「電人ザボーガー」 B級テイストそのままリメイク
「『電人ザボーガー』 リメイク!」という話を聞いたのは、去年でしょうか。
紹介記事を読んで「おおっ!」と驚いたものの、「こんなマイナーな作品知ってる人いるのか?」とすぐに疑問が・・・。
知らない方のために解説を。
「電人ザボーガー」は1974年にテレビで放映されていたピー・プロダクション制作の特撮番組です。
主人公は秘密刑事の大門豊で、相棒ザボーガー(大門の弟の遺伝子を持っている)とともに、悪の組織シグマと戦うとお話です。
ザボーガーはバイクに変形することもできるロボットで、大門がヘルメットのマイクからの指示で戦います。
そもそもピー・プロダクション(略してピープロ)自体がマイナー・・・。
特撮を詳しくない方でも「ウルトラマン」は円谷プロダクション、「仮面ライダー」は東映というのは知っているとは思いますが、ピープロは知らないですよね。
ピープロ制作の特撮番組で他の有名なもので言うと「スペクトルマン」とか「怪傑ライオン丸」などがあげられます。
なに、これも知らない?ううむ・・・。
ちなみに僕は「電人ザボーガー」は当時小学生低学年でドンピシャ世代でありました。
とはいえ「ウルトラマン」や「仮面ライダー」のように何度も見直したわけではないからあまりに覚えていないのですよね。
覚えているのはロボットがバイクに変形するということくらいですかね。
ピープロの作品というのは、子供心にも円谷や東映と比べると、さらにマイナーっぽいというか、B級っぽい感じがしたのはなんとなく覚えていますね。
「電人ザボーガー」のリメイクは井口昇監督が担当。
世界的にマニアの間では超有名になっても、「片腕マシンガール」や「ロボゲイシャ」などB級道をひた走っている監督ですので、「ザボーガー」とのシンクロ率も高そう。
ここ数年、アメリカでも日本でも昔のヒーローもののリメイクというのが多く作られています。
子供の頃にそれらを観て育った世代が、親になったり、また制作者になったりというのが影響しているのでしょうね。
それらのリメイクものは、そのままというよりは、ストーリーもデザインも現代風な解釈をされ、大人の観賞にも堪えられるようにすることが多いですよね。
本作についていうと、テイスト自体はオリジナルの雰囲気を多く残しています。
このあたりはさすが井口監督で、あえて昔のピープロの持つダサさ、野暮ったさみたいなのを残していてくれました。
特にザボーガーそのものはほとんど印象が変わらない。
へんにスマートになったり、スタイリッシュになっていないのが、良いです。
もちろんCGなどもかなり使っているのですけれども(ザボーガーがバイクから人型へ変形するところはいいですね)、へんに今っぽくなってません。
本作は二部構成となっており、第一部は大門が青年期の話でオリジナルを踏襲するような展開、第二部は大門が熟年期になった時を描いており、これは本作で初めて描かれる話です。
第一部の大門はやたらと熱い正義漢で、確かに昔のヒーローものの主人公というのはこうだったよな〜と思いますが、現代の目線でみると暑苦しい感じもしなくもない。
この温度差というのが懐かしさを出しているのかもしれません(このあたり若い人たちはどう感じるのかな)。
第二部の大門は逆に社会の片隅で落ちぶれたような存在になっています。
正義を行うということにも挫折した様子・・・。
大門は熱い正義漢ですが、第一部の最後で自分が信じる正義を貫こうとしても、それを受ける人びとがそもそも守るに値する善良な人ではないということに矛盾を感じながら戦います。
さらには悪の組織の女サイボーグ(ミスボーグ)を愛してしまう。
いわば大門は守るべき社会に裏切られ、そして悪を行う愛する女(サイボーグだが)守ろうとしてしまうわけです。
けれどもそれにより、正義を守るために共に戦うと誓った相棒であるザボーガーを裏切ってしまうということになってしまったのです。
ザボーガーは大門の指示を受け入れなくなり、ミスボーグを倒し自爆するのです。
第一部は正義を行うというあまりにまっすぐな思い(理想)が、現実の社会において無惨にも敗れ去る姿を描いています。
第二部はその挫折からの再生を描いています。
現実にはいろいろとあるけれども、だからと言って諦めてはいけない。
そして立ち直るっていうのには、遅過ぎるっていうことはないということでしょうか。
ま、井口作品であまりテーマ性を深堀しなくてもいいかと思いますけれどね。
抑えめではありましたが、井口監督らしい描写はそこかしこに。
ただのヒーローものとして子供を連れてきた親御さんは後悔したかもしれません(笑)。
| 固定リンク
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 「電人ザボーガー」 B級テイストそのままリメイク:
» 『電人ザボーガー』(2011) [【徒然なるままに・・・】]
『電人ザボーガー』は、1974年春から一年半に亘って放送されたヒーロー番組。最初は土曜日の夜7時からの放送で、ここは『宇宙猿人ゴリ』(→『宇宙猿人ゴリ対スペクトルマン』→『スペクトルマン』)以来、『怪傑ライオン丸』、『風雲ライオン丸』、『鉄人タイガーセブン』とピープロ製作のヒーロー番組がずーっと流れていた枠で、その流れで『ザボーガー』も結構好きで見てました。
何といってもバイクが変形するザボーガーにインパクトがありましたし、主人公・大門豊を演じていたのが『仮面ライダーV3』のライダーマン=結城丈二... [続きを読む]
受信: 2011年10月15日 (土) 23時13分
» 電人ザボーガー [だらだら無気力ブログ!]
