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2011年10月24日 (月)

本 「TOKYO BLACKOUT」

首都圏へ電気を送る鉄塔が相次いで爆破され、倒壊。
真夏を迎えた東京は電力の供給を絶たれます。
電力会社は輪番停電を実施し、電力の復旧を図る。
そして爆破事件を起こしたテロリストたちは、彼らの本当の目的を達成しようと動いていた・・・。

この作品が書かれたのは、2008年。
まだ日本の国民の大多数は輪番停電という言葉も、その意味も知らなかったでしょう。
そして今年、テロではないですけれど災害により、本当に東京の電力が断たれるかもしれないという危機に直面したわけです。
タイトルのブラックアウトというのは、電力供給が停止してしまった状態のことを言うそうです。
この作品を読むとわかりますが、電力というのは需要と供給が同時に行われるものです。
基本的に電力は溜めることができません。
だからこそ需要予測が大事なのです。
また電力設備というものは一度停止すると再起動するのがたいへんだということがわかります。
だからこそ一旦止めるのではなく、輪番停電のような状態でも稼働させておくことも重要なのです。
作者の福田和代さんは、もともと電力会社のSEだったとのこと。
だからこのような背景について非常に深く細かく書き込まれています。
正直、春の輪番停電のときもそれほど電力会社からわかりやすく情報提供があったとは言いがたいです。
本著のように細やかな説明があれば、もっと国民の理解が得られたかもしれません。
福田さんは本著を書くきっかけを、当たり前のことを当たり前に提供していくために名も知れぬ普通の人が懸命に働いていることを描きたかったためと言っています。
確かに今回の震災で当たり前のことが当たり前ではないということがわかりました。
当たり前のように供給される電気。
当たり前のように動いている電車。
当たり前のように並べられているスーパーの食材。
これらは毎日提供している人たちがいるからこそ、当たり前のように享受できるわけです。
震災の時にも思ったことを、また再確認させてくれる作品です。

クライシス・サスペンスとしても読み応えあります。
単なる電力テロというだけではなく、それを引き起こすテロリストたちの心情、そして現在の日本という国が持っている冷たさのようなものにも触れています。
先日の中国での少女のひき逃げ見てみぬふり事件も同じようなものを感じます。
福田和代さんは「迎撃せよ」が初めて読んだ作品で、そのときも思いましたが、本作も女性とは思えない力強さを持った作品だと思います。

「TOKYO BLACKOUT」福田和代著 東京創元社 文庫 ISBN978-4-488-41711-6

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