本 「警官の紋章」
佐々木譲さんの道警シリーズの三作目になります。
本作で描かれるのは3年前の洞爺湖サミットです。
そのとき北海道警はかつてない規模の厳戒態勢で警備に挑みます。
その中で、このシリーズの登場人物である佐伯、津久井、小島はそれぞれの立場でそれぞれの任務を果たそうとしますが、それはやがてある一点に収束されていきます。
それは「笑う警官」で描かれた北海道警「最悪の一週間」で曝された不正ですら、その一部であるさらなる警察の暗部でした。
「警官の紋章」というタイトルは、警官の誇りという意味にとっていいでしょう。
佐伯たち現場の警官はそれぞれに自分の職務に誇りをもって挑んでいます。
けれどもそういう現場の警官を統べるキャリアというのは、それとは全く異なる思考でものを考えている。
それは自分の立身出世であったり、そのための組織防衛であったりするわけです。
佐伯たちも青二才のようにただまっすぐに正義とかそういうことを言っているのではありません。
けれども絶対に譲れない一線、警官の誇りということについては愚直といえるほどまっすぐです。
本来、公的な仕事をする人びとというのは、そのような誇りがあってこそやっていける仕事のはずです。
けれどもなぜかそういう誇りを持つ現場の人を統率するのが別次元のものの考え方をする人びとなのです。
今は警察のキャリアというのは、警官である前に役人なのですよね。
この題材というのは「踊る大捜査線」「SP」などのドラマでポピュラーなものとなっていますが、本シリーズはそれをしっかりと描いている作品であると思います。
道警シリーズ第1作「笑う警官」の記事はこちら→
道警シリーズ第2作「警察庁から来た男」の記事はこちら→
「警官の紋章」佐々木譲著 角川春樹事務所 文庫 ISBN978-4-7584-3475-1
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