敵との戦闘中にインシュリンを打つ糖尿病持ちのヒーローって設定がバカバカしくてイイ!! [続きを読む]
受信: 2011年10月16日 (日) 02時18分
» 電人ザボーガー [LOVE Cinemas 調布]
1974年~75年に放送された人気特撮ヒーロー『電人ザボーガー』を『ロボゲイシャ』の井口昇監督がリメイク。主人公の大門豊の青年期と熟年期という二部構成で、宿敵シグマとの対決を描いている。青年期の大門を「炎神戦隊ゴーオンジャー」の古原靖久、熟年期の大門を『脱獄王』の板尾創路が演じる。共演に竹中直人、柄本明、渡辺裕之、山崎真実、佐津川愛美ら演技派が揃う。... [続きを読む]
受信: 2011年10月17日 (月) 02時34分
» 電人ザボーガー(2011-083) [単館系]
30年以上前の同名特撮作品のリメイク。
2010年9/1のテレフォンショッキングに板尾さん登場。
あのねぇ。
電人ザボーガーという30周年前のフジテレビでやっていたヒーローアクションモノなんですけど
バ...... [続きを読む]
受信: 2011年10月18日 (火) 02時03分
» [映画『電人ザボーガー』を観た] [『甘噛み^^ 天才バカ板!』 byミッドナイト・蘭]
☆昨年、偶然斜め見した「笑っていいとも!」で、板尾創路が「今、撮っている映画」と語っていたので、気になっていた作品(この時、私は、板尾が監督と思って聞いていたのだが、主演だった)。
なにぶん、見るともなしに見ていたテレビなので、その「電人ザボーガー」...... [続きを読む]
受信: 2011年10月18日 (火) 18時11分
» 電人ザボーガー [映画とライトノベルな日常自販機]
“くたびれたオヤジたちよ、若い頃の熱いモノはどこへいった?” 全編を通して、テレビ放映当時の“いかにも特撮ヒーロードラマです”的な、演技や演出でまじめにやればやるほど、何かのコントをみているかのような可笑しさがこみ上げてきます。 しかも、ファッションやメカニック、殺陣などを過度に今ドキあるいは近未来的に見せるなところがなく、当時の雰囲気やチープさをうまく再現しているのは面白い感じでした。 戦いのシーンで主題歌が流れるのも当時のお約束で、これは観ている方も熱くなりますね。 破壊されたザボーガーがいつの... [続きを読む]
受信: 2011年10月19日 (水) 07時33分
» 「電人ザボーガー」感想 [新・狂人ブログ~暁は燃えているか!~]
1974年に放映され、今なおカルト的人気を誇る特撮ヒーロー番組を、「富江」シリーズの井口昇監督でリメイク・映画化。
普段から小生が嫌悪している「ヲタクがヲタクとして作ったヲタク向け作品」の典型。いつもなら問答無用でバッサリのところだが、それを踏まえて... [続きを読む]
受信: 2011年10月21日 (金) 19時10分
» 映画『電人ザボーガー』 [健康への長い道]
昭和49年から昭和50年にかけてTV放送された特撮ヒーロー番組の大人向け(?)リメイクです。 リアルタイムで見ていましたし、今で言うフィギュアのようなオモチャも買いました。バイクが変形してロボットになり、主人公の青年・大門の指令で戦うのが斬新でした。今回…... [続きを読む]
受信: 2011年10月25日 (火) 00時13分
» 「電人ザボーガー」中年ヒーロー GO! [シネマ親父の“日々是妄言”]
[電人ザボーガー] ブログ村キーワード
ある意味、吾輩が今年一番楽しみにしていたのは、この映画かもしれません。「電人ザボーガー」(キングレコード/ティ・ジョイ)。まさかの70年代ヒーロー、37年ぶりの復活!中年男の血がたぎる(^^;!これはもう、楽しむしかございませんわ!!
