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2012年2月26日 (日)

本 「刑事雪平夏見 愛娘にさよならを」

昨年も公開された「アンフェア」シリーズの原作シリーズの4作目になります。
原作と言っても、もともと最初のテレビシリーズでも雪平夏見というキャラクターと「推理小説」殺人事件を扱っているとっかかりのところだけが共通で、その後の展開は全く異なりますので、別の物語として読んだほうがいいでしょう。
その違いがよくわかるのが、昨年の映画「アンフェア the answer」と、本作「愛娘にさよならを」ですね。
でも物語の進んで行く方向はまったく違うのですが、雪平というキャラクターの根本はやはり共通していると思います。
映画「アンフェア the answer」では警視庁検挙率No1の刑事であった雪平が、女の一面を見せます。
彼女はある男に惹かれますが、事件の展開に伴い、刑事という生き方をとるか、女としての生き方をとるかという選択に直面します。
しかし、というかやはりというか、雪平は刑事としての生き方を選ぶのです。
テレビシリーズでは描かれていた母親という立場は映画ではほとんど触れられません。
逆に小説のほうは映画と異なり、前作もそうでしたが母親という側面を雪平は持ち続けます。
しかし映画と同じように、刑事という生き方と、母親としての生き方のどちらをとるのかという選択を迫られることになるのです。
やはり小説においても、雪平が選ぶのは刑事としての生き方なのですね。
女としての生き方を選ぶのか、母親としての生き方を選ぶのかと、迫られる答えは異なっていますが、しかし雪平というキャラクターの根本は映画も小説も変わっていません。
ストーリーの展開は異なれども、その根本は変わらない。
その根本にあるのは雪平というキャラクターなのですね。
テレビ/映画もさらにストーリーが展開する余地がありますし、小説のほうも同様です。
物語が転がっていく先は違えども、雪平という女刑事の根本は変わらずに続いていくのでしょう。

前作「刑事雪平夏見 殺していい命」の記事はこちら→

「刑事雪平夏見 愛娘にさよならを」秦建日子著 河出書房新社 ハードカバー ISBN978-4-02053-2

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