本 「疾風ガール」
誉田哲也さんの小説をざっくりわけると「ストレベリーナイト」から続く姫川玲子シリーズや「ジウ」などの警察小説と、「武士道シックスティーン」から始まる武士道シリーズの青春小説になるかと思います。
本作は武士道シリーズと同じように青春小説に入るでしょう。
しかし警察小説、青春小説に限らず、共通しているのはどれも主人公が女性であるということですね。
そしてその女性たちは、皆、強い。
強いというのは肉体的なものではなく、意志、想い、ハートが強いということです。
姫川や「ジウ」の基子、また武士道シリーズの香織などは女性らしさを封印して意志の強さで突き進むタイプ。
逆に「ジウ」の美咲、武士道シリーズの早苗は女性的な弱さは持ちつつも、それでも想いを強く持ち、考え考え歩んでいくタイプですね。
本作の主人公である夏美はハートが強いタイプの女性です。
意志をもったり、深く考えて進むわけではありません。
まさに「疾風」そのもののように、ハートで感じたそのままに突き進んでいくのです。
その姿が、ロックという題材と相まって、作品自体に疾走感を生んでいます。
風を切って進んでいくようながむしゃらな疾走感を感じます。
あと誉田さんの作品に共通する点としては、主人公はなにかしら過去に心を傷つけられるようなダメージを受けています。
ハードな体験であれば姫川や「ジウ」の基子などで、それでなくても香織なども両親の離婚の危機などのダメージを受けているのですね。
彼女たちはそれらの体験を通じて、意志や想いを自ら強くし、己自身が強くなっていきます。
夏美も過去に辛い経験をしていますが、それは自分を縛るようなものになっていないのが、他の作品の女性主人公とは違うところですね。
夏美の場合はつらい体験なども吹き飛ばすようなハートがあるというか、そういうこともおいて、もっともっと前に進んでいってしまうパワーのようなものがあります。
その前進力のようなものが、夏美のキャラクターを魅力的なものにしています。
こちらの続編「ガール・ミーツ・ガール」では、もう一人の女性キャラクターが出てくるらしい。
「ジウ」「武士道シックスティーン」のような対称的な女性キャラクターとして描かれるのかな。
このあたりは誉田哲也さんの最も得意とするところなので、期待したいと思います。
「疾風ガール」誉田哲也著 光文社 文庫 ISBN978-4-334-74570-7
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