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2011年12月 3日 (土)

本 「永遠の出口」

人間、大人になると子供の頃、自分がどう感じていたのかを思い出すのが難しい。
なんとなく大人の目線で子供の頃の気持ちを想像するくらいしかできないわけです。
けれど、本作の作者の森絵都さんというのは、子供の頃の気持ちというのをずっと思い出すことができる人なのだなあと思います。
元々ジュブナイル小説畑の作家さんで、子供を描くのは得意な方ではあるのですけれど、本作はそれがとても際立っています。
子供の頃の気持ちを思い出せるというと、大人は「子供の頃の純真な気持ち」とか「天真爛漫な気持ち」と思ってしまいますが、実際のところ子供だって別に純真でもないし、爛漫でもないわけです。
やはり子供は子供なりの悩み事というのがあって、それに心を痛めていたりするわけですよね。
大人になってしまうとそういうことは「些細なこと」となってしまいますが、子供当人にとってはそれは一大事なわけです。
そのような子供にとっての「一大事」という感覚を森絵都さんは持っていると思います。
本作はある女性の小学生から高校生までの出来事を描いた連作短編集になります。
小学生なら小学生なり、高校生なら高校生なりの悩みにヒロインは心を揺れ動かします。
本作品を読んでいると、このあたりの揺れのようなものがかつて自分も味わったものであると、感じるんですよね。
よく「そのときの気持ちが瑞々しく甦る」という表現をすることがありますが、まさに本作の感覚はそういう感じがします。
あのとき感じたような不安、焦燥みたいなものがほんとに自分の心の中で感じられるというか。
そういう感覚を起こさせてくれる作品でした。

「永遠の出口」森絵都著 集英社 文庫 ISBN4-08-746011-8

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