本 「真夏の方程式」
東野圭吾さんの「ガリレオ」シリーズの最新長編です。
「容疑者Xの献身」もそうなのですが、このシリーズというのは哀しさというものがありますよね。
当然ミステリーなので、作品の中で殺人が起こり、その殺害者、犯人も存在するわけです。
でもその犯人・協力者が、そして事件そのものがなにか哀しい。
本格ミステリーのようなパズルのような謎解きを読ませる作品ではありません。
主人公であり、探偵役でもある湯川は物理学者であり、彼が事件の謎へむかう姿勢は徹頭徹尾論理的なアプローチです。
でも湯川は事件が成立するための論理を構築する力だけでなく、その背景に潜む人への洞察力をも持ち合わせてるいる人物なのですよね。
「容疑者Xの献身」にしても、本作にしても湯川自身は事件の本質に誰よりも早く到達しているようにみえます。
けれども、それによって哀しい出来事が起こるかもしれないということまでも見えているんですよね。
だからこそ自分が気づいた事件の本質を実証し、事件の行く末が解らなければ、友人である草薙にすらその内容を話すことはありません。
本作においても、事件そのものよりも、その事件に関わる人びとの行く末に湯川は心を砕きます。
事件解決を職務とする警察官が主人公であればそうはならないのですが、いち民間人である湯川は事件の本質を理解することと並んで、大きなものは人の行く末なんですよね。
事件に関わった人びとの哀しさが彼にはわかる。
湯川自身はぶっきらぼうであり、とっつきにくいところのある人物でありますが、彼の本質は非常に情に厚い人物であることがわかります。
その人物像がこのシリーズの魅力なのかもしれません。
「容疑者Xの献身」の記事はこちら→
「真夏の方程式」東野圭吾著 文藝春秋 ハードカバー ISBN978-4-16-380580-1
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» 東野圭吾『真夏の方程式』 [itchy1976の日記]
真夏の方程式東野 圭吾文藝春秋
今回は、東野圭吾『真夏の方程式』を紹介します。久しぶりのガリレオシリーズですね。ミステリーとしてはあっさり目だとは思いますが、ガリレオ先生と子どものふれあいなんていうのは今までとは違うし、環境と科学技術のつきあい方は福島...... [続きを読む]
受信: 2011年8月25日 (木) 20時09分
» 湯川と少年 [笑う学生の生活]
小説「真夏の方程式」を読みました。
著者は 東野 圭吾
あのガリレオ 湯川シリーズ
新作長編です
今回もやはり読みやすく
引き込まれますね
ただ、肝心のミステリーとしては普通
そこまでトリックも弱く・・・
それよりも ドラマ部分が大きく
それぞれが想う気持ち、...... [続きを読む]
受信: 2011年12月25日 (日) 18時05分
» 「真夏の方程式」 東野圭吾・著 | 少年、夏の日に風変わりな物理学者と出会う。 [23:30の雑記帳]
文句なしの五つ星です!
個人的には今まで読んだ東野作品の中で最高傑作。
発売されて間もないのでネタバレなしの方向で。。。
あらすじ。。。
小学5年生の恭平は、夏休みを利用し ... [続きを読む]
受信: 2011年12月25日 (日) 22時48分
» 真夏の方程式(東野圭吾) [Bookworm]
面白かった!
・・・んだけど、読み終わった後、重ーい気分がなかなか抜けず;;;読後感は良くなかったです。。。 [続きを読む]
受信: 2011年12月28日 (水) 12時34分
» 東野圭吾 「真夏の方程式」 [こみち]
JUGEMテーマ:読書感想文nbsp;
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◆ガリレオ シリーズ
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今回の事件では、関係者の知られたくない過去と忘れたい出来事が
キーワードになっていました。環境問題のシンポジュームに参加した
元刑事が死と遂げたところから犯人は、少年ではないかと疑っていまし
た。事件に関係する実験だけでなく夏休みの宿題の実験をする湯川博士の
生き生きとした... [続きを読む]
受信: 2012年3月14日 (水) 22時33分
» 真夏の方程式 東野圭吾 [花ごよみ]
真夏の方程式
夏休みに、伯母一家経営の、
美しい海辺の町に立つ旅館で、
過ごすことになった、
小学校5年生の少年、恭平。
仕事のため訪れた湯川も、
同じくその宿に宿泊。
もう1人いた宿泊客が、
翌朝、命を落としていた。
彼は元刑事だった。
これは事件か事故...... [続きを読む]
受信: 2012年3月20日 (火) 22時08分
» 真夏の方程式 [どくしょ。るーむ。]
著者:東野 圭吾
出版:文藝春秋
感想:
東野圭吾さんの『真夏の方程式』はガリレオシリーズの新作。
夏休み中の少年と知り合った湯川。そこで殺人事件に遭遇して、という話。
今 ... [続きを読む]
受信: 2012年3月27日 (火) 23時00分
» 『真夏の方程式』 東野圭吾 [【徒然なるままに・・・】]
夏休みを一人で玻璃ヶ浦にある親戚が経営する旅館で過ごすことになった少年・恭平は、電車の中で湯川と知り合う。湯川は海底鉱物資源開発を進める会社に頼まれ、地元との説明会に参加するため同じ電車に乗り合わせていたのだ。そして恭平と同じ旅館に泊まることを決めた。
その翌日、宿泊客の一人が変死体で発見された。彼は定年退職した警視庁の元刑事で、説明会にも出席していたのだが、何故玻璃ヶ浦を訪れしかも説明会にまで参加していたのかは残された妻にもわからないという。
恩人の死に疑問を抱いた上司の直々の特命を受けた草薙... [続きを読む]
受信: 2013年1月13日 (日) 10時10分
» 本『真夏の方程式 (文春文庫)』著・東野圭吾 読んだ〜〜 [よくばりアンテナ]
真夏の方程式 (文春文庫)(2013/05/10)東野 圭吾商品詳細を見る
昨年、映画も公開された、東野圭吾の人気シリーズ『ガリレオ』の長編。
ちなみに昨年、迷ったあげくに映画は見ないまま。
『ガリレオ』のシリーズは1冊目・2冊目の連作短編を読んでから
TVシリーズを見たんだけど、これはTVドラマの方が面白かった。
見せ方が上手かったんだよね。
黒板とか、思いついたらどこにで...... [続きを読む]
受信: 2014年1月28日 (火) 22時18分
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