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2011年8月21日 (日)

本 「真夏の方程式」

東野圭吾さんの「ガリレオ」シリーズの最新長編です。
「容疑者Xの献身」もそうなのですが、このシリーズというのは哀しさというものがありますよね。
当然ミステリーなので、作品の中で殺人が起こり、その殺害者、犯人も存在するわけです。
でもその犯人・協力者が、そして事件そのものがなにか哀しい。
本格ミステリーのようなパズルのような謎解きを読ませる作品ではありません。
主人公であり、探偵役でもある湯川は物理学者であり、彼が事件の謎へむかう姿勢は徹頭徹尾論理的なアプローチです。
でも湯川は事件が成立するための論理を構築する力だけでなく、その背景に潜む人への洞察力をも持ち合わせてるいる人物なのですよね。
「容疑者Xの献身」にしても、本作にしても湯川自身は事件の本質に誰よりも早く到達しているようにみえます。
けれども、それによって哀しい出来事が起こるかもしれないということまでも見えているんですよね。
だからこそ自分が気づいた事件の本質を実証し、事件の行く末が解らなければ、友人である草薙にすらその内容を話すことはありません。
本作においても、事件そのものよりも、その事件に関わる人びとの行く末に湯川は心を砕きます。
事件解決を職務とする警察官が主人公であればそうはならないのですが、いち民間人である湯川は事件の本質を理解することと並んで、大きなものは人の行く末なんですよね。
事件に関わった人びとの哀しさが彼にはわかる。
湯川自身はぶっきらぼうであり、とっつきにくいところのある人物でありますが、彼の本質は非常に情に厚い人物であることがわかります。
その人物像がこのシリーズの魅力なのかもしれません。

「容疑者Xの献身」の記事はこちら→

「真夏の方程式」東野圭吾著 文藝春秋 ハードカバー ISBN978-4-16-380580-1

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