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2012年2月19日 (日)

「海賊戦隊ゴーカイジャー」 お祭り感とドラマ性の両立

スーパー戦隊シリーズの第35作品目の記念作品として作られたのが本作「海賊戦隊ゴーカイジャー」です。
「仮面ライダーディケイド」が平成仮面ライダー10作品をクロスオーバーしたとき、「なんて無茶な企画を」と思ったものですが、「ゴーカイジャー」は35作品ですからさらに驚きました。
「ディケイド」のチャレンジは成功し、その後は昭和ライダーまでも巻き込んだ「仮面ライダー」ブランドの確立につながったということもあり、東映としては「スーパー戦隊」でも同様のことを狙ってきたのでしょう。
結果的にこれはうまくいったと思います。
僕は個人的には「スーパー戦隊」シリーズは離れていた期間がすごく長いのです。
「仮面ライダー」で観ていなかったのは「スーパー1」だけなのですが、子供時代に「スーパー戦隊」で観ていたのは、最初の「秘密戦隊ゴレンジャー」「ジャッカー電撃隊」まで。
ここからしばらくの間、卒業していたわけです。
観るのが復活したのは「忍風戦隊ハリケンジャー」から。
なので35戦隊のうち、知っているのは1/3程度。
「仮面ライダー」と違い、過去の戦隊については思い入れも薄いので、乗っていけるかと心配ではありました。
しかしそういう人も多いと見越していたのが、今回の「ゴーカイジャー」については脚本のレベルが高い品質で保たれていたような気がします。
あまり「スーパー戦隊」シリーズになじみがない人が観ていても、ちゃんとドラマとしても見応えがあるように作られていたと思います。
さらによく知っている人にはたまらない過去の設定などもうまく踏まえられていたように思いますので、ディープなファンの方もたまらなかったのではないでしょうか。
少なくとも僕が観ていた作品についてはいいところを押さえていたと感じました。
キャスティングも過去の作品に実際に出演されていた方たちが、再登場してくるというイベント感がある回も多かったですね。
個人的には「ハリケンジャー」の3人がすべて揃ったのは、痺れましたよ。
あと最終回のアカレンジャーこと誠直也さんが出てきてくれたのも。

「ゴーカイジャー」はある種のお祭り感があるアニバーサリー作品ですが、またしっかりとドラマパートが描かれていたというのが、ただのお祭りに終わらなかったところにつながったと思います。
お祭り感と、またドラマの双方(ややもすると両立するのが難しい)の両立をさせたのは、やはり「海賊戦隊」という設定ではなかったかと思います。
すべての戦隊が登場するという「お祭り感」を出すには、少々の設定の不整合はやむを得ないわけです(それでも十分整合性をとっていたと思いますが)。
その不整合を許容するのは、ようは「なんでもあり感」をださなくてはいけないわけです。
その「なんでもあり感」を出すのが、そもそも「地球や人類を護るために戦うわけではない」戦隊である「海賊戦隊」なのですね。
海賊ですから、何もにも縛られず自分たちが自由にやりたいことをやる。
ようは「なんでもあり」なわけです。
この設定により、特に「仮面ライダー」よりも様式が決まっていた「スーパー戦隊」を自由に扱うことができるようになったと思います。
宇宙海賊と言えば、普通に考えればワルモノ。
「ディケイド」も「破壊者」と呼ばれましたが、やはりこういう派手なクロスオーバーを行うときは、今までの常識を覆す強さが必要なのでしょう。
だからこその「海賊」なわけです。
当然、依然として続いている「ワンピース」ブーム、また「パイレーツ・オブ・カリビアン」の最新作の公開など、「海賊」=「カッコいい」というイメージにのるという上手さもそこには感じられます。
特に「ワンピース」の人気の要因の一つである「仲間」という軸は、「スーパー戦隊」にも通じるものがあり、うまく引用したと思います。
そもそもは「地球や人類を護るために戦うわけではない」戦隊が、1年をかけて戦っていく中で、最終回には地球を護るために戦う。
彼らが次第に地球で暮らす中で、彼らにとっての「大切なお宝」を見つけ出すというところまでたどり着くストーリーが、もう一つの性向の要素としてあげたドラマ性の高さにつながっていると思います。
今回の作品は、通常よりも6人のキャラクターの描かれ方がわかりやすく明確であったと思います。
これは他の戦隊が登場することによって「食われる」ことを防ぐためということもあったと思いますが、いわゆるキャラ立ちが強いことにより、それぞれの主役回でのエピソードもより深く充実したものになったと思います。
それぞれのエピソードをとりあげることはここではしませんが(とりあげないけどアイムがマーベラスたちに合流したときのエピソードは好き)、個々のキャラクターの掘り下げと過去の戦隊を登場させるということを同時に行った構成力の高さには驚きます。
あと先ほどもちょっと触れましたが、「ゴーカイジャー」たちの「仲間」への信頼の揺るぎなさというのもドラマ性に繋がっていたと思います。
今までだと、メンバー内の確執などでドラマ性を出している作品もありましたが、「ゴーカイジャー」はそれがない。
彼らの仲間への信頼は揺るぎない。
この揺るぎなさは、歴代スーパー戦隊の登場という要素があるなかで、しっかりとしたドラマの地盤になっていたように思います。

