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2012年1月14日 (土)

本 「天智と持統」

著者の遠山美都男さんは古代天皇についての著作があり、何冊か読んだことがあります。
本著では天智天皇が後世に「武の人」と「文の人」という2つの異なる側面をもって語られることについて着目し、それが何故にそうなったかを解き明かそうとするものになっています。
天智天皇は歴史の教科書にも書いてある通り、即位する前は中大兄皇子と言われ、中臣鎌足とともに、蘇我入鹿を倒すというクーデターを起こし、政治権力を天皇家に引き戻した人物です。
それゆえ「武の人」というイメージがありますが、しかしその後の律令制定の基礎を作ったともいわれ「文の人」というイメージもあります。
そういった異なったイメージはどうしてそうなったかということですが、それを著者は持統天皇に求めます。
持統天皇は夫である天武天皇の死後、即位した日本史の中でも珍しい女性天皇です。
天武天皇と言えば、有名な壬申の乱で、天智系から天武系への流れを作った人物です。
天智天皇像というのは、その持統天皇が作ったと言うのが著者の仮説です。
奈良時代などの古い時代を研究するには、古い文書しかありません。
代表例が有名な日本書紀ですが、それは天武〜持統天皇の時代に作られました。
中国の史書などでわかるように、歴史書というのはその時代の政権が自分たちの正統性を裏付けるために作られることが多いわけです。
ですのでそこの書かれている記述は事実もありますが、そう書かせた意図というものが、書かれた時代をより浮かび上がらせていくのです。
本著は日本書紀、また中臣鎌足(のちの藤原鎌足)に関する鎌足伝などの文献を比較検討し、そこの差異に浮かび上がる意図を探ります。
結論から言えば、持統天皇はその後の天皇家支配を盤石にするために、その正統性を天智天皇に求めたたわけです。
天智天皇が「武の人」であり「文の人」という神の如く優れた人物であるということを歴史書で描写することにより、それを継ぐ自分そしてその後継者の正統性を表そうとしたわけです。
古代の研究というのは先に書いたように基本的には文献しかありません。
その文献の差異を見つけ、それについての仮説を組み立てていく作業の中で、その時代の出来事に関わった人物像を浮かび上がらせるのですね。
こういう歴史の研究は、ひとつのミステリーを読んでいるような気分にもさせられます。

「天智と持統」遠山美都男著 講談社 新書 ISBN978-4-06-288077-0

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