レイフ様ファンとしては、最近の人間離れした様相から、人間っぽくて、良かったです。
まだ満足の域には達しませんが。
やはりシェークスピア俳優のレイフ様としては、一度しっかとシェークスピアをやりたかったんだろうなあっと。
セリフの言い回しなんかも、もろにそうでしたもんね。
その辺は、シェークスピアフリークとしては、満足でした。

ローマはどちらかと言うと、民主的ではなく、民衆の後ろ盾を利用して、共和政を作り上げていったって感じですかね。
帝政になっても、あくまでもローマは共和政なんだってことを強調し続けていましたが、いつの世も政治はげに難しい・・・と痛感しました。

投稿: sakurai | 2012年6月25日 (月) 15時44分

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