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2011年7月18日 (月)

本 「バウドリーノ」

「薔薇の名前」のウンベルト・エーコの作品です。
ウンベルト・エーコはそもそも記号論の学者です。
「薔薇の名前」は学生の時に読んだのですが、シンボル、メタファーなどが満載だったりしたため、かなり難解で読み進めるのにかなり難儀した記憶があります。
その後、「フーコーの振り子」も読みましたが、「薔薇の名前」ほどではないにせよ、読むにはそれなりにエネルギーがいる作品だったように記憶してます。
本作「バウドリーノ」は久しぶりのウンベルト・エーコの小説ですが、先の二作品の印象が強かったので、読むのにもそれなりに覚悟が必要でした。
けれども読みはじめると、それほど読むのがしんどいというところはありませんでした。
どちらかと言えば、本作の方がより小説らしいというか、登場人物がイキイキとしているように思いました。
当然、エーコですので歴史的な要素や象徴・シンボルのような点は出てくるのですが、それほど前作ほど難解ではありません。
それこそ流して読んでも問題ないかなと。
本作は、伝説や言い伝えられて真実だと思われていることは、誰かの捏造である可能性があり、始めは嘘であったことも、いつしかそれは信じられることにより、真実と化していくということを描いていると思いました。
記号論の専門家であるエーコということを考えて読むと、シンボルというものは意味を与えられてこそそれは機能する、さらにはそれは信じられてこそその機能は持続するということでしょうか。
いまでもヨーロッパの教会などにある聖遺物なども、そもそもは誰かの捏造である可能性が高い。
けれどもそれらは信じられることによりまさに聖遺物となるわけです。
そのものがどうこうという話ではなく、それにまつわる意味合いが信じられることこそがその存在価値になるわけです。
まさにものに込められたストーリーということでしょう。
このあたりは現代で言えば、ストーリー・マーケティングということになるのかもしれません。
そう考えるとこういうことを人間はかなり昔から繰り返しやってきたということなのでしょうね。

「バウドリーノ<上>」ウンベルト・エーコ著 岩波書店 ハードカバー ISBN978-4-00-024427-5
「バウドリーノ<下>」ウンベルト・エーコ著 岩波書店 ハードカバー ISBN978-4-00-024428-2

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