≪第1部≫国会議員を狙った連続誘拐事件が発生。次の標的が若杉議員(木下ほうか)であるとの犯行予告を受け、警備に向かった新田警部(渡辺裕之)らの前に、サイボーグ組織Σ(シグマ)のメンバー、ミスボーグ(山崎真... [続きを読む]
受信: 2011年10月27日 (木) 20時36分
» 電人ザボーガー/板尾創路、古原靖久 [カノンな日々]
宣伝ポスターでロボットみたいなオートバイにまたがる板尾創路さんのレトロチックな姿に心掴まれてしまいました(笑)。もともとは1974年にTVドラマとして放送された特撮ヒーロー作品 ... [続きを読む]
受信: 2011年10月29日 (土) 09時25分
» 「電人ザボーガー」 [みんなシネマいいのに!]
「電人ザボーガー」はウルトラマンと仮面ライダーが一段落した<特撮空白期>に放送 [続きを読む]
受信: 2011年10月30日 (日) 08時49分
» 電人ザボーガー [象のロケット]
国会議員ばかりが次々に狙われる事件が発生。 新田警部らの前で、若杉議員が悪のサイボーグ組織シグマの“ミスボーグ”、“ヨロイデス”らの餌食になろうとしたその時、秘密刑事・大門豊と相棒の電人ザボーガーが颯爽と登場しシグマを撃退! しかし戦いは悲しい結末を迎える。 …25年後。 大門の前に、シグマのボス悪之宮博士の元から脱走した明子が現れ、衝撃の告白をするのだが…。 人気TVヒーローアクション劇場版。... [続きを読む]
受信: 2011年10月30日 (日) 20時04分
» 電人ザボーガー☆独り言 [黒猫のうたた寝]
『クイック!!』観た後に同じ劇場で観たのですが、ものの見事に客層入れ替わり、思わず笑っちゃった次第です。『電人ザボーガー』が特撮TVドラマだったのは覚えてる。調べてみたらスペクトルマン→ライオン丸→タイガーセブンその後が電人ザボーガーだったそうです。猫の生まれ... [続きを読む]
受信: 2011年11月 4日 (金) 07時42分
» 【映画】電人ザボーガー [芸術に恋して★Blog★]
ロボゲイシャの井口昇監督の次の題材はなんと電人ザボーガー、少しマニアックなかつてのヒーローだ。私もなんとなくテレビドラマの記憶があるが、その時のチープなテイストを壊さず、最新のSFXで迫力のある映像を作っているところが面白い。今見るとほっぺたが赤くなりそうな台... [続きを読む]
受信: 2012年1月29日 (日) 21時25分
» 11-384「電人ザボーガー」(日本) [CINECHANが観た映画について]
タイム・リミットを宣告されるまで正義を守る
<第1部:たたかえ!電人ザボーガー!>
国会議員の若杉議員を名指しする犯行予告を受け、厳重警備が敷かれる中、サイボーグ組織Σ(シグマ)のメンバー、ミスボーグが現われる。
そこに、Σの野望を打ち砕くべく、秘密刑事、大門豊とその相棒、電人ザボーガーが立ちはだかる。
互いの宿命を背負い、壮絶な戦いを繰り広げる大門とミスボーグだったが。
<第2部:耐えろ大門! 人生の海に!>
25年後の大門は、総理大臣となった若杉の運転手をしてい...... [続きを読む]
受信: 2012年3月18日 (日) 17時07分
» 電人ザボーガー [銀幕大帝α]
11年/日本/114分/特撮ヒーロー・アクション/劇場公開
−監督−
井口昇
主な監督作:『富江 アンリミテッド』
−脚本−
井口昇
−キャラクターデザイン−
西村喜廣
−主題歌−
高野二郎『戦え!電人ザボーガー』
−特殊造型監督−
西村喜廣
−出演−
◆板尾創路…大門豊(熟年...... [続きを読む]
受信: 2012年3月30日 (金) 00時53分
» 『電人ザボーガー』('13初鑑賞3・WOWOW) [みはいる・BのB]
☆☆☆★- (10段階評価で 7)
1月2日(水) WOWOWシネマの放送を録画で鑑賞。 [続きを読む]
受信: 2013年3月24日 (日) 21時24分
コメント