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2011年6月 7日 (火)

「太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-」 守るべきものは何なのか

海外出張の帰りの飛行機の機内で観賞(行きは映画を観る気持ちのゆとりがなかった〜)。
太平洋戦争末期のサイパン島の戦いにおいて、数十人の日本兵を率いてゲリラ戦を展開し、アメリカ軍を翻弄した大場栄陸軍大尉。
彼はその戦いぶりから、アメリカ軍から「フォックス」と呼ばれ、恐れと敬意をもたれていました。
本作はそういう実話を基にした作品です。
この作品は、大場大尉を英雄として描く物語と観ることもできますし、また日本人らしいまっすぐさ、潔さを描いた物語と観ることもできると思います。
本作は年配の人の評価が高かったということで、おそらく多くの方がそのような見方をしているのだろうと思います。
今では失われてきている日本人らしさ、美徳のようなものが描かれているというような。

僕はちょっと違う見方をしてみたいと思います。
それは「守るべきものは何なのか」ということです。
多くの民間人も暮らしているサイパン。
そこへ圧倒的な軍事力を持つアメリカ軍が攻撃をしてきました。
サイパンはアメリカ軍にとって日本本土を爆撃するのにどうしてもほしい戦略的な場所であったのです(B-29はサイパンからなら日本本土へ爆撃ができた)。
つまりサイパンは、日本の死活がかかっているというほど重要な島であったわけです。
では圧倒的な戦力差があるそのような状況化で軍人は、何を守るために戦うのか。
目の前にいる民間人たちの生命なのか。
それとも日本という国家、国体なのか。
これは二者択一するものではないのですが、そうせざるを得ないこともあります。
本作でいえば、大場大尉がアメリカ軍より投降要請を受けたときがそれになると思います。
日本人としての誇りを守るため死ぬまで戦うのか。
民間人の命をさらさぬよう投降するのか。
大場大尉の選択は、国家への忠誠、誇りを持ちつつも、民間人を守るために投降するというものでした。
大場大尉の部下である木谷は、そのような行為に賛同できず、投降をせずに誇りを持って戦うという選択肢を選びました。
現代人の僕からみれば、軍人はやはり民間人の命を守るべきだろう、と思いますし、本作で描かれる状況は遥か数十年前の太平洋戦争時という特殊な時代を背景にしていたのであって、あまり今は関係ないだろうと考えがちです。
はたしてそうでしょうか。
本作を観ていて思い浮かべたのは、最近の大震災以降の政府や東電のゴタゴタのことです。
震災の現場で、人びとを助けるために働いている自衛隊や警察官、また東電の社員の方、それ以外の様々の方はやはり人の命や生活を助けるために懸命に働いているのだと思います。
これは本作の「兵隊さん」たちが民間人を助けるために戦った行為となんら変わりません。
けれどそのような現場でがんばっている人びととは違う中枢にいる人びと、たとえば報道される国会議員たちのゴタゴタを観ていると、この人たちはそこに暮らす人びとのことを考えて何かしようとしているのかと思えないのです。
何を守ろうとしているのだろうと。
本作の大場大尉のように民間人の命を守り、かつ国家への誇りを失わない、そういう苦しい戦いをしているように見えないのです。
なにかよくわからない、党や会社というものを守るために、動いてるように見えるのです(そうであってはいけないと言いませんが、それだけっていうのはいけない)。
僕たちが本作での木谷の行動を観るとあの時代の帝国軍人として致し方なかったのかと思いますが、それはあの時代特有のものではなく、いまでもこういう精神は残っているわけです。
某党の「造反したら厳正な処分」というのには戦前戦中の精神論に近い臭いを感じました。
ほんとそれが「民主」的なのかと。
何を守ろうとしているのだろうか。
本来は普通の人びとを守るための組織であり、国家であるはずなのに、どこかでそれの重要度が逆転してしまう。
本作で描かれているような状況は現代社会でも十分ある、というより実際あると思えるわけです。
戦中の出来事とみるのではなく、現代にも通じるものがあると観てもいいと僕は思いました。

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コメント

小米花さん、こんばんは!

太平洋戦争に突入を決めた当時の軍部は問題があるのですけれど、現場で命をかけて戦う人は、大場大尉のように民間人を守るためという使命感をもっていた人も少なからずいたのだと思います。
本作を観たのが震災後であったので、大場大尉の姿に、地震や原発の現場で働く人たちの姿が重なって見えました。

投稿: はらやん | 2011年12月 7日 (水) 20時27分

大場大尉が白旗を上げることを決意したことは、
当時の軍人からして、身を切られる決断だったと思います。
その決断に、とても感動しました。
なんといいますか、誇りみたいなものを感じました。

この映画で、現在の日本の災害までは思い至りませんでした。
なるほど・・・。


投稿: 小米花 | 2011年12月 5日 (月) 22時42分

kiraさん、こんばんは!

太平洋戦争というのは、日本にとって歴史の負の部分であったりするので、最近はあまり語られることがなくなってきましたよね。
時間も経ったということもあるので、冷静な目線で太平洋戦争を語るということも必要かもしれませんね。

投稿: はらやん(管理人) | 2011年6月18日 (土) 00時12分

こんばんは~☆

この作品、震災より前に観ていたので、逆に私は地震の後、
あの震災の声を失う映像のウラに、津波に飲み込まれた多くの方の遺体があり、
そこで今もお骨が回収されていないサイパンの奥地の映像がダブりました。

サイパンだけでなく、日本軍として散っていった多くの方の遺骨回収、
日本は自国民の後始末をちゃんとやり遂げて欲しいですよね~。
地味だけど、やはり語り継がれるべき歴史だと思います。

投稿: kira | 2011年6月17日 (金) 20時22分

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