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2011年11月23日 (水)

「のだめカンタービレ フィナーレ(アニメ)」 楽しい音楽の時間の始まりデス

最近オンエアでアニメを追いかけて観ることがなくなって、やっとこさDVDで観ました。
うん、きれいにフィナーレしていましたね。
原作マンガの「のだめカンタービレ」は終盤は展開にかなり苦しんでいるようなような感じがありました。
物語の最終着地点をどこにしようか迷っているような感じといいましょうか。
マンガに限らず、主人公が成長していく物語というのはどこにゴールを設定するのかというのが難しいところであります。
僕は「ジャンプ病」と読んでいるのですが、主人公がドンドン強くなる、そうなるとさらに強大な敵が出て、それを倒すと、さらに強いのが・・・という無限拡大をしていくんですよね。
ドンドン拡大できればいいのですが(「ワンピース」のように)、どこかでやはり無理が出てくるわけです。
そうなると物語がダレダレになってしまうという・・・。
「のだめカンタービレ」は最初は主人公の成長物語などという路線ではなかったと思うのですよね。
才能があるけれど、奇妙な音大生の、風変わりな日常を描くというどちらかと言えばギャグに近いセンスだったと思うんです。
それがパリへ渡ったあたりから、成長物語の要素が色濃くなってきてしまいます。
そこで展開を難しくしてしまうのは、主人公のだめが「成長したくないと思っている」キャラクターであるということです。
よくある成長物語というのは、主人公はもっと強くなるなり、上にあがりたいなりの向上心というものを持っているものですが、のだめにそういうものは一切ありません。
けれども成長ストーリーとしては物語は成長を要求する。
主人公は成長したくない。
このあたりがぶつかって物語がややぐちゃっとした感はあります。
しかしメタ目線でよく考えてみると、のだめに成長を期待している「成長物語」というのは、作品の中では千秋というキャラクターに表されているんですよね。
だからマンガの後半は千秋とのだめがぶつかりあったり、すれちがったりしてしまうわけです。
物語の期待と主人公の望みが相反しているということが、展開される物語に表れているという感じだったのかもしれません。
マンガの方はそれを連載していきながら、うまく着地をさせていくということにとても苦心しているように思いました。
それを受けてのアニメ版のフィナーレは、原作での苦闘を踏まえた上で、整理をよくしているかなと思いました。
成長してほしいと思うこと(千秋)、成長を強制されるのはいやだと思うこと(のだめ)の気持ちがすれ違うことを軸に描いていたと思います。
そして決着としては、成長するとかしないとかそういうところを論点にするのではなく、やはり「音楽は楽しいよね。好きだよね」という根本的なところを互いに共通して理解するということで終わらせています。
物語の要請ものだめの希望もここで摺り合わせられるわけですね。
原作もそうでしたが、二人の出会いであった「2台のピアノのソナタ」に収束させるというのはうまい着地点であったと思います。
まさに二人にとってはこれから「楽しい音楽の時間の始まり」ということになっていくのでしょう。

「のだめカンタービレ(アニメ)」の記事はこちら→
「のだめカンタービレ 巴里編(アニメ)」の記事はこちら→

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受信: 2013年7月15日 (月) 21時33分

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