「幸せパズル」 アルゼンチンの女性観
TOHOシネマズデイだったので、会社帰りにシャンテで観賞。
アルゼンチンの映画はあまり観たことないですね。
主人公のマリアは一般的な主婦。
冒頭は彼女がホームパーティの料理を準備しているシーンから始まります。
それからたくさんの人が集まったホームパーティのシーンへ。
家族や訪問者が食べたり飲んだり騒いだりしている中、マリアは一人で料理を出したり、食器を片付けたりしています。
驚いたのはそのパーティでの出来事です。
マリアは冷蔵庫から自作のケーキを出します。
そのケーキには「50」の形をしたロウソクがあり、それにマリアは火をつけます。
誰かの50才の誕生日パーティだったわけです。
僕はこの時点で「旦那さんの誕生日会だったんだな」と思いました。
驚いたのは、その後で、なんとそのロウソクをマリア自身が吹き消したのです。
実はそのパーティはマリアの誕生日パーティだったんですね。
自分の誕生日なのに、その人が一番働いているなんて・・・。
それをパーティの訪問者も不自然に見ていないようですから、それはアルゼンチンにおいては普通のことなんしょうか。
欧米や日本だったら「ありえなーい」扱いで驚きました。
アルゼンチンという国はけっこう男尊女卑なのね・・・(かつての日本もそうだったが)。
マリアは日々、家族のために料理を作り、家事をします。
でも旦那はマリアに愛情はあるようですが、扱いは家政婦のような感じで、大事なことには「女は口を出すな」的な感じ(これまたかつての日本のよう)。
息子たちは、「オレは独立するんだ」と言って家を出て行こうとしたり、ベジタリアンの彼女にかぶれてへいこらしていたり勝手きままにふるまっています(これは今の日本のようだ)。
なんだか割を食っているのはマリアだけのよう・・・。
そのような中で、マリアはふとしたきっかけでジグゾーパズルを手にとり、それに強く興味を持ちます。
パズルにのめり込んだマリアは、パズルの大会のパートナーとしてある独身紳士ロベルトと出会います。
ロベルトは彼女にパズルの才能を見いだし、そして伸ばし、協力して二人はパズルの大会で優勝するのです。
この作品は、抑圧された女性が自らの才能を発見し、そしてそれにより自身を持ち、イキイキと生きようとし始める物語と言えます。
こういうタイプの映画は、洋画でも、邦画でもよくあります。
けれど本作のラストは、冒頭のシーンと同じくけっこう驚きました。
アメリカ映画だったら、自らの才能を見いだした女性主人公は、その才を活かし強く自分の力で立ち上がろうとするでしょう。
邦画であったら、才能を見いだしつつも、家族への愛情を再確認し、愛する人びとのもとに戻るというような展開もあったかもしれません。
本作はそういう自分が見慣れた展開とも違ったので、驚いたのです。
マリアは世界へ旅立つわけではありません。
また家庭に戻っても、夫や子供たちへの愛情を今までよりも強く再確認して生きていくというわけでもないんですよね。
マリアは家庭に戻っても、大会のことはいい思い出として、ひとり淡々とパズルをやっていくわけです(旦那や息子たちとも淡々とした関係のままなのだろう)。
女性が観た時にここにカタルシスを感じるのかなと思いました。
本作を観た日本の女性にも感想を聞いてみたいし、またアルゼンチンの女性にも聞いてみたい。
その国(また時代)によってさまざまな女性観はあると思いますが、それによって本作というのはどうとらえられ方が異なるのかに興味を持ちました。

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今まで夫と二人の息子中心の生活を送って、家族を支えてきました。
50歳の誕生日プレゼントに貰ったジグソーパズルをキッカケに、
自分だけの楽しみを見つけます。
女性ならではの視点で作られた映画でした。
遠いアルゼンチン映画ですが、日本人の感覚に通じる部分があるので、
共感出来る方が多いのでは?と思います。
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監督、製作、脚本にナタリア・スミルノフ。
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予告で観たときは凄く良さそうに見えた。
雰囲気は完全にミニシアター系。しかもアメリカ作品じゃなくて、アルゼンチンとフランスの合作とあればもう、こういうの好きな人にはたまらないと思う。
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作品について http://cinema.pia.co.jp/title/156409/
↑ あらすじ・クレジットはこちらを参照してください。
アルゼンチンの作品です。
生活感や宗教観など、背景の価値観は異なるかもしれませんが
これは、私には、とても共感&痛感した作品でした。
(というか、自分を見ているような生なましさだった ……..... [続きを読む]
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夫と息子達に囲まれ毎日忙しく暮らす50歳の専業主婦マリア。しかしそんな日々に一抹の物足りなさを感じていた彼女は、たまたま誕生日にプレゼントされたジグソーパズルにハマってしまう。... [続きを読む]
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コメント
ryokoさん、こんばんは!
たぶんこのあたりが国民性の違いなのかもしれませんね。
国それぞれで、周囲の人にとっても、女性自身とっても、女性の位置づけが違うというか。
アルゼンチンて意外と保守的な感じなのだなと思いました。
キリスト教の教えが強いからかな?
投稿: はらやん | 2012年4月27日 (金) 00時38分
はらやんさん、こんばんは。
私はカタルシスを感じることができませんでした。
パズルの楽しさを知り、優勝して自信をつけたのに、趣味でパズルで満足できるだろうか?
優勝の高揚感でロベルトとあんなことになってしまったからドイツには行けないと思うのか、そういうことが無くても自国での優勝で彼女は満足できたのかしら?
でも・・・あとあとなにも無かったかのように元の生活にもどれるかしら?っと、あの結末にフラストレーションを感じてしまいました。
投稿: ryoko | 2012年4月26日 (木) 01時37分
きなこさん、こんにちは!
いわゆる映画らしい劇的な終わり方ではなかったのでちょっとびっくりしましたね。
ちょっと考えてみると、日本でもこういうのはあるかもしれないですね。
ずっと子育て、旦那の世話で明け暮れて、旦那が定年迎えたところで「私、好きなことするわ」的な展開は。
今公開している「RAILWAYS」もそんな感じのようですが・・・。
マリアは結局は日常に戻りつつ、新たに見つけられた自分の才能を生かした楽しみを見いだすということなのでしょうかね。
投稿: はらやん | 2011年12月10日 (土) 06時56分
はじめまして。
今日映画を見てきた帰りで、ラストの意味をはかりかね、検索しているうちにこちらの記事に遭遇し思わずコメしてしまいました☆
私も最初と最後に驚きました!マリア自身の誕生日とは、マリアがろうそくを吹いてようやく分かったし。家族の世話に追われる姿、日本的でもあり親近感を覚えると同時に抱える不満もよく分かり…。
しかし、ラストは一体これからのマリアはどうなるのーっと釈然としない気持ちで。
けれど、劇的な展開が起こるのはやはりドラマや映画の世界の話であって、この作品は映画らしくなく(優勝するのは映画らしかったかも?)、意外と我々が普段過ごす日常にあるひそかな楽しみをそのまま再現し、今後のマリアの行く末は、日常にいる私たちが私たちの感覚での結末を考えてみて ということなのかもしれないなぁと思いました。
刺激的な作品に見慣れているので、たまにはこういう作品もよいかもしれませんね。
投稿: きなこ | 2011年12月 8日 (木) 14時25分