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2011年10月 8日 (土)

本 「リトル・ピープルの時代」

けっこうなボリュームの本なので、これを評するというのは自分の能力的にちょっと難しいのでやや散文的になってしまうので、ご勘弁を。
タイトルにある「リトル・ピープル」というのは村上春樹さんの小説「1Q84」の中に出てくる言葉らしいです。
らしいというのは僕自身は「1Q84」を読んでいないから、確認できてません。
そもそも村上春樹さんの小説は一冊も読んだことがありません。
「ノルウェイの森」なり「1Q84」なり、普段小説を読まない人も手に取るくらいの作品ですが、それだけベストセラーになってしまうと、ひねくれ者の自分としてはかえっていいや、って感じになっていたわけです。
じゃ、なんでこの本を手に取ったかというと、表紙のデザインに初代の仮面ライダーの写真が用いられていたから。
パラパラと本をめくると中には平成仮面ライダーに関する論が展開されていたわけで、興味を持って買ってみたわけです。
読み始めると、いきなり村上春樹論になっていて面食らってしまいました。
この本は、村上春樹、仮面ライダーなどの特撮もの、その他ロボットアニメやゲーム、さらにはAKB48などのポップカルチャーを題材にしながら、現代の文明・文化論を展開するというものでした。
タイトルにある「リトル・ピープル」という言葉に対し、本著では「ビック・ブラザー」という言葉が登場します。
これは僕も知っています。
「ビッグ・ブラザー」というのはジョージ・オーウェルの小説「1984」に登場する独裁者の名です。
これは全体主義の管理国家を人格として表したものとして受け止められるのが一般的です。
近代以降、60年代までは国家というものを人びとは人格化し、ビック・ブラザー的にとらえていました。
その強大な力の管理に対し、反抗するというのが特に戦後から60年代までの世界的な流れでした。
対抗、反抗ということはそこにある種、外と中という区分をつけ、そことの関係性に物語を見いだすということになります。
けれどもそのビック・ブラザーも、著者によればすでに壊死していると。
それにより現代は外と中という区別はなくなり、さらには物語性も失われているというのが著者の論旨です。
その背景にはグローバル経済化ということ、またはインターネットの発展による情報革命があげられています。
つまりはビック・ブラザーというのは国家の人格化であったのですが、その国家というものの上位にグローバル経済化と情報革命により、市場(一般的な狭義の市場というのではなく、もっと広いネットワーク的なものととらえる)というものが位置している。
その市場はそれぞれの個人=リトル・ピープルで構成されている。
今までは国家の外と中なり、国家と個人という関係性・物語性があったのが、それらの区分があいまいになっているというか、壁がなくなっているというのが、「リトル・ピープルの時代」ということです。
内と外という区分がなくなる中、以前は外に対し悪を求めていましたが、外がない時代、悪というものを見るには内に求めなくてはいけない。
著者によれば、村上春樹はビック・ブラザーが存在しないということについては認識しているが、リトル・ピープルの時代になった今を把握しきれていないのではないかと論じています。
対して平成仮面ライダーシリーズというのは、そもそもの同族同士での戦いという基本設定の中に、外の世界のない現代というものをとらえるヒントがあると論じています。

文化論的には、うーむ、なるほどこういうふうに見る見方もあるのだなというように思いました。
グローバル経済、ネットワーク化により外のない世界というものになっているというのは確かにおもしろい考え方です。
ただしそれを説明するために用いている平成仮面ライダーシリーズやロボットアニメの解釈については、著者の考え方に合わせるように解釈しているように感じるところもなきにしもあらずでした。
村上春樹さんについては読んでいないのでなんともいえないですが、もしかしたらそういうところもあるかもしれません。
ただ補論で掲載されていた「ダークナイト」の論評はキレ味が鋭くなるほどと感心することしかりです。
AKB48についてもなるほどと思いました。
この視点で現代文化を見てみるといろいろな発見があるような気がします。
全体の文化論は興味深く、個々の作品評も鋭いのですけれど、それを繋げようとするところにいくつか無理矢理な印象を少し感じました。

ああ、それと現代文化を仮想現実(VR)ではなく、拡張現実(AR)として見るという捉え方はとても面白く興味深かったです。

「リトル・ピープルの時代」宇野常寛著 幻冬舎 ハードカバー ISBN978-4-344-02024-5

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