「キツツキと雨」 やるの?やんないの?
「やるの?やんないの?」
新人映画監督、田辺幸一(小栗旬さん)にカメラマンが言う言葉ですが、これ、僕自身も若い頃、よく言われたなぁとしみじみ・・・。
僕はメーカーでデザインやら広告やらを担当する部門で仕事をしているのですが、そのためにいわゆる撮影現場(スチールも、ムービーも)に立ち会うことが多いわけです。
今でこそ場数を踏んでいるのであまり動じなくはなりましたが、幸一のように新人のころ、現場に行くのが怖かったんですよね。
あんまりよくわからない若い頃でも、現場で判断を求められるわけです。
それこそ、「やるの?やんないの?」という感じで。
クライアントの立場ですから、判断を求められるのは当たり前です。
でも周りは自分よりも年上で何十年もその道で仕事をしている方ばかりです。
そして撮影ともなると関わる人の数も多い。
自分の判断でいろいろな人が動く。
間違っていても人が動く。
そりゃ、怖いわけです。
間違った判断をしようものなら、白い目で見られる気もしますし。
怖くて何でもかんでもテイクを重ねたら、スタッフは疲れてきますし、時間もなくなる。
かといって妥協すると、あとですごく後悔するし、再撮影なんてことになったらさらに迷惑をかける。
そこでのプレッシャーというのはけっこうなもので、ほんと幸一が逃げようとした気持ちっていうのもわかるんですよね。
自分はこう思うけど、それがほんとに自信があるかというとそれほど自信もない。
でもね、胃がギューギューと痛くなりがらも、そこで「こうしてみたい」と判断をして、スタッフに伝えて、何か形としてでき上がっていくときはやはり嬉しかったりするのです。
そしていいのが撮れて最後の幸一のように「OKです!」って元気よく言うと、ベテランのスタッフの方も嬉がってくれるんですよね。
それもなんか嬉しくて。
最初の頃は怖くってカメラマンさんとも話ができなかったんですよね。
新人の頃はやっぱり「やるの?やんないの?」的なことも言われたわけです。
でもいろいろ仕事をして自分がやりたいことを不器用ながらも伝えていくと、「○○くん(僕の名前ね)が言うなら、やってみようか」と言ってくれるようになったんですよね(10年くらいはかかったけど)。
僕も困った時はそう言ってくれる信頼できるスタッフに相談しますし、またスタッフも信頼してくれてる(と思う)。
なんかそういう関係ができてくると現場はとても楽しくなってくる。
また僕も歳をとってくるとわかっていたことがあります。
最近は自分よりも年下と仕事をすることも多い。
若い頃は、こんなこと言ったら、怒られるんじゃないかと思って躊躇したりすることがあります。
でも自分は最近若いのも言っているのです。
「どんどんやりたいことを言ってみろ。たいていのことは受けてやる」と。
幸一の周りのスタッフもそうだったと思うんですよね。
「やるの?やんないの?」という言葉は言われるほうからするときつい感じもしますが、成長を促す言葉でもあるんですよね。
そこでへこたれずになんとか若いなりに判断しようとする姿勢が見えた時、周りはなんとかしてやろうと思うわけです。
最近は若いのと仕事をするような立場にもなるんで、幸一のやりたいことをサポートしてあげる木こりの克彦(役所広司さん)の気持ちもわかるし、映画のスタッフたちの気持ちもわかるんです。
そういう意味では、本作は幸一にも、克彦にもシンパシーを感じることができました。
最後の雨のくだりは似たような経験をしたことがあったんですよね。
やはりロケで、晴天の画でなくてはいけないシーンがありました。
しかし撮影当日は嵐・・・。
そしてそのとき撮らなければスケジュール的に間に合わない。
いろいろ諦めそうになったとき、撮影のプロデューサーが決行しましょうと。
半ば賭けでロケ地に向かったのですが、現場についたらびっくりするくらいの晴天に。
これは奇跡だ・・・と思いました。
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* * * * * * * * * *
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コメント
sakuraiさん、こんにちは!
そうですねー、みなで作り上げるというのは一人とは違う一体感がありますね。
若い子もやる気がある子は、なんとか盛り上げてあげたいと思ってしまいます。
嶋田さんはいいですよねー。
セリフは少なかったですが、いい存在感がありました。
投稿: はらやん | 2012年4月21日 (土) 08時30分
はらやんさんのように、幸一のように、みなで作り上げていく!というのもいいですよね。
教師なんてのは、最初っから一人でまかされ、一人でやってくとっても独善的な商売なもんで、こういう世界もいいなあ~と思いながら見てました。
私もあんな若い監督だったら、尻でもひっぱたくなりそうですが・・・。
嶋田さんのカメラマンが、ピッタシでした。
投稿: sakurai | 2012年4月16日 (月) 14時12分
ほし★ママさん、こんばんは!
けっこう自分が若い頃を思うと、やっぱ自信なかったですし、逆に無茶やっていたりとかなんですよね。
そのときも上の人とか、周りの人が、厳しく優しく鍛えてくれたのだと今は感じてます。
だから若いのにもそうしてあげたいんですよね。
ま、順繰りってやつです。
投稿: はらやん | 2012年2月25日 (土) 23時13分
はらやんさんのお話と映画のシーンが重なって
また、暖かい気持ちがよみがえってきました。
新人時代は、誰もが経験しているんだけど
その時の気持ちを忘れてしまってる人も多いんですよね。
>たいていのことは受けてやる
こう言えるって、本当に素晴らしいと思います。
投稿: ほし★ママ | 2012年2月24日 (金) 19時33分