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2011年10月15日 (土)

本 「令嬢テレジアと華麗なる愛人たち」

フランス革命時に実在したテレーズ(テレジア)・カバリュスという女性を題材にした藤本ひとみさんの小説です。
テレジアは大商人の娘として生まれ、幼い頃より美女として注目され、フランスの社交界入り。
若くして結婚し、その後離婚結婚を繰り返していきます。
彼女はその美貌、そしてセンスからフランス社交界のファッションリーダーと目されていました。
また「テルミドールのクーデター」にも関わり「テルミドールの聖母」とも言われます。
その男性遍歴から「悪女」的なイメージがもたれているテレジアですが、本作はフランス革命前後という激動の時代をまさしく「女の武器」を駆使して、たくましくしたたかに生き抜いていくテレジアのたくましさを描いています。
12歳で男性を知り、16歳で結婚をし、さらには幾人もの男性と関係をもつというテレジアですので、最初の方は官能小説かと思うほどの描写が多く驚きますが、後半はそこで培った(?)女の武器を使い、巧みに男性を操り、価値観がひっくり返るようなフランス革命をテレジアが生き残る様子を活き活きと描写し、引き込まれます。
テレジアは若い頃より、自由な生き方をしてきたため、その時代の女性としては珍しく、自由に対する意識が強い女性として描かれています。
そのために自由のためになされたフランス革命が次第に変節し、ロベスピエールの独裁体制になっていくフランスに対し、戦いを挑むのです。
しかしそれは女性ならではの戦いとして。
テレジアは彼女の女の魅力を駆使し、フランス革命当局の力のメンバーを籠絡し、アンダーグラウンドで自由を虐げられる人びとを救います。
彼女の生き方は自由そのもの、奔放そのもので、倫理的には眉をしかめる人がいるかもしれませんが、つきぬけた自由さは、読んでいても爽快な感じすらしますね。
著者の藤本ひとみさんはフランスの歴史を題材とした小説を多く書かれていますが、緻密な取材に基づいているので、臨場感がありますね。
ほんとうにフランス革命の裏側でこのようなことがあったのではないかと思えるほどです。
テレジアの人生はまさに波瀾万丈と言っていいものであったのかもしれません。

「令嬢テレジアと華麗なる愛人たち」藤本ひとみ著 集英社 文庫 ISBN978-4-08-746158-9

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