その他に気になったことを。
「ゴーカイジャー」についてはアクションシーンも今までよりも数段アップしたように思います。
「龍騎」以降の「仮面ライダー」シリーズは面をかぶっても、元のキャラクターの個性がでるという方向性がありましたが、「スーパー戦隊」シリーズはその方向性はないとはいわないですが、薄かったと思います。
けれども「ゴーカイジャー」は変身した後も、元のキャラクターの個性を出すという方向に大きく舵を切ったと思いました。
それは「ゴーカイチェンジ」という他の戦隊に変身できるという設定からくる必然ではあります。
マジレッドになっても、デカレッドになっても、中身はマーベラス。
それが感じられないと観ている側は混乱してしまいます。
今回のスーツアクターは今までにない苦労があったかと思います。
どなたもすごかったですが、特にあげるとすればゴーカイイエローを演じた蜂須賀祐一さん。
女性キャラですが、演じている蜂須賀さんは男性ですからね!
どんなスーツになっていても、ゴーカイイエロー=ルカに見えるという。
立ち方とか、剣の使い方とか、ルカのクセみたいなものをうまく表現していてすばらしかったです。
あとアクションについてもそれぞれのキャラクターの個性のある戦い方というのがでていたのもわかりやすいポイントであったと思います。
ゴーカイブルーは剣が主体で二刀流(五刀流もやりましたが、これはゾロだよなーと思いました)、ゴーカイグリーンはオタオタしたような慌てたような戦い方などなど。
このあたりのアクション演出もいままでの「スーパー戦隊」シリーズからのレベルアップを感じました。

平成仮面ライダーは「ディケイド」を経て、「W」以降はさらに自由度をあげたあらたな時代に足を踏み出したように思います。
「スーパー戦隊」シリーズも「ゴーカイジャー」を経て、あらたな時代を踏み出すのでしょう。
次回作「ゴーバスターズ」は、しばらくぶりに「ジャー」がつかない戦隊名。
今まで通りではない、ということを宣言しているタイトルだと思います。
メインライターは「仮面ライダー龍騎」「仮面ライダーオーズ」「侍戦隊シンケンジャー」と常にレベルの高い作品を手がけている小林靖子さん。
プロデューサーは武部直子さん、メイン監督は大抜擢の柴崎貴行監督で、小林さん含め「仮面ライダーオーズ」からの大移動です。
「仮面ライダー」が「W」で「スーパー戦隊」のプロデューサーであった塚田さんが担当したことにより大きく進化したように、次回作でも大きな期待をしてよいかと思います。

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コメント

AnneMarieさん、こんばんは!

さすがアニバーサリー作品だけあって力が入っていましたよね。
今回の作品はマベちゃん含めて、6人のキャラクターがそれぞれにたっていましたね。
それぞれの絡みもよかったですし。
マベちゃんとバスコの戦いは迫力ありましたよね。
最近の戦隊ものの中でも屈指のシーンだったと思います。
ゴーカイイエローの蜂須賀さんは大ベテランで、けっこう女性キャラのスーツアクターをやっているんですよね。
面をかぶっているとほんと女性にしか見えなくてすごい方です。

ゴーバスターズは今までとちょっと違う感じがあって新風を巻き起こしてくれるのを期待したいです。
デザインはクールでけっこう好きなんです。

投稿: はらやん | 2012年2月23日 (木) 20時02分

こんにちは。
ゴーカイジャーはおもしろかったです。
終わってしまって残念。
ゴーカイイエローって男性がされてたんですね。
全然気付けませんでした。

ママ友さんの間ではかなりマベちゃんファンがいました。
もうハデに行くぜ! が観られないのかぁ。と思うとさみしいなぁ。

私はマベちゃんとバスコの戦いの迫力にお口あんぐりになりました。
映画か? な迫力だなぁって。。。

さみしいとはいえ、来週からのゴーバスターズ、楽しみです。

投稿: AnneMarie | 2012年2月20日 (月) 14時53分

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